悪い流れを断ち切り、チームを立ち直らせる得点ラッシュ
チャンピオンシップのクォーターファイナルを、三遠ネオフェニックスに連勝して突破。アルバルク東京は『4強』進出を果たし、目標とするBリーグ優勝へ一歩前進した。
今日行われた第2戦、立ち上がりは三遠のペースだった。後がない三遠は試合開始からエネルギッシュに戦い、攻守に鋭い出足を見せた。ロバート・ドジャーが効率良く得点を奪い、ジョシュ・チルドレスが抜群の滞空時間とワイドスパンを生かしてリバウンドを制する。
3点ビハインドで始まった第2クォーターにはリバウンドから走る展開を作られ、0-8のランで23-34と点差を2桁に広げられた。だが、ここでA東京が取ったタイムアウトを機に、田中の得点能力が爆発する。前半終了までの2分半に4本のシュートを沈めて9得点。一気に差を詰めることに成功し、チームは立ち直った。
「前半は打たされたシュートが多かったんですけど、第2クォーターを少ない点差で終われたこと、後半に入って早めに逆転できたのが良かった」と、田中は試合を振り返る。
そこまでは三遠の対策、特にディアンテ・ギャレットへの対応が効いていた。ピック&ロールの際にアンダーで対応し、ギャレットにドライブさせるのではなく遠目からのシュートを選択させた。これが田中の言う「打たされたシュート」である。
第2クォーターの前半、ベンチから戦況を眺めていた田中はギャレットについて「自分のリズムで打てていない。打たされていて乗り切れていない」と感じていた。そしてコートに戻ると、チャンピオンシップが始まる前に語った『勝負が分かれるところでは、自分でなるべく責任を持ってシュートを打ちたい』の言葉を実践した。
「ディアンテが『大貴で行こう』と声をかけていた」
「積極的にプレーする」と言うのは簡単だが、実際にコート上で40分間実践するのは難しい。試合の流れが悪い時、負けている時であればなおさらだ。この第2クォーター終盤は三遠に一気に試合を持っていかれてもおかしくない時間帯だった。それを田中は『責任を持って』プレーし、4本連続でシュートを沈めて逆に流れを呼び込んだ。
「常に自分が点数を取るんだという気持ちでプレーすると、自分でも乗って来ます。あとは1~2本シュートが決まれば自分も良い流れに乗れます。自分は一つ決まれば乗って来るタイプの選手だと思うので、特に1本目をどうやって良い形で決めるかが大事なところ」と田中は語る。
第2クォーター残り2分26秒の場面、田中はディフェンスの寄せが甘いと見るや迷わずに正面からの3ポイントシュートを沈めた。ここからチームメートも田中にボールを集め、彼で勝負した。伊藤拓摩ヘッドコーチは試合後にこう明かす。「ディアンテが『大貴で行こう』と声をかけていた。大貴もチャンピオンシップに向けて調子を上げていて、そこでお互いの信頼関係が出せた」
こうしてチームは田中に賭け、彼はその責任を負うことを恐れずにプレーして結果を出した。1試合を通じて16得点という数字は彼にとっては『平均』かもしれないが、試合の流れを考えれば非常に価値のあるものだ。
積極的にプレーするには「相手を上回るだけの力」が必要
勇気を出して、積極的にプレーすること。簡単なようで難しいことを実行するのに必要なのは何か。田中は「メンタルの部分は大きいです」と当たり前のことを前置きしつつ、こう続ける。「そのためには技術がないといけない。相手もいろいろと守り方を変えてきますが、その上を行くには力がないといけない。自分はその力を身に着けている段階です」
25歳の田中はまだまだ成長中だ。Bリーグ開幕の時点で、彼は日本代表を外れて悔しい思いを抱えてのスタートを切っており、ライバルに負けられないという思いは強い。そして、責任を持って積極的にプレーするという意味では最高のお手本、ギャレットがすぐ横にいる。「ディアンテは40分間アタックするメンタリティを失わないし、少しでも隙があればアタックする。自分も40分間を通してアタックできるし、そのための技術も高められると思っています」と田中は言う。
この1年での成長についての手応えを聞くと、「ピック&ロールからアタックしてファウルをもらう回数が増えています」と教えてくれた。「去年まではジャンプシュートが多かったのですが、今はファウルをもらうところまで行くし、そこでパスもさばける。プレーの引き出しが増えています」
もちろん、まだ満足はしていない。「成長はしていると思うが、もっともっと、大事な時に力を発揮できる、チームメートに頼られる存在になりたい」と彼は言う。ただ、今はシーズンの最終局面。成長も大事だが、それ以上に求められるのは『優勝』という結果だ。
「次の川崎戦のことだけを考えたい」と田中は言った。目標達成まであと3試合。アルバルク東京と田中大貴の戦いはまだ続くが、ゴールはすぐそこに迫っている。
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