吉田亜沙美

ベルギーでのオリンピック予選は1勝2敗と負け越したが、参加した選手たちは「良い経験になった」と口々に語る。トム・ホーバスヘッドコーチの下、アジアではこのところ勝ち続けていた女子日本代表だが、今回はスウェーデン、ベルギー、カナダと世界の強豪との真剣勝負で、自分たちの現在位置を知ることができた。吉田亜沙美も同様で、昨年に一度引退してから現役復帰を決断し、コンディションや試合勘を取り戻していく過程における自分の立ち位置を再確認できたという意味で「良い経験だった」と語る。

「チームとしての日本らしさが出せた」

──4日間で3試合と短い大会でしたが、世界の強豪相手の真剣勝負でした。吉田選手にとってはどんな大会でしたか?

マレーシアの時も久々のアジアの大会でオーストラリアと対戦できるチャンスがあって、今回はオリンピックを前に世界を知ることのできる唯一の機会でした。そこは本当に良い経験になったと感じています。

個人的には、手応えはなかったかな。満足も納得もしていない、という気持ちです。でもそれが、今まで見たことのない自分が見えたりとか、私にとってはすごく良い経験でした。自分のパフォーマンスができなかった時にどう改善していくか、していかないといけないのかの勉強にもなったし。

そういった意味でネガティブにはなっていません。ポジティブでもダメなんだけど、今回こうやってみんなとバスケットをして、チームとして最後まであきらめない姿勢、チームとしての日本らしさが出せたのは良かったし、その一員としてプレーできたことは本当に幸せでした。この経験を無駄にせず、次に繋げていこうと思っています。

──スウェーデン戦はシュートを打たずアシストもなくターンオーバーが4つ。出場時間も9分と伸びませんでした。

1戦目は考えすぎてしまったのが一番。トムがチャンスをくれたにもかかわらずああいう結果しか出せなかったのは、トライアウトの身としたら即刻カットだと思います。でも、それでも使い続けてもらったおかげで2戦目、3戦目と本来の自分のバスケットが少しは出せたと思います。気持ちはもちろん入っていたんですけど、考えすぎもあって空回りしました。

──今回は大﨑佑圭選手が復帰しました。長く一緒にプレーしてきた馴染みの選手とまたプレーする気持ちは?

身体の強さや体力、スピードは落ちている部分もあったと思うんですけど、メイ(大﨑のコートネーム)らしい部分はたくさんありました。これから体力やスピードはついてくると思います。体型も変わっていないし、出産した後によくここまで戻せたと思います。

一緒にプレーすると懐かしい感覚もありましたが、私と大﨑はトライアウトの身なので、その緊張感や危機感を2人とも持っているから新鮮な気持ちでバスケができています。一緒に出て自分のパスからシュートを決めた時は滅茶苦茶うれしかったです。簡単に戻れる場所じゃないし、「一回辞めた人間がどうして戻って来るんだ」という意見ももちろんある中で、こうして2人が結果的に残って試合に出たのは、すごく自信になりました。私たちはそういった意見をはね返すパフォーマンスをこれからもやっていかないといけないので、懐かしいだけじゃなく新たな挑戦という感覚はありました。

吉田亜沙美

「現状をしっかり受け止めてステップアップを」

──現役復帰を決めて、JX-ENEOSでも日本代表でも試合を重ねて、そろそろ自信は取り戻せたのでは?

そもそも自信が100%あったら、1戦目の結果にはならないですね。そこはまだ自分自身に自信がなくて、100%信じることができないからああなってしまう。もっともっと練習して努力して、それが自信に繋がるようにこれからやっていくつもりです。そこの改善策は自分では明確に見えているので心配はしていないけど、上手く行かなかったことで「もっともっと」という気持ちが今まで以上に芽生えたので、そこは個人として良い経験になったと思います。

──大会中にホーバスヘッドコーチから「オフェンスの町田、ディフェンスの吉田」という言葉がありました。吉田選手としては「オフェンスもできるぞ」と、少なからずカチンと来る言葉だったということはありませんか?

いや、それはないです(笑)。自分もディフェンスを主としたプレースタイルでずっとやってきていたので、それが認められたのはすごくうれしいです。

──いよいよオリンピックが近づいてきました。そこに向けて調子を上げて行くために、無心で今まで通りの努力を続けていくか、何か特別なアプローチをするか、残りわずかな時間の使い方をどう考えていますか?

いつも通りのことをやっていては試合に出る機会が減っていくと思っています。今回の大会で自分のダメだった部分を受け止めて、向き合って、今まで以上に練習して努力してやっていかないと、試合に出られない。その前にメンバーにも選ばれないかもしれないと思っています。今回の結果をすべて受け止めて、自分の実力の現状をしっかり受け止めて、これからまたステップアップしていきたいです。