
ヤング離脱以降は8勝2敗、3年ぶりの「貯金4」
5連勝中のサンズと4連勝中のホークスの対戦は、ホームのサンズが優勢だった。前半はホークスがほとんどの時間帯でリードしていたが、第3クォーターにアイザイア・リバース、ジョーダン・グッドウィン、コリン・ギレスピー、ニック・リチャーズのベンチ組がホークスを圧倒し、第4クォーター開始2分で103-81と22点のリードを奪っていた。
そこからホークスの大逆転劇となるのだが、流れが変わったのはリチャーズがフリースローを落とした後、速攻に走られた場面でのディフェンスがルーズで、ジェイレン・ジョンソンにあっさりバスケット・カウントを献上した場面だった。続くオフェンスでも集中を欠いてあっさりとボールを失い、速攻を浴びている。シュートが外れたため連続失点にはならず、逆にデビン・ブッカーとグッドウィンが得点を挙げたのだが、気の緩みが見えた時点で、選手交代なりタイムアウトなりの手を打つべきだった。
ここからホークスは驚異のランを見せる。20-0のランの10得点目がザッカリー・リザシェイのダンクだったのだが、決めた後に空中でバランスを崩した彼は背中から落下し、プレーを続けられなくなった。この不運なアクシデントが、ホークスの闘志にさらなる火をつけた。
約4分半を無失点で切り抜け、攻めに転じればシュートを次々と沈める20-0のラン。それでも1点リードを保ったサンズが、ブッカーの連続得点で112-106と突き放すが、ホークスの勢いは止まらなかった。ニキール・アレクサンダー・ウォーカーの4点プレーにダイソン・ダニエルズのバスケット・カウントと、2ポゼッションでの7得点で食らい付く。残り1分半で、この試合34得点と絶好調だったディロン・ブルックスからオフェンスファウルを誘発し、これで得たポゼッションで、ダニエルズのロブをオニエカ・オコングが押し込むアリウープで逆転。かくしてホークスが124-122でサンズを振り切った。
ホークスはエースのトレイ・ヤングが現地10月29日のネッツ戦で右膝を痛めて戦線離脱。しかし、この試合を含めてヤング離脱以降は8勝2敗と絶好調。クリスタプス・ポルジンギスもコンディションが上がらず欠場を繰り返しており戦力的には厳しいはずだが、チームはここ数年で最も勢いがある。これで9勝5敗、ホークスにとって『貯金4』は3年ぶりだ。
アレクサンダー・ウォーカーは「敵地であれだけの劣勢を覆したんだ。アドレナリンが出まくっているよ」と興奮の面持ちで語る。「チームが一致団結して戦うのは本当に素晴らしいことだ。20点差を付けられて、観客が盛り上がっていても、僕らは誰一人として勝負をあきらめていなかった。精神的にバラバラになるのは簡単だろうけど、僕らは『少しずつ点差を削り取るぞ』と声を掛け合った。最後の2分ぐらいまでスコアを確認することはなかった。目の前のポゼッションに全集中し、ひたすらタフに戦うマインドセットが、僕らを勝利に導いてくれた」
リザシェイがダンクの後に背中からコートに落ち、動けなくなった時に、しばらく試合は止まった。ここでホークスのリズムが途切れかけたが、ある選手の一言がチームを再びプレーに集中させた。アレクサンダー・ウォーカーは「不運で恐ろしいプレーが起きた後、JJが『彼のために勝つんだ。無駄に終わらせるわけにはいかない』と声を掛けたんだ」と振り返る。
JJとは5年目のフォワードのジェイレン・ジョンソンだ。この試合で25得点10リバウンド7アシストを記録した彼は、ヤング離脱後に毎試合のようにトリプル・ダブル級の活躍でチームを引っ張るだけでなく、リーダーシップも発揮しつつある。
ただし彼自身はこの場面を「みんなの思いを言葉にしただけ。ゲームプランに集中し直し、戦い抜くことに全員が同意してくれてうれしい」と語った。
5連勝という事実だけでも十分に価値があるが、さらに意味があるのは相手がレイカーズ、クリッパーズ、キングス、ジャズ、サンズと西カンファレンスのチームで、4試合はアウェーにもかかわらず勝ち続けていることだ。
次戦は東カンファレンス首位を走るピストンズが相手。東カンファレンスで最も勢いのあるチーム同士の対戦となるが、ホークスの選手たちに余計な気負いはない。ジョンソンは「いつもと変わらず目の前の試合に集中するだけ」と、アレクサンダー・ウォーカーは「今日は勝利を祝い、明日になったら明日やるべきことをする」と語った。