文=丸山素行 写真=鈴木栄一

八村阿蓮がインサイドを制し、明成が大量リード

ウインターカップ男子決勝は夏のインターハイと同じ明成(宮城)と福岡大学附属大濠(福岡)というカードに。終盤に猛追されるも落ち着いてゲームを進めた明成が79-72で逃げ切り、インターハイの雪辱を果たした。

前半は佐藤久夫コーチが「出来すぎだった」と話したように、明成が先手を取った。ゴール下で井上宗一郎とマッチアップする八村阿蓮が、スピードのミスマッチとシュートレンジの広さを利用し前半だけで18得点を記録。またインサイドを経由して放つ3ポイントシュートが良く決まり、田中裕也が5本の3ポイントシュートを沈め17得点を挙げた。

ディフェンスでは2-3のゾーンディフェンスが機能。大濠の攻め手に対してもヘルプディフェンスのローテーションでズレを作らせなかった。井上へのパスを遮断してインサイドに起点を作らせず、単発の外角シュートを許すのみと堅守が光った。こうして攻守で圧倒した明成が49-33と大量リードを奪い前半を終えた。

後半に入っても明成の優位は変わらず、開始2分強で点差は20の大台に。だが、大濠がインターハイ王者の実力を見せたのはここからだ。試合の流れを一変させたのはオールコートのマンツーマン。このプレッシャーからターンオーバーを誘発して反撃開始。なかなかゾーンを崩しきれなくても、ディフェンスでリズムをつかんだことによって、確率の悪かった3ポイントシュートが決まり始める。土家大輝が3本、中田嵩基が2本の3ポイントシュートを決めて一気に差を詰め、最大21点あった点差を1桁まで戻し、56-65で最終クォーターへ。

後半から大濠が猛追も勝負どころで痛恨のミス

最終クォーターも大濠の時間帯が続く。気持ちの入ったディフェンスで開始から4分間、明成に得点を許さない。そして準決勝の福岡第一(福岡)戦のように、試合中盤まで我慢のバスケットをしてきた井上が本領発揮。オフェンスリバウンドからゴール下のシュートをねじ込み5点差まで詰め寄った。

その直後、中田が高い位置でスティールに成功。ここから速攻を繰り出すところで止められ、判定はアンスポーツマン・ライクファウル。中田は片峯聡太コーチに向けて小さくガッツポーズ。完全に流れは大濠にあった。ところが、中田はこのフリースローを1本外し、直後のポゼッションでも得点につなげられず。最大のチャンスを1点のみで終えてしまう。中田は試合後、「あそこは逆転しておかないといけない場面だった」とこの場面を振り返った。

ただ、まだ残り5分55秒という場面。ミスはディフェンスで挽回できた。しかし、ここで蒔苗勇人に3ポイントシュートを決められ、61-68と突き放されてしまう。このクォーターに入って明成最初の得点。プレータイムの少ない蒔苗がビッグプレーでチームに勝ち運を呼び込んだ。

それでも大濠は横地聖真の連続得点で再び詰め寄り、残り3分を切り3点差に詰め寄られる場面もあったが、八村のブロックショットや田中の速攻でこれ以上の追撃を許さない。自分たちに流れがあると確信した明成はラスト数分を落ち着いてプレーし、大濠に付け入る隙を与えずに79-72で明成が勝利した。

明成の佐藤コーチは「指導者冥利につきます」と感謝

佐藤久夫コーチは「追われるゲーム展開は苦手な展開ですが、私の考えている以上に選手達が落ち着いていて、話をしながらゲームを作っていった。最後まで自分たちのバスケットボールを展開できたと感じています」と、崩れなかった選手たちのメンタルを称えた。

「最後の最後ですっきりしたゲームができた。私の長いコーチ人生の中で彼らとこれほど強い結びつきを持って、結果を出すことができて、指導者冥利につきます。選手たちに深く感謝したい」と語り、優勝の味を噛み締めた。

一方、敗れた大濠の片峯コーチは自身の指導者としての力量を敗因に挙げた。「序盤から劣勢を強いられる中で、なんとか食らいついていきましたが、最後もう一つのところで逆転しきれなかった。選手は頑張っていましたが、私の采配の不足が出たのかなと反省してますし、悔しい思いです」

7日間に渡って繰り広げられたウインターカップ2017。女子は大阪桐蔭が初優勝を遂げ、男子は明成が2年ぶり5度目の優勝を手にした。今年も様々なドラマが起こり、盛り上がりを見せた。気は早いが、またこの季節の訪れを待ちたい。