文=丸山素行 写真=丸山素行、野口岳彦

ルーキーシーズンを戦う横浜ビー・コルセアーズの田渡凌。ここまで30試合すべてに出場し、平均19.4分のプレータイムで7.2得点と活躍している。尺野将太ヘッドコーチは「ドライブで中まで入っていく力があり、そこからフィニッシュに行ったりパスもさばける。オフェンスの起点の一つとして彼のプレーがあって、そこが生きると周りも生きてくる時間帯が多くなる」と高く評価しており、「ルーキーと言うよりは一人の戦力」と認めている。

しかし、田渡の自己評価は及第点以下どころか「0点」。シーズン後半戦の巻き返しを誓う田渡に、その思いを聞いた。

前半戦の自己評価は0点「理想に近づけていない」

──シーズンも折り返し地点まで来ました。ここまでの自分のパフォーマンスには100点満点で何点をつけますか?

0点です。

──0点というのは極端な評価だと思いますが、理由を教えてください。

自分自身の理想に全く近づけてないし、それがチームの勝ち星につながっていない。ガードには責任がたくさんあるので、全く満足できていないし、正直に言えばフラストレーションが溜まっています。勝ってる時はハッピーになりますけど、それを続けられていないのが現状なので。自分に波があるからチームにもそういう波がある。

僕だけの出来でチームの勝敗が決まるわけではありませんが、これだけ試合に使ってもらえているのは、ゲームにインパクトを与えられているということです。それを踏まえて考えると全く満足できないです。0点です。

──8勝22敗でチームが最下位では評価できないということですね。まだ30試合が残っていますが、チームが浮上するには何が必要だと考えますか?

どうやったら結果が出るのか、まだ自分は分かっていません。バスケは確率のスポーツなので、どういうシチュエーションに自分を置いたら成功率が高くなるのかを考えてプレーしないといけないので、「田渡はこうプレーすればいいんだ」というのを早くつかみたいです。

その中で自分に必要なのはアグレッシブというワードで、自分がアグレッシブにアタックしている時にチームが乗ると思うので、そこをもっと出していきたいです。コンスタントに活躍する意ために、変化という意味では常にアグレッシブに行くことをテーマにしたいです。

──田渡選手の『色』というものはまだ手探り?

コーチ交代もあって「どうしたらこのチームが良くなるのか」をすごく考えてやっている中、自分のやることが1試合で変わってしまうことも正直ありました。尺野(将太)コーチからはアグレッシブにアタックしてほしいとよく言われるので、それを期待されるのはうれしいですし、そこでもっと打開したいです。

「すべてがうまくいくことなんてない」という覚悟

──なかなかチームの成績は上向きませんが、シーズン序盤からケガ人が相次ぐなど不運な面もあります。加入時点での想定と現状には差があると思いますが、どう受け止めていますか?

このチームは予想ができないじゃないですか。「横浜はこれくらい勝てるんだろうな」というような想定は自分には全くありませんでした。とにかく目の前のことを頑張っていかなきゃいけないって思ってやっています。

僕の人生の目標ですが、一日が終わった時に「今日、全力で最大限の努力をしたか」を自分に問いかけるんです。バスケ選手である前に、人間として毎日最大の努力をすることが大切だと思っているので、先のことを見越して予想を立てるより、一日一日を努力することに意識を向けています。

──昨シーズンは入れ替え戦に勝利して残留を決めました。最低でもそのラインより上、という考えはありますか?

もちろん、まだ30試合ありますし、自分たちの目標を達成できるチャンスがあると思っています。前回は千葉ジェッツに大敗しましたが、チームは確実に良くなっています。一つスイッチが入れば、強くなるチャンスが確実にあると思っています。そういう役割に自分がなれればと思います。

──結果が出ない現状に嫌になることはありませんか?

もちろんやってやるっていう気持ちで来てますけど、すべてがうまくいくことなんてないので、それなりの覚悟はありました。

「期待されてもされなくてもやるべきことは変わらない」

──短大、大学とキャプテンを務め、帰国して横浜に加入すると一番下のルーキーになります。そこに葛藤はありませんでしたか?

コートの外では皆さん先輩で、僕も面倒を見てもらっているし、教えてもらうこともたくさんあります。でもコートに立てば変わらないので、そういう葛藤はありません。

──アメリカの大学で結果を残しての『逆輸入』という形はBリーグの中では例が少ないし、期待が大きいと思いますが、そう見られることに対してはどう思いますか?

高校の時は雑誌にもいっぱい載せてもらってすごいねって言われていたのですが、それがあまり好きじゃなくて。アメリカに行って自分の本当の力を試したいと思いました。現状の自分のパフォーマンスには全く満足していないし、期待されることはありがたいですが、それ相応の責任感もすごくあります。「もっとやらなきゃ」といつも思っています。

──期待されることでモチベーションも上がるものですか?

いや、それは期待されてもされなくても変わらないです。長いスパンでいろいろな目標があって、クリアしないと上には行けないと思っています。チヤホヤされて満足していたら、そんなに大した選手にはなれないと思っています。

大雑把な言い方になりますが、しっかり毎試合コンスタントに出て活躍することがチームの勝利につながります。自分が良いプレーをした時は良い試合ができて、チームが勝つチャンスも多いと感じますが、それができない時がまだ多いので、そこで波を作ってはいけないです。試合に出ていたらルーキーだとか関係ないので、責任感を持ってやっていきます。