文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

前半だけで全員得点、バランスの良さが光るA東京

アルバルク東京とサンロッカーズ渋谷の第2戦。前日に続きA東京が好スタートでリードを奪い、優位を保って勝ち切った。

5連敗中のSR渋谷は前日に続きソフトに試合に入ってしまい、A東京に圧倒される。田中大貴からアレックス・カークのアリウープがオープニングショットとなり、竹内譲次の3ポイントシュート、安藤誓哉の速攻と開始2分で連続7失点。早々にタイムアウトを取り、ディフェンスは立て直したものの、オフェンスに流れが生まれない。

ロバート・サクレにボールを預けた後は任せっぱなしになってしまい、足が動かない。サクレはアレックス・カークとの1on1に勝ち8得点を挙げるも、サクレが下がった後は得点が止まってしまい、杉浦佑成のフリースロー1本のみ。第1クォーターで9-16とビハインドを背負い、第2クォーターも流れを変えられず28-38と10点差で前半を終える。

ちなみにA東京は前半終了時点で、この日に出場できる9選手が全員得点。外国籍選手に依存することなくチームで攻め、SR渋谷がディフェンスを立て直して得点ペースこそ落ちたものの、リードを保ち続けた。

SR渋谷の歯車が噛み合ったのは第3クォーター半ば。インサイドにボールを入れさせないディフェンスが機能してA東京の攻撃を封じると、サクレのバスケット・カウント、広瀬健太のファストブレイク、さらには果敢にアタックするベンドラメ礼生の連続得点で11-0のラン。これで2点差まで迫ったものの、ここからA東京が逆襲。ベンドラメとマッチアップする正中岳城が借りを返すと言わんばかりに鋭いドライブでSR渋谷のディフェンスをこじ開けて流れを呼び戻した。

猛追されても動揺せず、常にリードを保つ完勝

44-52で迎えた最終クォーター、SR渋谷はもう一伸びして差を詰める。伊藤駿がボールへの執着心を出してチームに火をつけ、相変わらず高確率でインサイドの得点を重ねるサクレがインパクトを出しながらも、他の選手も積極的にアタック。サクレと伊藤の連続バスケット・カウントにより残り4分半で57-59と1ポゼッション差に迫る。

しかもこの間、カークのスティールからワンマン速攻に走った田中大貴が滑って転倒。SR渋谷のランを断ち切るチャンスを逃すだけでなく、田中はそのままプレー続行不能となってしまった。A東京は馬場雄大とザック・バランスキーを欠いて選手のローテーションが苦しく、心身いずれかのスタミナが切れてもおかしくないところだったが、逆にここで勝負強さを発揮する。

正中が思い切って放った3ポイントシュートを沈め、この試合シュートタッチのあまり良くなかったジャワッド・ウィリアムズも3ポイントシュートをねじ込んで67-57と再び突き放す。こうして最終盤を余裕を持って乗り切り、最終スコア75-67で勝利した。

サクレ「自分たちの戦いを続けていくことが大事」

これでSR渋谷は栃木ブレックスにかわされ東地区5位に転落。厳しい6連敗となった。ただ、だからこそ指揮官の勝久ジェフリーはプラスの面を強調する。「昨日と同じで、出だしがとにかく良くなかった。その後はオン1の時間帯に頑張って、第3クォーターで勝てたことはプラス。出だしを除けばハードに戦って、自分たちのスタイルを取り戻しつつある感触はある。正しいことをやっていると信じて、流れが来るという確信と勇気を持って戦っていきたい」

順位を落としたことに関しても意に介していない。「東地区の順位争いは何が起こるか分からないが、自分たちでコントロールできない部分を気にしても仕方ない。自分たちのやるべきことをやるだけ」と、残り試合をどう戦うかにフォーカスすると語った。

30得点を挙げたサクレにしても、それは同じ。「第1クォーターを終えてチームが得点できていなかったので、自分で行かなければいけないと思った」とシーズンハイの30得点を挙げた理由を語るが、チームがピンチの今、それを誇る気はない。指揮官と同様「自分たちのスタイルは間違っていない」と強調する。「それを理解していれば落ち込む必要はない。これまでも結果が出ない時期はあったが、みんな気持ちを落とすことはなかった。まだシーズンは長いし、自分たちの戦いを続けていくことが大事」と語った。

一方、ケガ人続出のA東京にとっては価値のある連勝。指揮官のルカ・パヴィチェヴィッチは「メンタル的、フィジカル的にも良い準備ができた。パーフェクトではないにせよ、40分間ハードに戦った結果」と勝利を誇った。「このリーグのバック・トゥ・バック(2連戦)のシステムには私自身もまだ慣れていないが、2試合を戦うための良い準備ができている。選手の負担は大きいが、フィジカルでもメンタルでも、ルーティーンとして最善の準備をしている」と、スタッフを含めたチーム一丸の体制が好成績を生んでいると説明した。

代表スケジュールはなくなったものの、特に東地区のチームは今後も厳しい日程が続く。A東京は千葉ジェッツと勝率で並び、加熱する地区首位争いの中にいる。安藤誓哉はこの状況について「プレッシャーはありませんが、使命感はあります」と語った。この気持ちの強さが、決して簡単ではない状況での連勝を可能にした要因かもしれない。