「僕らは挑戦者としてやっていきたい」

6月16日、都内にてB1、B2の全36クラブのトップを集めた『決起会』が行われた。この席で大河正明チェアマンが語った内容が、Bリーグの現在地、そして目指すべき理想について丁寧に説明したものだったので、ここで改めて紹介したい。

Bリーグが発足する前の状況がどうだったのか、という前置きから「日本バスケットボール協会のガバナンス確立・強化の必要性」、「日本代表強化の施策が十分に実現できていない」、「2つのリーグの併存状態を10年間解消できていない」と、かつてFIBAから制裁を受けた理由を挙げ、大河チェアマンは36クラブのトップに向けて語り始めた。「新しいリーグを作ったこと、そしてそのことに皆さんがいままでのリーグを退会して新しく入ってきたということ。それをいつまでも忘れないで、僕らは挑戦者としてやっていきたい」

ここからが元銀行マンで、Jリーグではクラブライセンス制度の導入で各クラブの財政健全化を実現した大河チェアマンらしい説明となった。「バスケ競技者数はサッカーの60%、事業規模はサッカーの10%」という数字を提示して、「これはチャンスがあるということ」とチェアマンは言う。

「野球の市場規模は1600億円、サッカーが1000億円、バスケットが100億です。野球は12球団で1600億、1球団あたりで言うと130億から140億円で、抱えている選手が70人。つまりプロ選手1人が2億円ぐらいの稼ぎを出している。サッカーは30人ちょっとの人数で、J1が30億円強の規模ですから、選手1人が1億円を稼ぎ出している。一方でバスケで1人あたりが稼ぎ出す収入は2000万から3000万円です。これが選手の年俸格差になる。12人でできるスポーツが野球やサッカーを目指すには、1部のクラブの企業収入が15億円くらい、それぐらいを考えなければいけない」

これから始まるBリーグが置かれた現状と目指すべき位置を定義すると、チェアマンはプランの説明に入った。「短期的には1億円プレーヤーの創出、そしてバスケット市場250億円、競技者人口75万人。これを目指しながら中長期計画をしっかりと作り、遂行していきたい」

成功のカギはチケット収入だ、と大河チェアマンは言う。「いかに多くのお客様に来てもらうか、いかに単価の高いチケットを売れるか、というプロスポーツの団体になれるか。ここが勝負だと思ってます」。チェアマンが続ける。「NBAやその下のデベロップメントリーグでは、チケット収入がだいたいスポンサー収入の倍あります。日本はJリーグでもそうですが、チケット収入が実はスポンサー収入の半分しかない逆の関係になっている。ここをいかに上げていくか」

「僕らの調べによると、バスケットの観戦意向者が全国に700万人いると言われています。この700万人のうち競技経験者が260万人。こういったところをターゲットに、入場者数を増やしていきたい」

垣根を越えて、未来へ向かって戦っていきましょう

大河チェアマンの話は『Bリーグの目指すべき姿』にも及んだ。「昭和の『巨人・大鵬・卵焼き』の、地上波でプロ野球を見ていた時代から、平成に入ってJリーグができ、地域密着、スポーツは『根性』から『楽しい』という時代になりました。そして第三世代である我々は、スポーツを通じて社会的な帰属、絆といったものを追求していきたい。『スポーツで社会を変える』という課題に挑戦していきたいと思っています」

「まずは日本のバスケットボールの水準向上を目指します。そして、バスケットの団体という以前にスポーツとしての団体ですから、地域に根ざしたスポーツクラブができて豊かなスポーツ文化の振興発展、これを考えている。さらには公益社団法人、公益法人として社会的な課題、ソーシャルイシューへの積極的な取り組みを行っていきたい」

大河チェアマンが最後に語ったのは『夢』だ。「何と言っても世界に通用する選手やチームの輩出。世界基準で言えばベスト8、ベスト4以上を目指せるようなチーム、そしてその中で活躍できる選手。NBAで何人の選手が活躍できるか、こんなことも将来チャレンジしていかなければいけませんし、エンタテイメント性の追求、単に試合を見に来てもらうだけじゃなく勝っても負けても楽しかったと言えるエンタテイメント性の豊かな試合を、観客の皆さんにお見せしなきゃいけない」

36チームのトップを前に、大河チェアマンは熱弁を振るう。「そのために最も重要だと思っているのが夢のアリーナです。5000人という規模にこだわった、場合によってこれからは1万人という規模にこだわりたい。大きなアリーナにたくさんの人が来てもらうことがやはりそのスポーツの発展のすべてかもしれません。体育館ではなくて見る人に優しいこうした夢のアリーナ。一歩ずつ各地域で話が出てきています。全力でBリーグとしても一緒に支えていきたいと思います。行政の皆さんともタイアップしていきたいと思います。是非、夢のアリーナを実現していきましょう!」

『バリュー』(組織が共有する価値観)として打ち出したのは、『BREAK THE BORDER』というスローガンだ。大河チェアマンは言う。「垣根を越えて、未来へ向かって戦っていきましょう。挑戦していきましょう。日本バスケットボールあらゆるボーダーをブレイクしていきたいと考えています」

「皆さん一人ひとりが同じ思いを持ってバスケットを盛んにする、スポーツを盛んにする、そして挑戦できるそんな世の中に僕はしたいと思います。是非、皆さん一致団結してやっていきましょう」

全国から36クラブのトップが集まる貴重な機会。各クラブの交流も進められた。