カニングハムを上回る『支配力』で勝利を引き寄せる

マジックはレギュラーシーズン序盤こそまずまずの戦いを見せたが、ケガ人が出たのを機にリズムを崩し、そのままフィジカルを前面に押し出したディフェンス、泥臭いリバウンドといったチームのアイデンティティを失ってしまった。プレーインを勝ち抜いたものの、東カンファレンス1位のピストンズとのシリーズに向けて、良い雰囲気ではなかった。

シーズンを通して勝負どころで活躍できないと批判されたパオロ・バンケロは、プレーイン2戦目のホーネッツ戦でようやく浮上のきっかけをつかんだ。ピストンズとの第1戦を前に「プレーオフは全く新しい戦いだから、過去に起きたことはすべて関係なくなる。気持ちを切り替えて、ただ集中して臨みたい」と語った。

こうして迎えた初戦で、マジックは最高のパフォーマンスを見せる。そのチームを力強く牽引したのはバンケロだった。リムを攻め、押し込んだかと思えばプルアップジャンパーを放ち、ダブルチームを引き付けてはパスでチャンスを演出した。ウェンデル・カーターJr.へのノールックでのアリウープパスは、敵地のアリーナをも沸かせた。

指揮官ジャマール・モズリーは「パオロは派手なプレーを好む選手ではないが、ダブルチーム、トリプルチームを引き付けて正しいプレーを選択できる。アシストが付かなくても、味方のチャンスを数多く演出してオフェンスを動かしている。パオロの積極性と存在感は、今日は特に素晴らしかった」と、そのパフォーマンスを称賛する。

東カンファレンスのベストプレーヤーはMVPの最終候補に挙がったケイド・カニングハムと見なされているが、この試合でのバンケロは良いプレーをするだけでなく、試合の流れをマジックに引き寄せる『支配力』でカニングハムを上回った。

バンケロは第1クォーターで9得点、第2クォーターで8得点と、得点のほとんどを前半に稼ぎ出した。「先手を取ることでチームを良いリズムに乗らせたかった。相手がフィジカルに来る時こそ、自分の望む形で得点することでチームに勢いを与えられる」

その貢献は、23得点9リバウンド4アシストというスタッツでは計れない。レギュラーシーズンを通じてできなかったことが、この大一番でできたのは特筆すべきことだが、バンケロ自身は「レギュラーシーズンの不振に囚われても良いことはない。10月から目指してきたことを成し遂げるチャンスが目の前にある今、全員が健康でチームとして噛み合っている。ホーネッツ戦で良い自信を得られたから、それを再現するだけだった」と語る。

ジェイレン・サッグスも縦への素早い動きで流れを作り出し、バンケロとともにチームを牽引した。彼もまたレギュラーシーズンの不振からメンタルを切り替えることに成功していた。「確かにレギュラーシーズンでは苦戦したけど、そこから学び、新しい挑戦に飛び込もうとチームで話し合った。全然難しいことじゃない。そもそもプレーオフを落ち込んで迎えるほうが難しいよ」とサッグスは言う。

エースのバンケロと古株のサッグスがチームを引っ張った一方で、ピストンズも最後まであきらめずに食らい付いた。後半はフリースローの数がマジックの5に対してピストンズは19と、ピストンズはシュートが入らなくてもリムを攻めることで粘りを見せたが、マジックは最後まで崩れなかった。

サッグスは言う。「フリースローが増えても、フィジカルな戦いでは引かなかった。ポジショニングミスなど集中を欠いてのファウルは多くなかったし、エンドワンもあまり与えなかった。ファウルトラブルにも対応できた。集中し続け、フィジカルに戦い続けていれば良い結果が出るものさ」

ファーストラウンドの初戦を敵地で勝ったチームはマジックだけ。まだ1勝ではあるが、勝ち抜けには敵地での1勝が必要な下位シードのチームにとっては大きな勝利だ。「正しい方向に最初の一歩を踏み出すことができた」とバンケロは言う。「でも、ピストンズがこれであきらめるはずはない。僕らは同じマインドセットで1試合ずつを大切に戦う。4勝するまで一つずつ積み重ねていくよ」