ジュリアン・シャンペニー

解雇を経験したドラフト外の選手がNBAファイナルへ

スパーズとサンダーの『GAME7』で、サンダーのシェイ・ギルジャス・アレクサンダーはゲームハイの35得点を記録した。スパーズのビクター・ウェンバニャマが22得点で続き、その次は20得点のジュリアン・シャンペニーだった。

シェイとウェンバニャマのエース対決がシリーズの勝敗を決するかと思われたが、プレーオフでは思わぬ選手の活躍が決め手となることも多い。シャンペニーは3ポイントシュート10本中6本成功、両チームを通じてトップとなる得失点差+16という働きで、歴史的な勝利の立役者となった

ヘッドコーチのミッチ・ジョンソンは、シャンペニーの働きぶりを『影のヒーロー』と呼んだ。「ジュリアンはシュートに当たりが来なくてもリバウンドを2桁取るような試合がある。タッチの良し悪しに関係なくスペーシングで相手を引き付け、得点が止まった時にビッグショットを決める。彼は『影のヒーロー』なんだ。派手なシーンは少なくても、ディフェンスやリバウンドでチームを助け、我々の武器であるトランジションに繋げてくれる」

第1クォーターに3ポイントシュートを2本を決め、その2本目がこの試合最大となる14点のリードを生んだ。第3クォーターに逆転を許した後、立て続けに3本を決めて試合の流れを引き戻した。コート狭しと動き回り、流れの中でチャンスが来れば打ちきる彼のプレーに、迷いは全く感じられなかった。

大舞台でも自信を持ってプレーできる理由を「舞い上がりすぎたり落ち込みすぎたりしないよう、上手くコントロールしてくれるチームメートのおかげだ」とシャンペニーは言う。「シュートはずっと練習してきたけど、特に今シーズンは仲間たちが『お前が必要だ』と励ましてくれて、感情の波に流されず集中できている。それが自分らしいプレーに繋がっている」

ウェンバニャマやステフォン・キャッスルのように、ドラフト上位指名権を活用して育て上げた若きタレントがスパーズの中核を成している。24歳のシャンパニーも同じように思えるが、彼はドラフト外でセブンティシクサーズに加わるも、わずか2試合で6分しかチャンスを得られず解雇された過去を持つ『雑草』だ。

「当時22歳で、正直なところNBAキャリアはもう終わりだと思った。NBAでは一度チャンスを逃したらもう終わりだという話を聞いていたからね」と彼は当時を振り返る。

シクサーズは優勝を目指しており、ドラフト外の若手を育てる余裕がなかった。それでも彼が解雇されたのはNBAオールスター直前で、マック・マクラングを『シクサーズの選手として』ダンクコンテストに送り込むために登録枠を空けるのが目的で、シャンペニーの将来性を全く信じていなかったことになる。このプレーオフでサンダーのシックスマンとして大活躍するジャレッド・マケインを放出したシクサーズの判断が散々に批判されたが、シャンペニーの放出も同じぐらい悔やまれる判断ミスだ。

「Gリーグでしか出番がない中で、何の前触れもなく解雇を告げられた。夢を追い掛けていた若者にとっては酷な話だよ」とシャンペニーは言う。「それでもスパーズがチャンスをくれた。僕は『何を求められても必ず結果を出して、ここで自分の居場所を作る』と決めて必死に頑張った」

彼がスパーズに加わったのはウェンバニャマが指名される数カ月前で、このシーズンは22勝60敗で西カンファレンスの最下位だった。そこでシャンペニーは15試合に出場し、翌2023-24シーズンから主力として活躍している。3ポイントシュートには波があっても、長身とウイングスパンを生かしたディフェンスとリバウンドは常に計算できる。そんな『汗かき役』としての評価を確立することで、彼はスパーズに居場所を築いた。

「僕はこのチームがどん底にいた時も、調子が良い時も、その中間にある時も、すべてを見てきた。だからこそ、そのすべてを乗り越えてここまで来れたことに感動している」