浮き沈みを乗り越え2年連続のCS出場
「今シーズンの目標は、優勝です!」
群馬クレインサンダーズのキャプテン辻直人は、9月21日に行われたプレシーズンゲーム終了後、コート上でファンに向けて高らかに宣言した。
群馬はレギュラーシーズンを42勝18敗で終え東地区3位、ワイルドカード1位(チャンピオンシップ進出順位5位)でチャンピオンシップ進出を決めた。しかし、その道のりは決して順風満帆ではなかった。
開幕から10試合で5勝5敗。接戦を落とす試合も多く、なかなかリズムに乗り切れない序盤戦となった。11月に入りコー・フリッピンとヨハネス・ティーマンの離脱に見舞われながらも、最初の中断期間までの8試合に全勝し、一気に巻き返した。
連勝中の11月5日のアルティーリ千葉戦で辻は、Bリーグ史上初となる個人通算1500本の3ポイントシュート成功を達成した。オフのケガで調整が遅れていたが「身体が動くようになってきましたし、トレーニングの成果が出てきてシュートも調子が良い。楽しくやらせてもらっています」と手応えを口にしていた。
しかし、12月の中断明けにエースのトレイ・ジョーンズが離脱。そこから2月の中断期間までの21試合は12勝9敗と足踏みが続いた。ケガ人が多い中で善戦したとも言えるが、中断直前の長崎ヴェルカ戦で連敗を喫し、チャンピオンシップ圏外へ転落した。チームとしてフラストレーションが貯まる期間だったが、辻は3月のリーグ再開を見据え前を向いていた。「ここまでの結果には満足していません。課題は明確になってきていますし、ロスターが揃った上でそれを克服できれば、もう一度チャンスは回ってくると思います」
そして、ジョーンズが復帰。再開初戦の京都ハンナリーズ戦こそ黒星を喫したものの、その後は破竹の13連勝を達成する。4月11日の川崎ブレイブサンダース戦に勝利し、シーズンで初めて地区2位に浮上。最終的に千葉ジェッツと勝率で並び、直接対決の結果により目標としていたホーム開催権は得られなかったが、昨シーズンを上回る勝率で2年連続のチャンピオンシップ出場を決めた。
「この60試合は山あり谷ありでしたが、いろいろな経験値は高まりました。自分たちを信じてやれれば、チャンピオンシップで結果はついてくるはずです」と辻は力強く語る。

「シーズン終盤は、CSの強度を意識して戦ってきた」
チャンピオンシップクォーターファイナルで群馬が対戦するのは千葉J。今シーズンの対戦成績は群馬の2敗と分が悪い。ただし、シーズン序盤の10月の対戦であり、後半戦に調子を上げてきた今の群馬にとっては、同じ展開にならないはずだ。辻は展望をこう語る。
「悔しい負け方をした記憶が残っています。千葉Jと最初に当たるのは巡り合わせだなと思いますし、また同じアリーナで戦うのでリベンジの舞台が整いました。シーズン終盤は、チャンピオンシップの強度を意識して戦ってきたので、良い試合ができると思います」
カイル・ミリングヘッドコーチの下、群馬はディフェンスを軸にチームを構築してきた。連動性の高いチームディフェンスはシーズンを通じて練度が増し、ディフェンシブレーティング(100ポゼッションでの平均失点)はリーグで3番目に良い数字を記録している。
「60試合培ってきたチームディフェンスは、必ず生きてきます。全員がそれを自信にして臨まないといけません。1対1の守り方にはまだ課題がありますが、チャンピオンシップでは全員が死に物狂いで守れるのではないかと。それができれば、自ずとチームディフェンスも機能すると思います」と辻はディフェンスのポイントを言及する。
さらに今シーズンは、オフェンス力もリーグ屈指となった。オフェンシブレーティング(100ポゼッションでの平均得点)はリーグトップ。ジョーンズやケリー・ブラックシアー・ジュニアといった個の力で打開できる選手に加え、チームの3ポイントシュート成功率がリーグ2位。どこからでも得点できる多彩なオフェンスを展開している。
ディフェンス同様に、オフェンスにも辻は自信をのぞかせる。「シーズンを通じてポジションレスバスケに取り組んできて、自信になってきています。得点力の高い選手が揃っていますし、チャンピオンシップは短期決戦なので、その日の調子が良い選手に合わせていくらでも組み立てていけるチームになっています」
辻個人としては、川崎ブレイブサンダースに所属していた2020-21シーズン以来、セミファイナルの舞台に立っていない。だからこそ、勝ち上がりへの思いは強い。「今シーズンは次に進める自信があります。先を戦うことを考えるとワクワクするので、勝ちたい思いは強いですね」
それは単なる願望ではなく、自身とチームの状況を冷静に捉えた上での言葉だ。「今シーズンはメンタルが全然違います」と言う通り、クォーターファイナルで敗れた昨シーズンとの違いをこう続ける。
「昨シーズンは最終節までチャンピオンシップ進出がどうなるか分からない状況で、まず出ることが目標になり、そこがピークになっていました。でも今シーズンは出るだけでなく、先を戦うメンタルを3月から作ってきました。コンディションも上がっていますし、身体の不安な箇所もないので、強い気持ちでプレーしてチームに貢献できます」
ベテランになり「優勝できるチャンスは多く残されていない」と常に語る辻。頂点までの道のりは決して平坦なものではない。それでも、苦しいシーズンを乗り越えてきたチームと辻には、揺るがない覚悟がある。歓喜の瞬間まで、あと6勝。
