文=小永吉陽子 写真=野口岳彦

チーム作りに終始したこれまでの4試合

11月のWindow1と2月のWindow2が終了して4戦全敗。ここまでの戦いを通しての懸念は、日本のチーム作りの方向性がまだ見えないことだ。フリオ・ラマスヘッドコーチも選手もお互いをリスペクトし、全力で挑んでいる。むしろ、プロリーグ設立まで遅れていた背景を考えれば、この4連敗は代表チームだけの責任にしてはいけないとも感じている。

しかし現実問題として、目の前の試合に勝たなければワールドカップ予選は終わってしまう。ラマスヘッドコーチの問題でいえば、就任7カ月という短期間でチーム作りをしなければならないにせよ、日本選手個々の特徴が完全につかみきれていないだけでなく、アジアの選手層やバスケスタイルもにもアジャストできていない。特に終盤になると選手起用も采配も迷いが見える。

選手にしても同様だ。ポイントガードの篠山竜青は「Window2になってかなりラマスさんに言いたいことを伝えられるようになってきました。それでもまだ足りなくて、もっとチーム内で話をして理解を深めていかなければなりません」と語っている。まだ戦う組織的な集団にはなりきれておらず、選手とスタッフ間の共通理解を急ピッチで構築しているところだ。

戦術面ではボールを全員で動かしてノーマークを作り、ペイントにアタックして打開することを試みているが、Window2では比江島慎と宇都直輝、アイラ・ブラウンくらいしかドライブを試みる者はいなかった。Bリーグでは外国人選手にボールを預けて足が止まることが多いのだから、国際大会で急にアタックしろと言ってもできるはずがない。しかし、ゴールにアタックしなければ、国際大会でのコンタクトの強さを体感することができず、克服もできない。これが日本のフィジカルの弱さに拍車をかけている。

今できることを遂行し続けるしかない

では、良くなる兆しが見えた点は何だろうか。日本が継続して遂行していくことを挙げたい。

日本のエースは比江島慎だ。ここまでの4試合で平均18.5点、3ポイントシュートは54.5%という高い数字を上げている。その比江島がベンチスタートだった11月のフィリピン戦と2月のチャイニーズ・タイペイ戦はビハインドを負って追いかけることにエネルギーを費やしてしまった。ディフェンスから入るために比江島をスタートから外す選択をラマスヘッドコーチは取ったが、比江島がスタートとなった11月のオーストラリア戦と2月のフィリピン戦では出足から走れたのだから、チームが機能する最良の5人をスタートに選ぶべきだろう。

またWindow2では負傷のために欠場した馬場雄大だが、11月のオーストラリア戦では速攻を含む11回ものペイントアタックを試みるスラッシャーぶりで豪快な走りを生み出している。そのうち、フリースローを含む5回の攻撃を成功させ8得点を挙げ、第3クォーターの途中まではオーストラリアに食らいつくことができた。馬場の縦に割っていくプレーは強度のある国際大会で生きる。

2月のフィリピン戦では篠山がシンプルなピックプレーでアーリーオフェンスを仕掛けて先手を取った。また、フィリピンが一息ついたところで日本はディフェンスを激しくすることで2点差まで猛追している。これらの戦いにより、フリーランスに近いアーリーオフェンスが有効であること、フィリピン戦終盤のディフェンスの強度が求められることは再確認できた。

さらに、2月のチャイニーズ・タイペイ戦で辻直人が8本の3ポイントシュートを決めた後、ラマスヘッドコーチは「3ポイントをチームとしてもっと効果的に使わないといけない」とコメントしていることから、オフェンスのオプション作りの見直しが必要であることは言うまでもない。

真剣勝負からしか進化は生まれない、挑むしかない

最大の課題と言えるのがリバウンドだ。アジアでの戦いを見るとサイズで負けているのではなく、身体を張った献身的な動きや、ボックスアウトの怠り、跳び込んでいく習慣がないことなど、粘りのなさや運動量で負けている。これについてはボックスアウトの練習を続けていくと同時に、空中戦に強い選手を招集することで活路を見いだそうとしている。その選手がNCAAで活躍する渡邊雄太と八村塁であり、すでにラマスヘッドコーチと東野智弥技術委員長が、本人と大学側に交渉をしに渡米をしている。

結果的にWindow2までは選手起用と日本のスタイルを作ることに費やした形だ。Window3こそ、これまで試行錯誤したことを生かしてベストなマッチングを作り出すしかない。

1次予選の最終決戦である7月2日は、日本とチャイニーズ・タイペイとのグループ3位決定戦になることが濃厚だ。日本が2点差以上をつけて下せば得失点差で上回ることができる。もちろん日本が6月29日にホームでオーストラリアに勝利すれば道はさらに開ける。たとえ、格上相手であっても、真剣勝負からしか進化は生まれないのだから挑むしかない。

しかし怖いのは、チャイニーズ・タイペイが6月末こそは負傷者の復帰を待ち、ベストメンバーを揃えてくることだ。しかもホーム2連戦である。そう考えれば、最終決戦の前にポイントとなるのは6月29日。チャイニーズ・タイペイがホームでフィリピンに勝てば、日本は同日、オーストラリアに敗れた時点で最終決戦を待たずに一次予選敗退が決まってしまう。これだけは避けたい最悪のシナリオだが、自力ではどうすることもできない。

Window1でチャイニーズ・タイペイはフィリピンに83-90と肉薄していることからも、勝利の可能性はある。1次予選の勝敗は2次予選に持ち越しされるため、2次予選進出を決めているとはいえフィリピンが手を抜くことは考えられない。だが、チャンスを得たチャイニーズ・タイペイがホームで意気揚々と戦う姿は、毎年夏に自国で開催するジョーンズカップの熱狂を見れば容易に想像できよう。相手が発するエネルギーに受け身になってはならない。これも敵の特徴を知ればこそ、対応できる問題である。

勝負は4カ月後。コーチングスタッフは日本選手およびアジアの特徴をつかみ、これまでできたことを遂行させ、改善できることを進め、やれるだけのことをやり尽くすこと。そしてチーム間でさらなる信頼関係を築き、共通理解を深めることが求められる。Window3では日本バスケットボール界をあげた総戦力で挑まなければならない。