ジョナサン・アイザック

高さとパワーではなく鋭い動きで勝負する守備の要

ルカ・ドンチッチやトレイ・ヤングといった若手が得点やアシストランキングの上位に出てきたNBAにおいて、ブロックランキングにも新顔のジョナサン・アイザックが加わってきました。マジックの勝率は5割に満たないものの、リーグで3番目に失点が少なく、ディフェンス主体の戦い方の中で高い貢献度を発揮しています。

豊作と呼ばれる2017年ドラフトで1巡目6位指名を受けたアイザックは、ルーキーシーズンからディフェンスの役割を中心に任せられた珍しい存在です。上位指名選手は将来のエースとして期待されるのが普通ですが、フィールドゴールアテンプトはチーム5番目と、3年目を迎えた今もオフェンスでの役割は限定的なもので、平均12.3点を奪ってはいるものの速攻で2.4点、セカンドチャンスで2.1点とチームオフェンスの中ではない得点が多くを占めています。

スモールフォワードとしては身長が高く、また手の長さも持ち合わせていることから、身体能力の高さを生かした豪快なドライブダンクなどを期待したくなりますが、その時点はジャンプシュート中心に構築されており、「将来のエース候補として伸び伸びとプレーさせる」方針ではなく、「今できることを堅実に実行する」といったプレーに限定されています。

その一方でディフェンス面での存在感は抜群で、ヤニス・アンテトクンポやパスカル・シアカムといった相手エースを止める役割を任される『エースキラー』として、リーグ最高クラスのディフェンス力を見せつけています。これも少し珍しい部分で、通常ブロックの多い選手はリムプロテクターとしてインサイドで待ち構えることが多いのですが、アイザックはあくまでもエースキラーとして自分のマークマンを止めることが最優先事項となっており、1on1でのブロックの多さが際立っています。

ディフェンダーとしては細身のアイザックは深く腰を落としてパワーで押し負けないような体勢で構えることが多く、その体勢から全力で飛び上がるのは難しいためブロックショットには適していません。また細かい動きへの反応はできても3歩目、4歩目が遅れがちです。

アイザックのディフェンスは「先を読む」よりも相手をしっかりと見据えて反応する形が多く、ほとんど予備動作なくブロックに跳んでいます。そのジャンプは全力で跳んだ時ほどの高さは出ないため、豪快に叩き落すようなブロックではなく、反応の良さと手の長さを生かした「シュートモーションの途中でボールに触る」ような形となります。またドライブで抜かれても後ろから追いかけてボールに触るブロックも得意としており、かなり異質な形でブロック数を稼いでいます。

ヘルプディフェンダーとしても細身の分、スピードを生かしてゴール下に追いつき、全力ジャンプでの豪快さも持ち合わせていますが、それ以上に守備範囲の広さが際立っており、3ポイントシュートまで追いかけてのブロックも得意としています。マジックにはニコラ・ブセビッチとアーロン・ゴードンがいるため、必ずしもアイザックがゴール下を塞ぐ必要がなく、思い切ったヘルプに行けることもプラスに働いています。

守備範囲の広さと手の長さはスティールでも発揮され、届かないと思われるところからでも手が伸びてくるため、直接マークされていなくてもアイザックの近くをドライブするのはリスクを伴います。

センターであっても3ポイントシュートを打つのが普通の時代となり、ゴール下に待ち構えるリムプロテクターを外すオフェンス戦術が発達してきました。そんな中でアイザックは「ゴール下で待ち構えなくても脅威となる」新しいタイプのショットブロッカーです。オフェンスの中心ではないため注目度は低いものの、3年目にしてリーグ最高クラスのディフェンダーへと成長し、面白い存在になってきました。