文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一

前半は一つのミスが流れを変える緊迫した展開に

さいたまスーパーアリーナで行われた天皇杯の決勝、千葉ジェッツが第3クォーターに膠着を破ってシーホース三河を突き放して圧勝し、昨年に続き大会2連覇を飾った。

前半はレベルの高い拮抗したゲームに。西村文男を起点に速攻を繰り出す千葉、桜木ジェイアールのポストで攻める三河と、互いの持ち味を出しながらハイペースで得点を奪い合う。アーリーオフェンスからマイケル・パーカーとギャビン・エドワーズの得点で千葉が先手を取るが、三河もすぐに金丸晃輔が連続得点。比江島慎が原修太を振り切り3ポイントシュートを決めれば、一瞬の隙を見逃さずパーカーが3ポイントシュートを決め返す。

その第1クォーターを取ったのは三河だった。千葉の緩慢なスローインを奪って走ったダニエル・オルトンがダンクを決めて22-21と逆転して第1クォーターを終える。

第2クォーターも両者一歩も譲らない展開、均衡を破ったのは千葉だった。残り2分半、アキ・チェンバースの3ポイントシュートで抜け出すと、続くポゼッションでリバウンドから西村が走る速攻に三河はついていけない。西村からパスを受けた小野龍猛がコーナースリーが決まり、この連続3ポイントシュートで41-34と千葉が抜け出した。

振り返れば、千葉のトランジションオフェンスへの対応で外の小野をフリーにしてしまう前半の最後に見せた欠陥をすぐに改善できなかったことが三河にとっての致命傷となった。42-47でスタートした第3クォーター開始早々、互いに3ポイントシュートを決め合う展開で小野が3本連続で3ポイントシュートを成功させる。「ノーマークが作れていた。自分の中で決められるという確信があったので打ち続けた」と小野は振り返る。

「一人ひとりがサボらず自分の仕事をやった結果」

これで48-60と点差が開いたところで、三河にアクシデントが起こる。前半で3つのファウルを犯していた桜木が痛恨の4つ目を犯しベンチへ。オン「1」で絶対的な存在である桜木が不在となり、攻めの形がなくなってしまったが、残り時間はまだ6分もあるという状況。鈴木貴美一ヘッドコーチは傷口がこれ以上広がらないうちに手を打った。

桜木に代わるパワーフォワードに西川貴之を置き、金丸と松井啓十郎のシューターを同時起用。ボール運びは比江島に託した。ところがこれが機能せず、無理に放つ3ポイントシュートはことごとく千葉の速攻の起点となった。またポストに入れるパスが狙われ、ここでのターンオーバーからも速攻を浴びる。桜木が下がった時点から18-0のランを浴び、これで勝敗はほぼ決してしまった。

大野篤史ヘッドコーチはこの時間帯をこう振り返る。「簡単にインサイドフィードさせない。ポイントガードはプレッシャーをかける、ウイングはディナイする、そしてビッグマンが守る。一人ひとりがサボらず自分の仕事をやった結果があの第3クォーターになったと思います」

最終クォーターに強攻に出る三河だが、残り6分を切ったところでオルトンがアンスポーツマンライクファウルを取られ、5ファウルで退場に。これで万事休す。千葉が89-75で勝利した。

「自分たちのスタイルを確立できた大会になった」

千葉はこれで大会2連覇。富樫勇樹がケガ、代役の西村はケガから復帰したばかり、マイケル・パーカーも故障を抱えながらの戦いとなったが、大野ヘッドコーチは「ベストコンディションではない中、個ではなくチームで戦うことを選手がコートで表現してくれた。自分たちのスタイルを確立できた大会になった」と素直に優勝を喜び、「リーグ戦でも優勝を狙う」と早くも新たな目標へと視線を向けた。

キャプテンの小野龍猛も言う。「チームとしてまとまれば強い、個ではなくチームで戦うのが自分たちだとあらためて気づかされた3試合でした。これをリーグ戦でもやれればもっともっと成長できるチームだと思っています」

昨シーズンの千葉は天皇杯初優勝で自信を得て大きくステップアップした。今回もその再現となれば、リーグ優勝にも手が届くことになるだろう。かつては勝てなかった千葉が『Bリーグの時代』に大きな変貌を遂げつつある。