文・写真=鈴木栄一

台風で1日空く変則日程で「立て直すことができた」

10月29日、琉球ゴールデンキングスがホームで千葉ジェッツと対戦。ともに相手のディフェンスを攻略できずロースコアの展開が続く中、オーバータイムにもつれこんだ激戦を琉球が68-60で制した。

本来は28日に開催される予定だったが、台風の影響で1日順延される変則日程となったこの一戦。「この1日空いたのが良くて、それぞれ考えたり、いろんな人と話したりする中で気持ちを立て直すことができました。戦術的なところよりもそこが良かった」と佐々宜央ヘッドコーチが振り返った琉球は、61-72で敗れた27日には失敗した試合の入りに成功すると第1クォーターを18-15で終え、前半を34-33で折り返す。

第3クォーターには千葉をわずか5失点に抑えることで、リードを7点に広げた琉球だが、第4クォーターに入ると千葉が反撃。第3クォーターまで無得点だった富樫勇樹がこのクォーターで9得点とさすがのプレーを見せると、計6本のオフェンスリバウンドなど粘り強い攻撃で追い上げ、残り2分14秒に追いつく。だが、ここから互いに決め手を欠き、試合はオーバータイムに突入する。

オーバータイムに入ると琉球は、本日18得点を挙げた岸本隆一、ハッサン・マーティンによる連続6得点で主導権をつかむ。そして、最後まで激しいプレッシャーをかけるディフェンスをやり通したことで千葉を振り切った。

「誰も気持ちも切らさずにプレーできた」

佐々ヘッドコーチは、「45分間、ディフェンスをやり続けたこと。もちろんこれから味付けはしていきますが、ベースはこれになります」と守備の勝利であることを強調。また、強い気持ちを保つことができたのも大きかったと言う。「一昨日に最大19点差から2点差まで追い上げたことで良いゲームをしたと勘違いしないように、40分間戦わないと勝てないと言いました。今日は40分間、そして最後に追い上げられて延長の5分間、ファンの方々の声援が本当に後押しとなりましたし、ベンチを含めてチームとして戦えました」

「こういうふうに戦い続けていけるチームにしたい。まだ、点数が入る入らないではなく、見ている方に『なんか元気ないな』と思われることのないチームにしていきたい。今日は追い上げられた時、誰も気持ちも切らさずにプレーできたことが勝ちにつながりました」

また、琉球の勝利に大きく貢献したのが田代直希だ。開幕戦の13分出場を最後にこの試合の前まで10分以上のプレータイムはなく、前の試合でも約4分の出場に終わっていた田代だが、この試合では特にディフェンスにおける奮闘が光り、シーズンベストとなる約28分の出場だった。

「田代は最初、アーリーカップなどでは先発として使っていましたが、そこから迷いが出て気持ちも乗れない時期がありました。しかし、ここ2週間くらい調子を上げてきており、僕としたらいつでも出せる状況だったので迷わずに起用しました。そして、しっかり期待に応えてくれました。今日、田代は3番に加え4番も両方やっていて、そこは非常に難しいです。その中で対応してくれたことには感謝しています」

田代直希のハードワークが勝利を呼び込む

田代は「得点でチーム引っ張ることはまだできないので、ディフェンス、リバウンドで泥臭くハードワークすることを心がけてプレーしたのが結果につながったのかと思います」とコメント。今シーズン初となる長時間のプレーには「うれしかったですし、ちょっとびっくりしていました。すぐ交代だと思っていたので、『こんなに出るの?』とも思いましたが、やってやろうとプレーしました」と振り返る。

また、「前の試合、相手のアキ・チェンバース選手がリバウンドなどハードワークなどで、すごくプレーをつないでいたのを見て、自分もこういう選手になれたらいいなと思いました」と語った田代だが、この日の彼がチェンバースと同様の泥臭いハードワークでチームに大きく貢献していたのは間違いない。

リーグ有数のディフェンス力を誇る千葉との我慢比べを制したことについて佐々ヘッドコーチは、最後に「今日の試合がたまたまでないことを、これから見せられたら面白いと思います」と述べた。まだまだ、ムラっ気のある面は否めない琉球だが、エースである古川孝敏も復帰間近の中、リーグ上位と渡り合えるポテンシャルは十二分に持っていることを示せた試合となった。