第2クォーターの失速が大きな敗因に
11月16日、アルバルク東京は名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦。リーグ屈指の強度を誇る名古屋Dのディフェンスに苦しみ66-74で敗れた。A東京は10勝8敗でバイウィークを迎えた。
両チームは試合の立ち上がりから激しいディフェンスを展開し、相手にタフショットを打たせ、第1クォーターは14-12とロースコアとなった。しかしA東京は第2クォーターに入ると、名古屋Dの前から当たるディフェンスの圧力にミスを重ねてリズムを崩し、イージーシュートを許すなど10-24と大差をつけられてしまう。
A東京は後半に入っても名古屋Dから主導権を奪い返すことができない。前半わずか24得点に終わったオフェンスを立て直し、第3クォーターで25得点を挙げることはできたが、名古屋Dの内外のバランスが取れたオフェンスを止められない。後半も終始、名古屋Dのペースで試合を進められて敗れた。
A東京のデイニアス・アドマイティスヘッドコーチは、試合の大きな分岐点となった第2クォーターの失速についてこう振り返る。「第2クォーターでペースを上げようとしましたが、そこでミスが起きてしまいました。悪い状況判断からターンオーバーに繋がって流れを持っていかれ、簡単に点数を取られてしまいました」
不動の先発ポイントガードであるテーブス海が欠場している中、同ポジションの中村浩陸は24分43秒出場し、9得点3リバウンド2アシスト2スティールを記録。オフェンスでは緩急を生かした巧みなドライブで相手ディフェンスを切り崩し、ディフェンスではボールマンへの激しいプレッシャーと、攻守で力強いプレーを披露。中村の出場時間における得失点はプラス1と、彼がコートに立っている時間のA東京は名古屋Dと互角の戦いを演じることができていた。
確かな爪痕を残した中村は、「試合の入りからフィジカルに戦っていこうと話をして、最初は良かったです。ただ、ターンオーバーが16と相手の2倍ありましたし、第2クォーターにミスから相手の展開になりました」と、指揮官と同じく第2クォーターの失速を悔やんだ。
「早い展開に持っていくことは負けていない」
今シーズン、中村は日本人選手では唯一の新戦力としてA東京に加入。テーブスの負傷により開幕戦でいきなり先発出場のチャンスを得るが、ここで無念の負傷退場となり約1カ月の戦線離脱を強いられた。
「開幕戦の先発はチャンスと思っていて、自分をアピールしようという中でのケガですごく悔しかったです。欠場している間はすごくあせりがありましたが、しっかりと治して復帰してからはそれなりに試合に使ってもらっています」
このように欠場中の思いを明かす中村は、今の自身のパフォーマンスについて「ゲームをコントロールしたり、ディフェンスでしっかり当たっていくのが自分の仕事ですが、できている試合とできていない試合の波が大きい。この2試合はライアン(・ロシター)に任せてしまっているところもあり、もっと自分の判断でチームをまとめていかなければいけないと思います」と語る。
本人の評価は厳しいが、ここ数試合の中村を見ると、11月9日のサンロッカーズ渋谷戦、12日の宇都宮ブレックス戦では2試合続けて12得点をマークし、勝利の立役者になるなどオフェンスで大きな存在感を示している。
これまでのプロキャリアにおいて、中村はどちらかといえばアップテンポなスタイルのチームでプレーしてきた。しかしA東京は、規律と再現性を重視したハーフコートオフェンス中心のチームだ。スタイルが大きく違う新天地にすぐにフィットするのは簡単ではないが、中村は現在、開幕直後の1カ月の離脱がありながらすっかりチームになじんでいる。
A東京のスタイルについて中村はこう語る。「オフェンスできっちりと形を作ってやるスタイルをこれまであまりやってきていないので、自分の中で難しく考えてすぎてしまう部分もありました。でも今シーズンのアルバルクはあまり型にはまらず、流れの中で自分たちで判断し、ウイング陣やライアンがボールプッシュをしていく展開も増えています」
そして「みんながアグレッシブに仕掛けていく。(対戦相手として)イメージしていたアルバルクとは違っていました」とうれしい誤算があったことも明かした。
これからテーブスが復帰した際、ポイントガードは激しいポジション争いが予想される。中村は、「ディフェンスで前からプレッシャーをかけて1対1で守ること。あとはボールプッシュなどで早い展開に持っていくことは今までのキャリアでやっていて負けていないと思います」と、自分の強みを押し出してプレータイムを勝ち取っていく気持ちだ。
これまでのシーズンの反省を踏まえ、今シーズンのA東京は精度の高いハーフコートオフェンスを基本としつつ、ペースアップも目指している。しかし、当然だが慣れ親しんだスタイルを変えることは簡単ではない。この試合もペースアップを試みたことでミスに繋がり、相手に主導権を与えていた。
新たなスタイルの確立には痛みを伴うもの。しかし、この痛みをより小さくするためのキーマンとして、これまでのA東京のスタイルに良い意味で染まっておらず、アップテンポな展開を得意とする中村の存在はシーズン中盤戦での反撃における大きな注目ポイントだ。

