文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一

タイトル獲得に向けオルトンが攻守にフル回転

天皇杯準決勝の第2試合はシーホース三河と川崎ブレイブサンダースの対戦。強豪同士の激突は、三河が第4クォーター途中で30点差を付ける予想外の展開となった。

決定的な働きをしたのがダニエル・オルトンだ。桜木ジェイアールのポストプレーと合わせてインサイドでパワフルなアタックを繰り返し、守りに転じればニック・ファジーカスを抑え込む。川崎の司令塔、篠山竜青が様々な仕掛けでズレを作ろうと試みるも、三河のディフェンスは容易には崩れなかった。

第1クォーターで23-13と三河がリード。ただ、川崎にとってオン・ザ・コート「1」の第1クォーターで我慢の展開になるのは想定内。想定外だったのはオン「2」の第2クォーターに8得点と抑え込まれたことだ。オルトンとアイザック・バッツがファジーカスを挟み込むように徹底マーク。鈴木貴美一ヘッドコーチが「ペイントエリア内でのキャッチ&シュートはやらせるな」とその一つを明かした『川崎対策』を完璧に遂行した。

またオルトンはジョシュ・デービスやルー・アマンドソンとのマッチアップでも果敢に1on1を仕掛け、背中でゴール下まで押し込み、ここからの展開で川崎のディフェンスを攻略した。北卓也ヘッドコーチは「外国籍同士のマッチアップでやられた、思った以上に1on1でやられてしまった」とこの点を悔やむ。篠山も「出だしの部分でインサイドでやられてしまった」と、この点を敗因に挙げている。

徹底したファジーカス対策で付け入る隙を与えず

前半でファジーカスはフィールドゴール12本中2本成功の5得点。エースの不発でリズムの狂ったチームは第2クォーターに6本のフリースローのうち4本を外すなど悪循環にハマってしまった。ファジーカスは「外せば外すほど重圧を感じて、どんどん調子が狂ってしまった。入り始めた時にはもう手遅れだった」と肩を落とす。試合を通じてオルトンは22得点11リバウンド4アシストを記録。ファジーカスを15得点に抑えてもいるから、まさに出色のパフォーマンスだった。

38-21でスタートした後半、ようやくファジーカスが復調して川崎にエンジンが掛かったかに見えたが、速攻からのレイアップを落とすなどイージーなミスが出て、さらにはファジーカスが得点した直後に金丸晃輔が、比江島慎が3ポイントシュートを決め返して逆に点差が広がる。オン「1」の第3クォーターも、三河はオルトンと桜木を同時起用できる強みを最大限に生かしてインサイドにボールを集めつつ、ポストプレーに対してダブルチームに来ればパスをさばく。ビハインドを背負う川崎が難しいシュートを気迫でねじ込み追い上げるも、冷静にイージーシュートのチャンスを作り出す三河のペースが上回った。

また川崎の反撃を阻む上で大きく貢献したのが狩俣昌也だ。篠山、藤井祐眞のハードプレッシャーを苦にせずボールを運んでスムーズなオフェンスを展開し、守備では逆に彼らを激しく追い込んでリズムを作らせない。61-43で始まった第4クォーター、その狩俣、西川貴之がいきなりの連続3ポイントシュートを決め、タイムアウトを挟んで松井啓十郎、再び西川と連続3ポイントシュート。残り6分30秒で栗原貴宏が得点を決めた時には75-45と30点差が付いていた。

金丸は千葉に対し「シンプルな攻めの印象です」

終盤、辻直人の3ポイントシュート固め打ちで川崎が意地を見せるも、もはや勝敗は決していた。最終スコア87-68で三河が悠々と勝利を収め、決勝へと駒を進めている。

決勝の相手は千葉ジェッツ。三河にとっては去年の天皇杯で敗れた相手で、比江島は「リベンジの機会だと思ってやります」と意気込む。富樫勇樹をケガで欠くが、「富樫がいればダイナミックなオフェンスのチームですが、西村(文男)さんだと崩れない安定したチームで、難しい相手です」と印象を語る。また金丸は千葉の印象について「今シーズンはまだ対戦していないので、見た印象ですが」と前置きした上で、「ピック&ロールの多いチーム。シンプルにピックからのダイブが多い、そこに寄るとシューターに出すシンプルな攻めの印象です」と語る。

鈴木貴美一ヘッドコーチは「一日で戦略を立てなきゃいけない。互いにストロングポイントをどう抑えるか、抑えてきたところをどうするか。明確にシンプルにやりたい」と明日の決勝に向けて語る。

千葉が連覇するか、2016年の優勝チームである三河が王座に返り咲くか。天皇杯男子決勝は明日14時から行われる。