文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

トランジション・スリーは「決まればチームが乗る」

先週末、栃木ブレックスはシーホース三河と対戦。序盤戦の不振から抜け出し、年末年始の中断期間を挟んで7連勝とチームは上向いていたが、強豪撃破はならず逆に連敗を喫した。

試合後、会見場に現れた遠藤祐亮の表情も硬い。「勝負どころで三河がしっかり点を取っていたし、自分たちにとっては勝ち切れなかった試合。競った時に勝ち切れるチームになっていかないといけない、そう感じた試合でした」

しかし、2試合ともに大接戦。ほんの小さな出来事が変わっただけで、栃木が勝っていてもおかしくない試合だった。そう問うと遠藤は少し考えた末に否定する。彼からしたら、『今シーズンの栃木の負けパターン』だった。「第3クォーターの入りが良くて逆転しましたが、そこで10点、20点と離すことができませんでした。今シーズンはそういう試合が多くて、離す時に離せなくて追い付かれるパターンです」

課題を真正面から受け止める遠藤だが、長いシーズンを戦い抜く上でのメンタルの持ちようを理解してもいて、必要以上にネガティブにはならない。

「下を向くようなゲーム内容ではありませんでした。勝たないと意味がないわけではないです。内容は自分たちのゲームプランに沿って、ディフェンスからやれていました。前に比べてアーリーオフェンスのペースになって、そういうリズムでやるのが自分たちは好きだし、得点しやすいパターンを出せています。その上で最後に勝ち切れなかった試合なので、その部分は次からにつなげていきたいです」

古川退団を受け「得点で貢献する」の意識が裏目に

Bリーグ初年度の昨シーズン、入団5年目にしてスタメンに固定されレギュラーシーズン全60試合に先発出場。ブレイクスルーを果たした遠藤だが、スタッツは今シーズンになってさらに伸びている。目立つのは平均7.6から8.9と増加した得点だ。もともとディフェンスマンとして、リバウンドと堅守のチームを支える遠藤だが、今シーズンはスタッツ以上にインパクトに残る得点が多い。三河戦でも15得点、14得点を記録。2桁得点は実に4試合連続となっている。

チームが良いリズムでプレーできるようになり、彼自身も結果を残している。さぞ自信があるのだろうと話を振れば、最初に出て来たのは反省だった。「前半戦はディフェンスよりオフェンスに力を入れすぎて、あまりうまく行っていなかったんです」と遠藤。「後半戦はディフェンスから自分のリズムを作るようにして、オフェンスのリズムもすごく良くなりました。自分はやはりディフェンスを求められる選手だと思うので、それを今後も徹底したいです」

前半戦については「プレッシャーがあった」と遠藤は認めた。Bリーグ優勝を果たしたものの、得点源である古川孝敏が移籍し、遠藤は誰に言われるでもなく自分にプレッシャーをかけてしまったのだ。「昨シーズンもずっとスタートで使ってもらって、得点での貢献はあまりありませんでした。スタートで出る以上は得点でも貢献しないと出てる意味がないと思いました」

責任感の強さは裏目に出た。攻守のバランス意識を自分から崩してしまったことで、本来のプレーを見失うことに。ただ、それも過去のこと。今の遠藤はスコアラーとしても無視できない存在になった。「アウトサイドは自分でも結構好調と言うか、タッチが良いです」と遠藤。

「プレッシャーを感じることなく打てています」

このところ遠藤のプレーを象徴するシーンは、アグレッシブに相手エースを封じるディフェンスよりも、速攻に呼応して走った遠藤がキックアウトのパスを受け、オープンで確実に決める3ポイントシュートだ。必ずしもシュートで生きる選手ではない遠藤に、そのチャンスが次々と巡って来る。「決めなければ」と緊張するのか「もらった」とほくそ笑んでいるのか。トランジション・スリーを打つ瞬間の心境を問うと、遠藤らしい答えが返ってきた。

「ブレックスらしいシュートシチュエーションなので、これが入ればチームがリズムに乗るなという思いはあります。外れてもリバウンドは取ってくれるので、プレッシャーを感じることなくシュートを打てています」

それでも自身のオフェンスにはまだまだ満足していない。「15点取ったり2点だったりと波があります。シーズンを通してずっと好調でいられるよう準備したいです」と遠藤は言う。

チームはまだ17勝17敗と勝率5割。三河に連敗してまた東地区最下位に転落してしまった。だが遠藤は「連敗はしましたが、収穫もすごく多かったです」と力強く答える。「これからチャンピオンシップに向けて一つも負けられません。とりあえず今はチャンピオンシップ出場を目指して、一戦一戦を大事にしていきたいです」

堅実なディフェンスに加え、トランジション・スリーというド派手な武器を手に入れた。主力選手である遠藤のステップアップは、チームにも大きな力になるはずだ。

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