アルバート・グッドウィル・スポルディング──アメリカのボールスポーツを創った男とバスケットボールの歴史

2017/06/20
NBA&海外
221

写真提供=SPALDING

野球、アメフト、バスケ、ゴルフと多くの競技の発展に貢献

1850年、イリノイ州バイロン生まれのアルバート・グッドウィル・スポルディング。この人物がアメリカのボールスポーツの発展に大きな貢献をしたことは、あまり知られていない。それでも『スポルディング』の名はスポーツファンにとってはよく知られている。特にバスケットボール好きには、NBA公式球のブランドとしてよく認知されていることだろう。

もっとも、スポルディングはバスケットボールではなく野球の選手だった。当時最強と言われたボストン・レッドストッキングス(現アトランタ・ブレーブス、1871-1875)やシカゴ・ホワイトストッキングス(現シカゴ・カブス、1875-1876)でプレーしている。

まだメジャーリーグ発足前のベースボール創成期、スポルディングは5年間で310試合に出場し、241勝もの勝ち星を挙げている。投手としての『鉄腕』ぶりもさることながら、特筆すべきは自ら開発したボールを使ってピッチングをしていたことだ。

当時の野球は、その前身であるクリケットの影響が色濃く残っており、ルールも用具もまちまち。スポルディングは選手としてプレーするだけでなく、ルールを整え、用具を開発。単なる遊びから競技へと発展させる段階で多大な貢献を果たした。例えばゴロは素手で、フライは帽子でキャッチしていた時代、彼が開発したグローブはあっという間に定着した。

1878年に彼が開発した野球のボールは、その後100年にわたりメジャーリーグの公式球として使われた。

「勇気があれば何でもできる」という哲学

スポルディングは28歳で引退すると、スポーツ用品メーカー『A.G.SPARDING & Brothers』に専念し、世界初となる野球のオフィシャルルールブックを発行した。

野球を現在の形にした、そして『野球をビジネスにした』のがスポルディングと言っても過言ではない。プロスポーツ選手という職業のない時代、彼はリーグとチームを作り、スポンサーを集めて興行を行うプロスポーツのスタイルを構築し、そこでプレーするプロスポーツ選手の先駆者にもなった。1915年にスポルディングは死去したが、その24年後に野球発展貢献者として『野球殿堂入り』を果たしている。

『Everything is possible to him who dares』~勇気があれば何でもできる~。その哲学は彼が亡くなった後もスポルディングというブランドに引き継がれた。

本革を縫製して作る野球ボールのノウハウを他競技にも展開し、1887年にはアメリカンフットボールを、1894年にはバスケットボールを、1895年にはバレーボールを開発。これらすべてが『世界初』である。

用具を作るだけでなく、競技としての形を整え、普及させる点でも大いに貢献。アメリカのボールスポーツの多くをスポルディングが創ってきた。

1930年にはゴルフボールを開発。どの競技よりも精度が問われるゴルフという競技で、中心に液体を入れた構造を採用することで、飛距離とコントロールを改善。ゴルフという競技自体の進化に貢献した。

スポルディングの作ったゴルフボールはアポロ計画にも参加。1971年、アポロ14号の船長、アラン・シェパードが月面でゴルフをするパフォーマンスを行った。「何マイルも飛んでいった!」とシェパードが叫んだシーン、そのボールはスポルディングの作ったものだった。

ルールブック『スポルディング製のボールを使用すること』

1894年、世界で最初のバスケットボールを開発したのもスポルディングだ。バスケットボールの最初のルールブックには「ボールはスポルディング製のものを使用すること」と定められている。

バスケットボールを常に進化させてきたのもスポルディングだ。野球ボールのように天然皮革の手縫いだったボールからシーム(縫い目)をなくし、チャネル(溝)で皮革をつなぐボールを1930年代に開発。1972年には世界初の合成皮革を使ったバスケットボールを作り出した。

そして1983年、スポルディングのボールがNBAの公式球に採用される。1984年からコミッショナーを務めたデイビッド・スターンと組み、NBAの規模拡大とバスケットボールの普及に、スポルディングのボールが尽力することとなった。

その結果、スポルディングのバスケットボールは世界55カ国を超えるリーグで採用されるに至った。バスケットボールの成長著しいヨーロッパでも、スペイン、ドイツ、オーストリア、リトアニアで、またユーロリーグでスポルディングが公式球として採用されている。

『伝統的かつ革新的』なスポルディングは、アメリカで一番古いスポーツブランドでありながら、新しいテクノロジーを盛んに取り入れている。2001年には空気入れを内蔵した『インフュージョン』を、2006年には空気漏れを防ぐテクノロジーを採用して空気圧が10倍長持ちする『ネバーフラット』を、また2008年には小学校低学年以下の小さな子供向けに25%軽くした『ルーキーギア』を開発。

「勇気があれば何でもできる」という創設者アルバート・グッドウィル・スポルディングの志は今も生き続け、バスケットボール界を支えている。