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失意のトーマスを救ったのは2人の息子の言葉

セルティックスからキャバリアーズへのトレードが決まったアイザイア・トーマスが、『The Players' Tribune』で自ら現在の心情を綴った手紙を公開した。

トーマスは、妻との結婚1周年を記念する旅行から地元シアトルに戻った日に、セルティックスの球団社長ダニー・エインジからトレードを告げられた。電話口でカイリー・アービングと交換でキャブズにトレードされたことを聞いた瞬間、しばらく誰とも話す気分になれなかったと振り返っている。NBAのビジネスとは理解していても、自分が2年半すべてを尽くしてきた球団に放出されて傷つかない選手などいない。だがトーマスは、自分よりも大事な2人の息子の言葉に救われた。

「トレードを伝えて長男が最初に言ったのは、『レブロン・ジェームズ』という単語だった。つまり、東カンファレンスのベストチームで、世界最高の選手と一緒に優勝を目指すということ。そして次男からは『悲しい』と言われた。これも言い換えれば、自分がボストンを恋しがるかどうか、ということ。僕は、セルティックでいられなくことが寂しい」

「あの日はボストンの皆が僕に寄り添ってくれていた」

トーマスは2017年のプレーオフ開幕前日に最愛の妹を交通事故で亡くす辛い体験をした。ブルズとの初戦を迎えるにあたり、会場中がトーマスの心痛を察し、自分のことのように悲しんでくれる姿を目にして、「自分は一人ではないことに気がついた」と綴っている。

「今夜はコートが自分のシールドになってくれると思った。忘れるためにコートが必要と思った。でも、コートに立った時の気持ちは、今も表現できない。ファンの皆の声援は今も耳に残っている。ファンの皆が作ってくれた手書きの『THIS IS FOR CHYNA. WE <3 ISAIAH』というボードは未だに目に焼き付いている。それから会場の皆がチャイナのために黙祷してくれた。その瞬間、シールドとしてのコートは自分に必要ないと分かった。何かを遮断する必要も、悲しんでいないフリをする必要もないことに気づいた。僕は一人でいる必要なんてないと気付いた。会場の皆が僕のそばにいてくれた。あの日はボストンの皆が僕に寄り添ってくれていたと思う」

トーマスは、トレードについてもさることながら、自身が置かれた立場と、昨夏ケビン・デュラントが置かれた立場を比べ、ファンやメディアに対しても思うところを綴っている。

「去年、KD(デュラント)がフリーエージェントになった時のことを考えていた。どうしてみんなは、彼が自分の未来にとってベストと思う判断を下しただけなのに、厳しい意見を浴びせることができたのだろうか。このリーグで選手に与えられたフリーエージェントの権利を行使しただけなのに、どうすれば彼を悪者扱いできたのだろうか。今回のトレードで周りが得られるものもあると思う。僕がどういう形でトレードされたのかを考えてもらいたい。すべてを尽くした球団から、事前に何も伝えられずトレードされたんだ。今回の件を通して、周りも考え方をあらためるべきだと思う」

トーマスは続ける。「次に誰かがフリーエージェントの権利を得て移籍する時、もしその選手を批判する記事を書く場合や、彼を批判するTweetを投稿する場合、内容をよく考えるべきだ」

「負けるためにクリーブランドに来たわけではない」

トーマスは、レブロン・ジェームズのチームメートとして迎える2017-18シーズンについて「今シーズンはキャブズファンにとって素晴らしいシーズンになる。僕も興奮しているよ」と綴った。

「確かに複雑な心境ではある。ボストン時代、キャブズを超えて東を制することが目標だった。ボストンの目標は今も変わらない。でも今は、僕がボストンを止める立場にいる。もしプレーオフでセルティックスと対戦することになったら……なんと言えばいいのか、上手く説明できない。でもきっと、最終的には『勝つ』という気持ちになると思う。それはとても悲しいことなんだ。本当に辛い。でも、僕は負けるためにクリーブランドに来たわけではないから」

入団会見でもあらためてセルティックスでのキャリアを振り返るのだろうが、ひとまずトーマスは気落ちに区切りをつけた。次にメディアの前に姿を見せる時は、完全にキャブズの一員として4シーズン連続NBAファイナル進出、レブロンとの優勝を目標に切り替えているはずだ。

今回の手紙で語られた内容を見れば、トーマスがどれだけボストンを愛していたかが分かる。まだ気持ちの整理がつかないセルティックスファンも少なくないだろうが、トーマスは前を向き始めた。今シーズン、TDガーデンでの試合は来年1月と2月にそれぞれ行なわれる。それまでにトーマスが股関節のケガから復帰できているかは分からないが、きっとボストンのファンは、元エースを温かく歓迎し、試合中はライバルチームの選手として認識するだろう。トーマスが言うように、もしキャブズとセルティックスがプレーオフで対戦する時には、お互いに遠慮はなくなる。

2年半もの間チームのために尽くした選手と、その姿を見て、支えてきたファンの間にはリスペクトが生まれる。しかし、トーマスが敵地でのセルティックス戦で激しくプレーし、活躍することこそ最高の恩返し、そしてプロスポーツのあるべき姿と言えるのではないだろうか。

そして昨日、トーマスはキャバリアーズの入団会見に出席。3番を付けることが発表された。