文=丸山素行 取材=小永吉陽子 写真=FIBA.com

「日本の代表なので」の精神で死闘を演出

U-19ワールドカップ、日本代表は目標であったベスト8を惜しくも逃したものの、順位決定戦でアジアのライバル韓国、ホスト国のエジプトを撃破し、世界10位という結果に。1967年の世界選手権での11位を上回り、FIBAの国際大会での最高順位を更新する快挙を成し遂げた。

9位をかけて戦ったプエルトリコとの一戦は、八村塁と並んでエースとしてチームを牽引してきた西田優大が欠場。キャプテンの三上侑希はその対策をこう説明する。「西田がいなくなった分みんなにボールが分散するので、自分たちがシュート打つのもそうですし、うまくボールをシェアしてなるべく塁に預けて、塁が得点しやすい環境を作るように心がけました」

結果、八村は今大会で最多得点となる27得点を記録。また三上も3本の3ポイントシュートを沈め、相手に的を絞らせなかった。

西田不在を感じさせないパフォーマンスを見せた日本だが、残り16秒に逆転を許し、1点差で敗れることに。三上は「日本らしく速い展開で、今日は難しいシュートも決めていました。それでも勝てる試合を落としたというのは悔しかったです」と振り返る。

日本は積極的なダブルチームで高さの不利を運動量でカバーしてきた。タイムシェアをしているとはいえ、その疲労度合いは他チームのそれとは異なる。さらにこのワールドカップは9日間で7試合を戦うという過密日程。さらに日本は、前日の夜にエジプトと延長まで戦っての昼の試合で、コンディションの不利は否めなかった。

三上も「身体的にも精神的にもキツかったです」と打ち明ける。それでも「日本の代表なので、そう思ったら頑張らなきゃいけないと高校生の時から思っていたことなので。全部出し切った大会となったので良かったです」と清々しい表情を浮かべた。

「離れるのが寂しいくらい良いチームでした」

三上と八村は明成高校時代のチームメート。ワールドカップ直前に合流した八村にとって、三上の存在は大きかったはず。だが「最初はみんな塁にビビってましたけど、意外とすぐ仲良くなって、僕がいなくてもみんな普通に接してました」と単身渡米した八村にとって、コミュニケーションの問題は特別なかったようだ。

そして、ゴンザガ大の一員としてNCAAトーナメント出場を果たし、一回りも二回りも成長した盟友が代表に加わったことは「プラスなことばかりで、マイナスな部分は一個もなかった」と断言した。

「最初にスペインとの接戦を落とし、そこで悔しい思いをしたことで良いチームになりました。特にディフェンスが引き締まって、カナダ戦以外は失点を抑えられた。オフェンスは西田と塁に頼っていた部分も最初はありましたが、終盤は全員でできたんじゃないかと思います」と三上は大会を総括する。

安定したディフェンスは指揮官のトーステン・ロイブルも太鼓判を押し、日替わりでヒーローが出現するなどチームの総合力は大会を戦う中で増していった。

今大会はカナダの優勝で幕を閉じ、チームは解散となった。長期間苦楽をともにし、大会を通じて成長した仲間との別れに、三上は感慨深げな表情を見せた。「1年半、家族みたいな感じで一緒にできて、離れるのが寂しいくらい良いチームでした。塁もマーフィー(榎本新作)もキャラが良いし、みんなそれぞれ良い個性があって。10位という結果になって良かったです」

世界10位と日本最高位を更新したU-19男子日本代表。「離れるのが寂しい」とこぼした三上だが、再会はそう遠くないかもしれない。より上のカテゴリーでの再会という未来に思いを馳せながら、それぞれの選手が今大会の経験を糧にさらなる成長を遂げることに期待したい。