取材・写真=古後登志夫 構成=鈴木健一郎

3年ぶりのウインターカップ出場を勝ち取った大阪桐蔭。現チームの3年生は過去2年、大阪のライバルである大阪薫英女学院に敗れる悔しさを味わってきたが、最後のチャンスで東京体育館でプレーする権利を手にした。とはいえ今夏のインターハイでは3位に躍進しており、岐阜女子と桜花学園の『2強』に続く存在として注目を集めている。

だが、チームを率いる森田久鶴監督は「一戦一戦を大切に戦うだけです」と、浮ついた雰囲気は一切ない。ウインターカップ開幕を前にチームの手綱を引き締める森田監督に話を聞いた。

[INDEX]ウインターカップ2017プレビュー 出場校インタビュー

「練習でできないことは試合でもやれないよ」

──まずは先生のこれまでのキャリアを教えていただけますか。

もともとは中学校の指導者でした。12年前に大阪の樟蔭東で中高を見るきっかけがあって、そこでインターハイやウインターカップを経験させていただきました。8年前に大阪桐蔭に来て、高校バスケの世界にどっぷり漬かっています。おかげさまでインターハイ8回、ウインターカップもこれで4回目で、生徒のおかげで良い思いをさせてもらっています。

──もともとは中学で教えられていたんですね。中学生と高校生では何が違いますか?

まずはスピードが違います。それと身体の強さ。この部分は一番最初に痛感しました。このスピードに慣れさせる。それと体作りを徹底させる。技術的なことはしっかり考えていれば中学校も高校もあまり変わりません。それでもスピードと身体の強さがクリアできて全国でも少しずつ戦えるようになってきました。

──思春期の生徒たちを指導する上での難しさは感じますか?

やっぱり遊びたくなりますよね。それでも「あなたたちがここに来ている目的は何なのか」と訴えかけます。目標を持って大阪桐蔭に来ている以上は、別の方向に傾かないように。入った目的を忘れないために、技術よりも目配り、気配り、思いやりです。スポーツをする前に人間として成長してもらうことが大事なので、そのことは選手たちにもよく話します。

やっぱり高校生なので、メンタルは強くはないです。みんなシャイだし、弱い部分があります。でも、「練習でできないことは試合でもやれないよ」と彼女たちには伝え続けて、練習でそこのところを追い込みます。言い続けてやらせる、そこで精神的に強くなっていくのが大事です。

──バスケ部だけに専念しているわけではなく、授業もお持ちですよね? 学校の先生をしながら全国大会を戦うのは大変では?

体育を教えていますし、担任も持っています。大阪桐蔭に来て8年目になりますが、ウチは他のクラブも強いんですよ。野球、サッカー、卓球、陸上、いろんなクラブが強いんです。野球は甲子園の常連ですが、それでも監督は授業もやるし、担任もやっています。だから大変だとも嫌だとも思わないですね。

他のクラブと切磋琢磨する環境が大阪桐蔭にはあります。全国大会に出れば喜んでもらえるし、ダメだったら「また頑張れや」と励ましてもらいます。授業をやる中でバスケ部の生徒をかわいがっていただいたりもしています。Ⅲ類がスポーツ教科クラブなんですけど、その中で他競技の部活とお互いに協力できるのは、学校として素晴らしい環境です。バスケ部の現在があるのも、そのおかげだと思います。

「ディフェンスで頑張ることのできるチーム」

──今年のチームを紹介してください。

今の3年生は、2年前のインターハイで1回戦負けした選手たちです。今年のインターハイでは1回戦で精華女子と対戦して、これをうまく乗り越えたことで自信になり、準決勝まで行くことができました。ちょっとしたきっかけではありますが、そこで自信を得られた結果です。

竹原レイラは185cm、永井唯菜が176cmと高さがあって、一般的にはオフェンス中心のチームと思われているかもしれませんが、ディフェンスを頑張るのが私たちの課題です。今は少しずつですが向上してきて、ディフェンスで頑張ることのできるチームとして戦いたいです。

──ウインターカップに向けた準備は順調ですか?

予選がすごく早くて、9月18日が決勝でした。それからすごく間が空くので、選手たちもふわっとしてしまって。組み合わせが決まったことで、ようやく上がってきたという感じです。コンディションをうまく持っていきながら、インターハイで得た自信をそのままコートで発揮できるような状態に持っていきたいですね。

──竹原レイラ選手は日本代表候補に選ばれました。代表を経験したことで何か変化はありましたか?

自信を持って帰ってくるんですけど、それをチームで生かすのは簡単ではないです。アンダーの代表にはうまい選手がたくさんいて、ノビノビさせてもらった分、帰ってきて何日かはハッスルできるんだけど、その後がうまく回らない。代表に行くとスピードのある選手とはマッチアップしないんですよね。だから「自分はできる」と錯覚して帰ってくる。彼女が日本でつく選手は175cmぐらいで、スピードがありますから。今回はそこで間違えないよう、周囲の子たちが彼女の性格も理解しながら、うまくサポートしてくれたと思います。

「ウインターカップでも一戦一戦やっていく」

──練習を見ていると、よくしゃべる選手が多いという印象を受けました。これは大阪の地域性でしょうか?

練習が終わったらそんな感じですけど、練習中はもうちょっとメリハリを付けて頑張ってくれたほうが良いですね。追いつめられるとシュンとなるタイプの子が多いんです。やる時はやって、楽しい時は楽しむ。そういうメリハリを付けつつ指導しているつもりですが、なかなかそう簡単にはいきません。まだ子供の部分もあって、ワーッとやりすぎると調子に乗ってしまう。そこは締めないと。

変な話ですが、全国で3位になったとしたら、分からないうちに自信が過信に変わったり、変な方向に行くケースはあると思います。そこは指導者が、監督だけでなく部長もアシスタントコーチも、チームの状態をしっかり見て話をしなければいけません。

──全国を経験することで得たものは何でしょう?

目標は高く持つのですが、一戦一戦を大事にするのが私たちのポイントです。まずは目の前の一試合を大切にしていこうと。結局はそれがインターハイの結果になり、自信にもなったんじゃないかと思います。

──ウインターカップの目標はどこに置きますか?

ウインターカップでも一戦一戦やっていきます。ウチは第3シードで23日に試合がないので、一つでも試合を経験してきたチームと戦うのは難しい問題でもあります。正直なところ、ウチに芯の強さはないと考えているので、まずはそこの入り方を間違えないこと。あとはオフェンス重視と見られていても、ディフェンスから早い展開へと持っていけるように。そういう部分を見ていただけたらありがたいです。