
「消化できないモノを今は感じています」
前回大会を4位で終えた琉球ゴールデンキングスは、東アジアスーパーリーグ(EASL)の頂点を決める『EASLファイナルズ マカオ2026』に満を持して臨んだ。しかし結果は求めているモノとは違い、シードとしてセミファイナルから参戦した宇都宮ブレックス戦で93-106の逆転負けを喫した。
チームの絶対的エースで16得点6アシストを記録した岸本隆一は、宇都宮に負けた直後に茫然自失の状態で応えた。
「正直、言葉にできない状況です。 今は悔しい、負けたなと。正直それだけです」
昨シーズンは天皇杯で優勝するも、EASLは制覇できず、Bリーグも準優勝に。今シーズンは大幅な戦力の入れ替えはせず、佐土原遼といった日本代表選手をピンポイントで補強し、3冠も狙える体制が整った。しかし、連覇を狙った天皇杯はクォーターファイナルで力尽き、レギュラーシーズンもここまでは、地区優勝争いではなく、西地区4位でワイルドカード争いを演じている。岸本にとっても、昨年の雪辱を果たし、ここまでの戦いぶりを払拭して上昇気流に乗るためにも是が非でも勝ち取りたいタイトルだったに違いない。
「消化できないモノを今は感じています。 ただ、それを抱えることは決して悪いことではないと思っているので、この気持ちにしっかり向き合いたいです。これを糧にして、明日以降のゲームに生かしていくしかないかなと思ってます」
これまでも困難に直面することは多かったが、その度に岸本は応援してくれるファンに寄り添い、ポジティブに受け入れて前を進んできていた。だからこそ、彼の今回の姿は見たことのない表情として映った。
そうして迎えたアルバルク東京戦、試合残り3分で5点を追いかけていた琉球は、岸本がボールコントロールからジャック・クーリーのインサイドプレーをアシスト、続くオフェンスでもドライブで切り裂きフリースローを獲得して1点差に追い上げ、チームに勢いをもたらす活躍を見せた。そして、劇的な逆転勝利を収め、3位で大会を終えることになったが、岸本は複雑な気持ちを抱えていた。「こんな勝ち方はないので、自分たちは本当に運が向いているなという感覚にはなりました。ただやっぱり目標はここではなく、3位になったからと言って報われたとは全然思えません。胸にしまい込んだモノがBリーグで優勝をすることができれば解消されるかと言われると、それもわからないです」

「これはこれで良いのかな」
宇都宮戦で抱えることになった『消化できないモノ』は今も残っている。だが、岸本らしく、ポジティブに変換しようと試みている。「今回は自分たちが目標として掲げていたところに届かなかった分、別に曖昧でも良いかなと思っています。だからと言って投げ出すつもりは全くなくて、その気持ちをしっかりと今後も向き合い続けていければ良いかなと。忘れるかもしれません。それはそれで悔しさ以上に自分が得るものがあったということ。ただずっとそれを秘めているのであれば、拭いきれない何かがあるということなので、そこはもっと自分の気持ちに正直になって向き合っていくだけです」
ただ、胸の内の葛藤は隠しきれない。「やっぱり『EASLを優勝するんだ』という気持ちで自分たちはここに乗り込んできたので、それがまた達成できなかったという現実がやっぱり辛いです。ですが、勝負の世界というのは、そういう世界なんだと考える側面もあります」
岸本にとって今回のファイナルズでは、乗り越えなくてはいけない大きな壁に直面し、悩み、突き進むための原動力へと昇華しなくてはいけない大会となった。揺れる心の中で、白とも黒とも決めつけず歩むことで折り合いをつけようとしている。
「結果をしっかりと受け止めて、気持ちとしてはやっぱり晴れないですが、これはこれで良いのかなと。また練習から頑張れば良いかなと思っています」
3冠を狙った今シーズンの琉球のミッションはBリーグ制覇に絞られた。岸本の葛藤は続いていくが、Bリーグの頂点に立った時、その心の中は沖縄の快晴の空のように澄み渡ることだろう。