代表強化をマネジメントする技術委員会トップ、東野智弥に聞く(前編)「日常を変えて、少しずつ強くなっていくしかない」

2017/10/31
日本代表
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文=鈴木健一郎 写真=FIBA.com

昨年6月、日本バスケットボール協会(JBA)が新たに設けた技術委員会のトップに就いた東野智弥。そこから日本代表は急ピッチでの改革が進められている。

就任から約1年半、この間に男子日本代表ではOQT(昨年7月のリオオリンピック世界最終予選)があり、ヘッドコーチ交代があり、毎月の強化合宿を繰り返して、選手の入れ替えを行いつつ様々な大会を戦ってきた。それと並行してBリーグが始まり、代表チームを取り巻く環境は大きく変わりつつある。今回は東野委員長に、男子日本代表について強化の方針と現状の手応え、この先の展望について話を聞いた。

「今のままでいいのかと常に考えています」

──まずは技術委員会の委員長に就任した時点での男子日本代表チームの『現在地』をどう見ていたのかを教えてください。

まず現実として、日本代表は1976年のモントリオール大会以来、40年間オリンピックに出場していないチームだということです。その延長線上で2020年の東京オリンピックに出場できるのか、という判断が必要でした。40年間出ていない、FIBAランクは50位。まずは現実を直視しなければいけない。代表にかかわる人たちはみんな一生懸命頑張っています。でも、これからも今のままでいいのかと常に考えています。

──東野さんの見る『現実』はどれぐらいシビアなものでしたか?

よほど劇的な変化がないと2020年の東京オリンピックに出場できない。まずはここからですね。昨年のOQTではラトビアに40点差(48-88)で負けて、チェコにも大差(71-87)で負けました。OQTにはあの時点で最強と思われたチームで挑みましたが、結果としては大敗でした。世界どころか「このままではアジアのトップさえ取れない」と再確認したところからスタートしました。

──最初の具体的な動きはヘッドコーチの交代でした。長谷川健志ヘッドコーチが退任して、ルカ・パヴィチェヴィッチ氏をアドバイザリーコーチ(ヘッドコーチ代行)に迎え、この夏からフリオ・ラマス氏が指揮を執っています。

今の日本に、オリンピックでの戦いを知る者はいないと言っても過言ではありません。実際にはモントリオール五輪などを経験した方がいらっしゃいますが、バルセロナ五輪のあった1992年を機にバスケット自体が劇的に変わっているわけですから、これから再び世界を目指すという点においては難しい面があるでしょう。そうなると海外から学ぶしかありません。

リオ五輪が終わってBリーグが開幕し、いつもだったらリーグ期間中は代表活動は何もないんです。ですが、この時間がもったいなかった。継続的な強化が必要なのは明らかでした。それで70名の重点強化選手を選び、毎月のように練習をする中で、世界のコーチの目から「どのような選手が次のステップに進むべきか」、「今何が必要なのか」を見てもらいました。

「選手に求めるのは『日常を世界基準にすること』」

──それがリーグ期間中でも毎月行なった代表強化合宿ですね。

まず私が選手に求めたのは『日常を世界基準にすること』です。欠けていたのは3つ。世界レベルでのメンタルとフィジカルとスキルです。これをそれぞれサポート部隊を作って支えることにしました。フィジカルの部分は特に話題になりますが、NBAで活躍していた佐藤晃一パフォーマンスコーチを連れてきました。そしてテクニカルハウスを作り、映像分析の担当を5人に増やしました。スキルコーチもメンタルコーチも連れてきて、選手をサポートする。世界を目指すべく『世界基準』への追求が始まったことを強調したかったのです。

もし一気に変わることができるのであれば、この40年間のどこかでできていたはずです。でも、40年間それは起きなかった。だから魔法なんてないんです。一つの試合でマジックが起きてチームが勝つことはあるかもしれません。でも、日本代表が一気に強くなることはない。日常を変えて、少しずつ強くなっていくしかないんです。

──そういう強化の仕組みを整えて1年近くやってきて、手応えはいかがですか。

みんな代表に来れば、「何か自分のためになる良いものがある」と思えるような環境を作り出そうとやってきました。一つ誤算だったのは、シーズン中に良い準備ができて、いざ夏の大会が始まるというところで、フリオ・ラマスの来日が遅れたことです。アルゼンチンリーグのプレーオフのルールが急遽変わり、当初の予定より2週間遅れてしまった。これは様々な面で影響がありました。

「今までの固定概念を打ち崩していかなきゃいけない」

──東アジア選手権では3位、アジアカップではベスト8進出を逃し、結果としては失敗と言わざるを得ません。ここで得られた課題と収穫はどんな部分でしたか?

「簡単にやられているところ」というのは減っています。選手の意識、インテンシティのレベルは高くなったと思います。我々が重視している『ジャパンプライド』、日本代表への思いは、東京オリンピックがあることも含めて選手の意識に見えるようになってきました。

課題はやはりミスですね。勝負どころでつまらないミスが出てしまったこと。これは『日常を世界基準に』で言うなら、Bリーグのゲームでやっているミスと同等のことなのか、それともそれ以上のディフェンスのプレッシャーによって起こったことなのか、それ以外のシチュエーションで起こったのかを問わなければいけない。それでもかつ出てしまうミスなのかを問いながらレベルアップをせねばなりません。普段やっているBリーグからつまらないミスをしない、そういうレベルに入らないといけません。

メンタル的にも今までの固定概念を打ち崩していかなきゃいけない。日本人だからできる、農耕民族ならではの継続できる特性を生かして積み上げていく。リーグでの戦いの中から、その作業を各クラブと協働しながら選手ともども変化、成長をしていきたい。その努力をコーディネートしていきたいと考えています。

代表強化をマネジメントする技術委員会トップ、東野智弥に聞く(後編)
「東京五輪をジャンプ台に日本のバスケが飛躍する」