文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

スタートに失敗するも後半に逆転する展開に

東京オリンピックへとつながるワールドカップ予選の初戦、日本代表はフィリピン相手にクロスゲームを演じるも、終盤に失速し71-77で勝利を逃した。

日本の先発は富樫勇樹、田中大貴、馬場雄大、アイラ・ブラウン、竹内譲次の5人。立ち上がり、田中の3ポイントシュートで先制するも、その後は大事な試合とあって慎重に行きすぎ、ボールと人が連動するバスケットを展開できず得点が止まる。

ディフェンスでは相手のインサイドを竹内が巧みなポジション取りでアタックを許さず、ロースコアゲームに持ち込むものの、得点が伸びないことで慌ててしまいターンオーバーを連発。ターンオーバーからの失点だけで8と、悔やまれる立ち上がりとなった。

それでも途中出場の比江島慎が劣勢を覆すべく、いきなり『比江島タイム』が発動。積極的に個人技で攻めかけて連続得点を奪う。また篠山竜青も前から激しいプレッシャーを掛けて相手の勢いを削ぎ、試合の流れを呼び戻した。

28-37でスタートした後半、日本の逆襲が始まる。ゾーンディフェンスで相手のリズムを乱すと、張本天傑の3ポイントシュートや馬場雄大の3点プレーが飛び出す。日本の理想とするディフェンスからの速い展開も出て、3分間で13-0と走り逆転した。

リードを奪った後の展開に課題、再度の猛追も及ばず

流れが悪い中でも踏み留まった序盤、そして後半立ち上がりの猛反撃のベースとなったのは、指揮官フリオ・ラマスが徹底させたリバウンドだ。9点リードされていた前半終了時点でも、リバウンドは26-23で上回っていた。特にオフェンスリバウンドは10-3と圧倒。日本がシュートを落としすぎた結果でもあるが、5人全員で取りに行くことを徹底したリバウンドが日本の踏ん張りを支えていた。

ところが、第3クォーターの終盤にこのリバウンドが崩れてしまう。それまで一番身体を張っていたアイラ・ブラウンがスタミナ切れを起こしてリバウンドで競れなくなると、フィリピンはこの隙を逃さずに再びリードを奪う。

55-59で始まった最終クォーター、日本はアグレッシブなディフェンスが裏目に出て、5分を残しチームファウルが5に到達。ディフェンスでリズムを失い、オフェンスでも積極性を欠くようになり得点が止まってしまう。そして残り3分48秒で60-70と再び2桁のビハインドを背負ってしまった。

それでもここまでわずか2得点とシュートが入らなかった富樫勇樹が、3ポイントシュートを沈め悪い流れを断ち切ると、アイラ・ブラウンのダンクをお膳立てし、自らも連続で3ポイントシュートを沈め、残り1分39秒で69-72と3点差と詰め寄る。

だが直後に3ポイントシュートを返されると、次のオフェンスでアイラが痛恨のムービングスクリーンをコールされ万事休す。カムバックする底力は見せるも、終盤に2桁点差を許すなど安定感に欠けた日本は71-77で初戦を落とした。

田中大貴「足が止まったのがもったいなかった」

ファウルトラブルに陥りながらも攻守に渡りアグレッシブなプレーでチームを支えた田中大貴は、逆転に成功した第3クォーターにそのまま突き放せなかったことを悔やむ。「ディフェンスを頑張ってどんどん走って追いついたのに、そこで一本一本を大事にしようとペースを落としてコントロールし始めたところがありました。そうじゃなくて、ディフェンスを頑張っているんだからどんどんプッシュしていくべきでした。落ち着くのは第4クォーターの最後だけでいいんです。そこで足が止まったのがもったいなかったです」

10得点を挙げた田中だが、彼が気にしたのは第1クォーターで2つ、第2クォーターでまた2つファウルを取られたことだ。「すぐファウルを取る審判で、少し接触しただけでファウルになるのでオフェンス側がすごく有利でした。自分がもっと早くアジャストすべきでした。それができなかったのは自分の対応力のなさ」とバッサリ。

「比江島選手が引っ張りましたが、一人であれだけやると後半キツくなる。そこは自分がファウルしてしまって休ませることができなかった」と、比江島に負担をかけたことを悔やんだ。

フィリピン相手に堅守とリバウンドで対抗し、リードを奪う展開にも持ち込んだ。だが、善戦ではなく勝利が必要だった試合を落とした。次は27日、敵地アデレートで強豪オーストラリアと対戦する。