「ただ座って試合を見ているだけなんて耐えられない」
2019-20シーズンもホークスでプレーしたビンス・カーターは、今シーズンを最後に現役を引退する。
新型コロナウイルスの影響によりシーズンは今も中断していて、もしシーズン終了という判断が下されれば、カーターの功績に感謝し、拍手と歓声で次の人生に送り出す機会も失われてしまうかもしれない。
晩年のカーターは現役選手としてのパフォーマンスにこだわり、プレータイムを得られる球団と契約してきた。彼曰く、これまでの経験を若手に伝える役割に限定されるが、優勝を狙える強豪からもオファーをもらったことがあったという。しかし彼は、親子ほどに年齢が離れているチームメートと一緒にプレーする方を優先してきた理由を『Sports Illustrated』とのインタビューで語った。
「優勝を追い求めることは、自分にとって重要ではなかった。僕の希望はチームの一員として貢献すること、そしてプレーすることだ。ただただプレーしたかったんだ」
「確かに自分の経験を生かしてメンターになる道もあったと思う。でもね、特定の状況下でのプレーやポジショニングだったり、伝えるよりも実際に見せてやる方が良い場合もある。メンターをやりたいと思わなかったし、対応できなかっただろうね。もしその役割に徹していたら、選手として酷い姿を晒してしまっていたかもしれない。僕は競い合うのが大好きなんだ。自分のプレーを見たことがある人なら分かってもらえると思うけど、ただ座って試合を見ているだけなんて耐えられない」
観客の前でプレーする方を選択したカーターは、最後までその『美学』を貫いた。「僕はバスケットボールが大好きなんだ。選手の力にもなりたいけれど、それはパフォーマンスを通してだ。だから優勝を追い求めることには関心がなかった。そのおかげで、NBAファイナルに進むチャンスを逃したかもしれないけどね」
「いくつかオファーはあった。ただ、声をかけてくれた球団からは『プレータイムは約束できない』と言われた。もちろん、出場時間が保証されるなんてことはない。でも『出場時間は約束できないが、知識を生かしてチームの力になれる』と言われても、そこでバスケがしたいとは思わなかった」
カーターはシーズン中断が決まった3月11日のニックス戦後に「これで終わりになったとしても仕方がない」と微笑んだ。これもカーターらしい終わり方なのかもしれないが、世界中のファンは彼の最後の勇姿を目に焼き付けられる日が来ることを願っている。