「なぜ試合を見ずに僕のプレーを語れるんだろう?」

今オフのネッツはキャム・トーマスに新たな契約をオファーしなかった。ネッツ生え抜きで4シーズンを過ごし、直近の2シーズンはチームトップの22.5得点、24.0得点を記録していても、『得点以外に貢献できない』と評価され、プレーメークとディフェンスで結果を残すと意気込んだ昨シーズンはふくらはぎの肉離れを繰り返し25試合にしか出場できなかった。

こうして彼はネッツから契約を得られず、クオリファイング・オファーを選択。600万ドル(約9億円)と格安の年俸を受け入れ、市況の良くなる来年オフに向けて自分の価値をあらためて示すことになった。

自分の可能性を信じようとしないネッツのフロントに不満がないはずはなく、気分の悪いオフだったはずだが、シーズン始動の会見に臨んだ彼は「自分らしいプレーをすること。ヘッドコーチが求めることを理解し、システムの中でプレーすること。より成熟した選手になること。それですべてが上手く噛み合う。この1年で状況を大きく好転させられると思っている」と静かな口調で語る。

クオリファイング・オファーを選んだ理由について、トーマスは「自分の状況は自分でコントロールしたかった。選手としては当然のことだ」と説明する。先の保証がないままにこの1年を過ごすリスクを理解した上で、「他のどんな選択肢よりも僕に多くのメリットがあった」と言う。

スタッツは残してもチームの勝利に貢献できない、ボールを持たないと何もできない、というレッテルを貼られていることについて「人々はそれが何であれ話題を必要としているだけだから、あまり気にしていない」と言うも、こう続けた。「でも、試合をちゃんと見ることもない人が適当な話を広めるのはイライラする。僕についてネガティブなコメントをする人の多くは、昨シーズンのネッツの試合を見ていなかったに決まっている。僕が納得いかないのはそこなんだ。なぜ試合を見ずに僕のプレーを語れるんだろう?」

キャリア5年目を迎える彼は、自分がどのようにチームを引っ張るべきか、彼には明確なイメージがある。「僕もこれまで多くのベテランから様々なことを教わってきた。その知識を若手に伝える番だ。特にルーキーイヤーに82試合をこなすのは大変だ。でも、正しい知識があれば負担を減らすことができる。そうやって若い選手たちを助けるつもりだ」

「プレーの面ではスペーシングをより意識したい。ジョルディ・フェルナンデスは速いペースでプレーし、多くの3ポイントシュートを打つスタイルを望んでいる。セットオフェンスになれば相手の注意は僕に向く。そこで速いペースを維持しながら良いプレー選択をして、相手の思うようなディフェンスをさせない。ジョルディのバスケは僕にとってかなりやりやすいからね。今シーズンはそこを突き詰めていくつもりだ」

今シーズンもネッツは『勝てるチーム』とは見なされていない。多くのルーキーをコートに送り出し、負けながら学ぶ1年となるはずで、トーマスは勝負の今シーズンも『チームを勝たせられる選手』にはならないと予想される。

しかし、勝てなくても自分を信じてくれなくても、トーマスにとってはネッツが自分のいるべき場所だ。「ネッツは僕をドラフトで指名してくれたチームで、そこで5年目を迎えることを本当にうれしく思っている。この1年でいろいろ試されることになるけど、今ここにいられるのは幸せだし、またファンの前でプレーできるのが楽しみだ」