アンソニー・エドワーズ

「パスしろ」の指示を無視、シュートを決めて罵る

現地2月26日のクリッパーズvsティンバーウルブズは、両チームとも得点が100に届かないロースコアの展開となった。華麗なシュートよりも激しい肉弾戦が繰り広げられ、クリス・フィンチは「非常にフィジカルな試合で、美しいものではなかった」と語ったが、それでも94-88で接戦を勝ちきったことに満足していた。

それでも彼に笑顔がなかったのは、アンソニー・エドワーズとの愉快ではないやり取りを蒸し返されるのが嫌だったからだろう。前半はウルブズがリードするも第3クォーターにひっくり返され、接戦となった第4クォーターの終盤、物議を醸すシーンがあった。

3点リードで迎えた第4クォーター残り1分からの攻め。ウルブズはチームオフェンスを構築できず、エドワーズは左コーナーでデリック・ジョーンズJr.とクリス・ダンのダブルチームに進路を塞がれた。パスも出せない状況で彼はシュートを選択。ジョーンズJr.の手をかすめるように放ったシュートが決まり、クリッパーズがタイムアウトを取って試合が止まると、エドワーズは目の前にいたフィンチを罵った。

その2つ前のオフェンスで、エドワーズが強引なレイアップを試みて失敗し、カウンターでの2点を相手に与えている。「コーチ(フィンチ)とは最高の関係を築いているよ。パスしろと言われて、コーチの言うことは98%ぐらい正しいから、本来はパスすべきだったんだろうけど、僕はシュートを打った。今日はバスケの神様が味方に付いていたんだ」とエドワーズは言う。

フィンチは試合後の会見でエドワーズにパスしろと言ったことを否定し、「ああいう場面でシュートを何度も決めてきた。彼がチームにいてくれて良かった」と語った。

それでもエドワーズのクラッチショットを決めた直後の怒りを見れば、フィンチからパスを要求されていたのは間違いないように思える。普段ならエドワーズはエゴを出さない。NBAを代表する選手になりつつあるが、彼は自分だけが『チームの顔』として目立つのが好きではないと言い、エースの責任を負いつつも勝利のためにパスが必要であればパスを出し、勝利も敗北もあくまでチームとしての結果だと繰り返している。

だが、この試合は違った。両チームともディフェンスが上回り、オフェンスは停滞して良いチャンスがほとんど作れない状況で、エドワーズはタフショットでも自分が打って決めていくという強い姿勢を打ち出していった。

「ほんの少しのスペースがあればシュートは打てる。2人がかりで激しくチェックに来られるのも好きだ。そういう状況を想定して練習してきたんだから、打てないとは思わない。ボールを受け取るたびに、とにかく全部を打つつもりだった」とエドワーズは皮肉な笑みを浮かべる。「パスすべきだと言う人もいるだろうけど、僕は自分が打つ方が勝つ確率が高いと思ったんだ」

あまりにも強気なプレーが裏目に出て、レイアップを外してカウンターを浴びたようなシーンが続いていたら、勝敗は逆になっていたかもしれない。しかし、エドワーズはそのリスクを恐れなかった。

「外すなんて思っていない」と彼は言う。「練習で膨大な時間を費やしている。毎日、練習後も夜もシュートを打ち続けている。『これだけやってきたんだから、外れるわけがない』という感覚だよ」

超ロースコアの試合で、エドワーズは31得点を記録。強気を貫くことでチームに勝利をもたらした。それに続く18得点を挙げたドンテ・ディビンチェンゾは、エースの働きをこう評価する。「最後のシュートは『まさにアント(エドワーズ)』と言うしかないね。彼があれだけ自信を持って打つんだから、周りの僕らも彼を信じて、結果を受け入れる。外れたら守備に戻って止めればいい。それがチーム全体の考え方さ」