ロンドン・ジョンソン

CBAで活躍した中国期待のガードはオレゴン大に

シーズン開幕を目前に控えたNCAAバスケットボールで、今、大きな話題となっているトピックがある。それは昨シーズンまでNBA傘下のGリーグに在籍していたロンドン・ジョンソンがルイビル大、ティエリー・ダーランがサンタクララ大でプレーすることが認められたことだ。ジョンソンは2026-27シーズンから、ダーランは今シーズンからコートに立てる。

これまでNCAAでは厳格なアマチュアリズムが適用されていた。しかし数年前に、選手たちが肖像権などを用いたスポンサー契約ができる『NIL契約』が解禁されたことで環境は大きく変わった。選手たちは実質的にプレーすることで報酬を得るプロに。人気選手であればNILによって数億円を獲得し、数千万円の収入を得る学生アスリートは珍しくない。

大学で上位の実力はあれどNBAのロスター枠に生き残れるかどうかのボーダーラインの選手にとっては、大学で1年でも長くプレーしたほうが段違いに収入が良い状況になっている。そして、Gリーグで報酬を得ていたジョンソンとダーランは、NIL契約の施行でアマチュアリズムが緩和しなかったらNCAAでプレーすることはできなかっただろう。

NCAAとプロの違いがなくなっている中、大学バスケ界の重鎮であるミシガン州立大の指揮官トム・イゾーは、この急激な変化を推し進めるNCAAの執行部のことを「尊敬できない」と語る。

「この発言によって、自分に問題が起こるかもしれない。ただ、最近はこどもたち(選手)が変わったという話はよく聞く。そして問題は、こどもたちにあるのではなく我々にある。先日、Gリーグで2〜3年プレーした選手が突然、出場資格を得られる事態が起きた。私たちの大半はこれをまったく知らなかった。NCAAであり、このような決定を下す人たちが我々と相談することなく決断を下していることに納得いかない」

イゾーが今回の元Gリーグ選手のプレーを認めることに不満を表明するのは理解できる。ただ、すでにアメリカ国外でプロとして活躍していた選手がNCAAでプレーしている事例はあり、ここに新たに元Gリーグの選手たちが加わることに驚きはない。

昨シーズン、NCAAトーナメント常連のクレイグトン大に加入したモンテネグロ出身のフェドア・ジュキッチは、ドイツのレシオファーム・ウルムでユーロカップに出場するなど、欧州のトップ戦線でプレーしていた。また、同じくNCAA1部の強豪オレゴン大で新シーズンからプレーする中国出身のリン・ウェイは過去3年間、中国CBAの南京モンキーキングスに在籍。昨シーズンは21歳にして34試合に出場し、平均21.0 得点、5.0アシストを挙げた中国期待の若手ガードだ。

今後も10代からプロリーグで活動していた20代前半の若手選手が、さらなるステップアップを求めてNCAAを目指す事例は増えていくだろう。NCAAで活躍することで多くの報酬を得られるだけでなく、NCAAで結果を残せばNBAチームの関係者に注目されやすい。

今、日本でNCAAを目指す選手たちは高校卒業後に渡米するのが一般的だが、高卒でBリーグ入りし、実績を残してのNCAA入りも有効なルートとして考えるべきタイミングになってきている。