文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一、Getty Images、FIBA.com

昨年6月、日本バスケットボール協会(JBA)が新たに設けた技術委員会のトップに就いた東野智弥。そこから日本代表は急ピッチでの改革が進められている。

就任から約1年半、この間に男子日本代表ではOQT(昨年7月のリオオリンピック世界最終予選)があり、ヘッドコーチ交代があり、毎月の強化合宿を繰り返して、選手の入れ替えを行いつつ様々な大会を戦ってきた。それと並行してBリーグが始まり、代表チームを取り巻く環境は大きく変わりつつある。今回は東野委員長に、男子日本代表について強化の方針と現状の手応え、この先の展望について話を聞いた。

代表強化をマネジメントする技術委員会トップ、東野智弥に聞く(後編)
「東京五輪をジャンプ台に日本のバスケが飛躍する」

「オリンピックの母国開催を利用して世界の強豪を招く」

──チームの強化には様々なアプローチがあると思いますが、その中で「ここにはこだわりたい」という部分はどこですか?

強豪国とのテストマッチをたくさんやって、実戦経験を積むことです。1980年代には当時の様々なトップチームが日本と対戦していました。今はどうかと言うと、強豪を呼んでも来るのはBチームです。そこはラマスヘッドコーチにもこだわりがあります。「世界のトップとやらなきゃいけない」と常々言っています。

その一つがアジアカップ前に日本に招いたウルグアイ代表です。オリンピックの母国開催をうまく利用して世界トップ10に入るチームを招きたい。そこで世界との差、厳しさを肌で感じ、日々のチャレンジに落とし込んで確認しつつ、アジアでも勝っていくんです。

強豪国との対戦を組むことについては、ラマスも動いてくれています。11月と2月の1次予選のタイミングで強化試合を組むのは現実的には難しい。それでも、6月に1次予選最後の2試合があった後の7月から9月には時間があるので、海外にどんどん出て行って強豪チームと試合をしたいです。当然、Bリーグの選手には休む時間も必要ですが、その期間も有効に使いたいので、そこで若手中心のB代表を組むことも考えています。世界の強豪国を相手にする場合は大敗するかもしれませんが、そこからどんなリアクションを起こせるかが大事です。

「渡邊選手も八村選手も日本代表でやっていく力がある」

──渡邊雄太選手、八村塁選手といったアメリカの大学でプレーする若い選手についてはどう考えていますか?

渡邊選手はもちろん、八村選手も日本代表でやっていく力があると見ていて、注目していますし、コンタクトも取っています。帰化選手も含め、彼らを日本代表チームとどう融合させていくか。そこは一つのポイントになります。ただ、一つ注意したいのは、彼らを必要以上にチヤホヤしないこと。現状でも楽しな選手たちであることは間違いないけれど、それに満足せずにまだまだ伸びてもらいたいですから。

──ただ、それはワールドカップ1次予選には間に合わない話ですよね。大学のリーグ戦とスケジュールが重なります。

サッカーのようにインターナショナル・マッチ・デーという設定のないバスケットボール界ではワールドカップ予選に出るのは難しいですが、1%か2%の可能性はあると思っていて、私はあきらめずに交渉するつもりです。1次予選は難しいかもしれないけど、ここで交渉しておくことで2次予選には呼べるかもしれない。私は昔から『クラッシャー』と呼ばれていましたが、そのニックネームのとおり、当たって砕けろの精神でいきます。

「2020年には世間をあっと驚かせたい」

──最後に、東野委員長の今後のビジョンを聞かせてください。

今、渡邉選手と八村選手の名前が出ましたが、彼らに続いて世界にチャレンジする若い選手が、今後どんどん出てこなければなりません。だからこそ、できることは何でもやりたい。できることがあったら教えてもらいたいです。

残念ながら1992年のバルセロナ五輪以降、どこを見てもオリンピックをきっかけにして飛躍的にチームが強くなったという国はありません。日本はそれにチャレンジしようとしています。自国開催のオリンピックをジャンプ台にして日本のバスケットが飛躍する。そのためにも東京五輪で結果が求められるのはもちろんで、2020年には良い意味で世間をあっと驚かせたいです。「どう見たって無理でしょ」と言う人もいるでしょう。今の日本の状況を見れば当然ですよね。

でも、リオ五輪でも活躍した女子もあって、今度は3×3もオリンピックの種目に入りました。メダルを取れるチャンスが4つあるんですよ。私はこれからも夢を語りながら挑戦し続けたいと思っています。チェンジにチャレンジです!