苦しみながらも島根スサノオマジックのために、山下泰弘の思い「すべての経験をこのチームに伝えたい」

苦しみながらも島根スサノオマジックのために、山下泰弘の思い「すべての経験をこのチームに伝えたい」

2020/06/20

山下泰弘

島根スサノオマジックは2019-20シーズンを迎えるにあたり、B1昇格を勝ち取った選手たちを軸にしながら、彼らを操るポイントガードに山下泰弘を迎え入れた。2017-18シーズン、初挑戦となったB1で壁にぶつかり、11勝49敗という成績で1年でB2に逆戻りした失敗を繰り返さないために、コート上で選手たちをまとめるリーダーの必要を痛感したからだ。結局、今シーズンは途中で打ち切りとなり、成績にかかわらず残留が決まった。島根の成績は11勝30敗。シーズンが最後まで続いていれば残留争いに巻き込まれただろうが、2年前に比べれば勝率は上がり、試合内容も大きく向上している。チームリーダーとして力を尽くした山下はこのシーズンをどう振り返り、また次のシーズンにどう挑むのか。その思いを語ってもらった。

「自分のスタイルと違うというのは言い訳でしかない」

──チームとしては2017-18シーズンよりB1で戦える手応えを得られたと思いますが、山下選手の感触はいかがですか?

難しかったですね。少なくとも良いシーズンだったとは思いません。個人的には移籍先の環境が良く、いろんな人が応援してくれて、全中とインターハイを戦った地という思い入れもあって、ここでバスケができたことはすごく良かったです。でも、バスケットの内容としては難しかったですね。

ペース配分として福岡はオフェンスも大事にしたけど、島根はディフェンスで100%を出すスタイルです。ガードが一番前から当たって、そこからボールも運ぶというペース配分に苦しみました。島根のスタイルに合わせるところでまず僕自身がつまずいてしまったんです。

オフェンス面でも多くを任せてもらいましたが、シーズン序盤はとにかくシュートが入らず、こんなに決まらないのは今までのキャリアで初めてというぐらい。3ポイントシュート成功が1本もない試合がずっと続きました。練習では入るんですけど、試合になると自分のシュートが打てない。ディフェンスで100%を出して、オフェンスになったらボールを運んで、ハイピックを使ってガードが崩すようなフォーメーションが多いので自分で攻める。自分のスタイルと違うというのは言い訳でしかなく、1人でバスケットをやっている感じになってしまいました。

だから、期待されたのに応えられなかったという思いが強いです。今までは1試合に2、3本のシュートを打って5点ぐらい。それが島根では最初は自分がメインだったのでシュートアテンプトが増えて、それでシュートが入らない。自分でも悩んでどんどん崩れてしまって、立て直すのに苦労しました。

──立て直すきっかけはあったのですか?

なかなか攻守が噛み合わない中で、ロバート・カーターがメインになって得点に絡むようになってきたことですね。そこで僕も肩の荷が降りた面もあるし、周りを使うことでバランスが取れるようになりました。ただ、それも難しくて今度はカーターがボールを持ちすぎてコントロールが難しくなりました。それでもシーズン中盤には彼が欲しい時にボールが来ないことのフラストレーションを溜めることもなく、彼のスタイルを理解して上手く調整できるようになってきました。彼にしても日本でプレーするのが初めてで調子が上がらず苦しんでいましたが、コンディションが上がるにつれてお互い探り探りで良くなってきたんです。

──勝率がなかなか上がらない中で、ベテランのポイントガードはとにかく背負うものが重くて大変な印象を受けます。

シーズンを通して大変な時期もありましたが、選手はまとまっていたと思います。ただ、思うようなバスケットができず結果も出ていない中で、どうしても気持ちが切れてしまうことが起きます。この状況を自分が変えなきゃいけないという気持ちが自分本位になってしまい、結果的に自分のスタッツに走ってしまうような。これは誰かを批判するわけじゃなく、コミュニケーションの部分をもっと良くしないと勝ちは増えていかないという、僕なりの反省ですね。

山下泰弘

「コントロールするのは点を取らないことじゃない」

──山下選手はいわゆる『コントロール型』のポイントガードで、だからこそコート上の5人がバラバラではなく同じ方向を向くことを大事にしています。ただ、NBAではチームトップの得点を取るスコア重視のポイントガードが主流で、Bリーグでもその傾向が出てきているようにも感じます。日本バスケ界の傾向として、ポイントガードのプレースタイルの変化は感じますか?

僕自身に『こうあるべきだ』みたいな持論はないんですけど、最近はトランジションがより重視されて、国内で勝つにはサイズは小さくてもスピードが大事でシュート力もある選手が増えていますね。昔はハーフコートバスケ中心で、外国籍選手にボールを預けて起点を作って、そこに合わせていくプレーが主流でした。僕も東芝の頃は『とりあえずインサイドに』みたいな意識はあったし、外でフリーでも単発で打つな、みたいなこともよく言われました。でも今は富樫(勇樹)君や齋藤(拓実)君がスピードとシュート力で活躍しています。彼らは分かっていても止められないので、守る側からしたら嫌な相手です。真似しようにも真似できないですからね(笑)。

でも、それは若い選手に限らないですね。(五十嵐)圭さんは今もスピードがあるし、さらにサイズもあって3ポイントシュートもある。富樫選手は小さいですが、もっとすばしっこい感じですね。中に切り込んでシュートが打てる、だから寄らなきゃいけないので外が空いてパスを出される。ディフェンスからしたら守り方がすごく難しいです。

──スピードが持ち味というわけではないのにマッチアップするのが大変なポイントガードはいますか?

柏木(真介)さんですね。ドライブの中にフィジカルがあって、マッチアップされた時にサイズがあって、プレッシャーを掛けられた時の圧力が他の選手とは違います。小さい選手だと上で逃げられるんですけど、逃げ場がなくなるんです。シュート力もあるし、目線を切った時のポジショニングが上手いです。

──コントロール型とスコアラー型、どちらが今後より重宝されると思いますか?

実際は全部必要だと思うんです。比重の問題で僕はコントロールがメインですけど、シュートが全然入らなかったら守っていて怖くないです。付いているフリだけしておけばいいから。コントロールがメインであっても、相手からしたらマークは外せないぞ、と思われる存在にならないといけない。特に島根では中に切っていくタイプの選手が少ないので、僕がもっとアタックすることによって、また周りを生かしやすくなります。コントロールするのは点を取らないことじゃない。そこは間違えてはいけないですね。

山下泰弘

「プロとしてチームが強くなるように期待に応えたい」

──新型コロナウイルスの影響で長いオフになりましたが、契約延長も発表されて、これから新シーズンに向けた練習も少しずつですが本格化していくと思います。どんな心構えで2年目のシーズンに臨みますか?

個人的にはチームを転々としたくない、というのが一番でした。必要とされる限りはこのチームで精一杯やりたいという思いです。ここではただプレーするだけでなく、一緒にチームを作っていくことが求められています。東芝時代の優勝経験を含め、良い経験も悪い経験もたくさんしていますから、そのすべてをこのチームに伝えて成長していければと思います。

──外国籍選手はまだ決まっていませんが、杉浦佑成選手に白濱僚祐選手と楽しみな新戦力も加わっています。どんなチームになると期待していますか?

今シーズンはみんな苦しい状況でも一つの方向を向いて、ディフェンスで100%の力を出す、というバスケを一生懸命にやってきました。ただ、オフェンスでクリエイトできるかというと足りない部分も多くて、そこが外国籍選手頼みになってしまったという反省があります。外で回しているだけじゃ何も生まれないから、勇気を持ってアタックする必要があります。そこはもちろん僕も含めての話で、そこで僕がやらなきゃいけないと思いすぎて対処できなかったのは大きな反省です。

だからディフェンスで頑張るだけで終わらずそれを当たり前にして、次はオフェンスでもクリエイトしていくこと。外国籍選手がボールを持ちすぎるのは、日本人選手にその気持ちが薄かったからでもあります。例えば福岡で一緒だった小林大祐は、苦しい時にボールを預ければ何とか打開してくれました。そういうプレーがないと、最初のフォーメーションが上手く行かなかった時に次がなくなってしまう。そうやってフラストレーションを溜めていく展開は絶対に繰り返したくないです。

──来シーズンは降格がありません。選手としてはプレッシャーなくやれますか?

でも、それで気持ちを入れずにプレーしてしまったら成長はできないですよね。新しいチームになってプレータイムがどうなるか分からないですけど、自分が出た時間帯は島根のスタイルであるディフェンスを崩さずに遂行して、そこからオフェンスも工夫したいです。自分のアタックを増やしつつ、周りも生かすことを考えて。この1年で自分でアタックしようと思いすぎたり、今度は逆にあまり攻めずボール回しばかりになったり、ディフェンスだけとにかく頑張ったり、バランスが悪かったです。そこはマインドを変えて頑張るつもりです。

──ブースターの前でプレーする機会はまだまだ先だと思いますが、最後に皆さんにメッセージをお願いします。

島根に来て1年目で、たくさんの応援をしていただいて本当に感謝しています。スサノオマジックのホームゲームってメガホンを使うすごく独特な雰囲気の応援で、それが気持ち良いんです。連敗が続いていく中でも皆さんが変わらず応援してくださることで、すごく支えられました。シーズンが途中で終わって挨拶ができず、このタイミングでチームを替わる選手もいてチーム全員で皆さんにお礼を言う機会がないのは本当に残念だし申し訳ないんですけど、ありがとうございましたと言いたいです。

僕は新シーズンも島根でプレーできるので、まずはそのことに感謝しています。東芝から福岡に移籍して、島根に来て、会場の設営だとかモップだとか、僕たちの試合を支えてくれる人たちへの感謝もすごく大きくなっています。その感謝の気持ちをもっともっと伝えたいですし、やっぱりプロとしてチームが強くなるように、もっと勝ってB1に定着してチャンピオンシップ進出が狙えるように頑張ることで期待に応えていきたいです。このまま行くと新シーズンは僕がチーム最年長になります。キャプテンになるかどうか分かりませんが肩書に関係なく、この島根を支えて良いチームを作っていきます。

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