「他のリーグでプレーする可能性がある」

昨夏、レブロン・ジェームズはレイカーズと2年1億400万ドル(約160億円)の契約を結んだ。その2年目の契約はプレーヤーオプションだったが、レブロンはこれを破棄しないことを選択。40歳になった彼は、NBAキャリア23年目にして初めて先の契約がないまま開幕を迎えようとしている。

オフ序盤にはウォリアーズへの移籍が噂されたが、彼は何の動きも見せていないし、沈黙を保っている。レイカーズは明らかにルカ・ドンチッチ中心のチームへとシフトし始めたが、それを受け入れて2025-26シーズンに臨む構えだ。

来年オフにレブロンは無制限のフリーエージェントになるが、現役引退の可能性が最も高いと見られている。さすがのレブロンも、年齢的な衰えが見られるようになった。ピーク時のパフォーマンスは落ちていないが、それを保つのは年々難しくなっている。レイカーズでの挑戦が終わった時、彼のモチベーションを刺激する新たな目標を見いだすのは簡単ではない。

それでも、レブロンと昵懇の仲であることで知られるブライアン・ウインドホースト記者は、『ESPN』の番組で「彼がどこまでプレーするかを明言することはできないが、彼のプレーは引退間近のものではない」と言い、こう続けた。「健康でさえいれば、彼がバスケを引退するとは思えない。NBAでは今年が最後と見られているが、他のリーグでプレーする可能性がある」

ユーロリーグか、あるいはBリーグか? NBAがイギリスを拠点としてヨーロッパで立ち上げる新たなリーグの『看板選手』になるという選択肢もある。ウインドホーストが推すのは、複数の国をまたいだ国際リーグの設立とともに、レブロンがそこでプレーするというアイデアだ。

F1のように開催都市を転戦するツアー型の大会に?

この『国際リーグ』の設立に向けて、シンガポール政府、サウジアラビアの政府系ファンド、マカオのカジノ運営企業が中心となって50億ドル(約7500億円)の投資を募っていると『ファイナンシャル・タイムズ』が報じている。ここにアドバイザーとしてマーベリック・カーターが参画している点は注目に値する。

カーターはレブロンを支えるビジネスパートナーの一人。レブロンのビジネスチームである『LRMR Ventures』の名前は、レブロン、リッチ・ポール、マーベリック・カーター、ランディ・ミムズの頭文字を取ったもの。ポールはレブロンのエージェントであり、ミムズは常にレブロンの傍らにいてマネジメント全般を取り仕切る。カーターはレブロンがかかわる様々なビジネスを取り仕切る実行役。レブロンとは同郷で、子供の頃からバスケとアメフトを一緒にプレーしていた親友でもある。

その彼が『国際リーグ』立ち上げにかかわる以上、レブロンにも何らかの繋がりが発生していると見られる。ヨーロッパで最大手のエージェントであるセルビア人のミシュコ・ラジュナトビッチはこの夏、レブロンとカーターと一緒に過ごす写真をSNSに投稿した。「2025年の夏は、2026年の秋に向けて大きな計画を立てるのに最適な時期だ」という言葉を添えて。

『Bloomberg』はこのリーグを、男女各6チームが8つの都市で戦う大会と報じている。多くのバスケリーグのようなホーム&アウェーではなく、F1のようにいくつかの開催地を転戦するツアー型のリーグ戦。近年に人気が再燃しているF1の隆盛ぶりを考えれば、その開催地となっているシンガポール、サウジアラビア、マカオが乗り気なのも理解できる。

レブロンはもともと、引退後の夢としてNBAチームのオーナーになることを公言してきた。しかし、ラスベガスに新チームを作るフランチャイズ拡大の構想は、語られはすれど実現に向けた動きは一向に見られず、むしろNBAヨーロッパ設立が今は先行している情勢だ。そして既存の30チームは評価額が上がりすぎ、手に入れるのは至難の業となっている。

レブロンは十分に稼いだし、十分に勝った。それでもなおバスケへの情熱は衰えず、プレーするコンディションを維持できているとすれば、彼自身が価値を見いだせるプロジェクトに身を投じるだろう。それはレイカーズ残留ではなく、キャバリアーズやヒートへの帰還でもなく、全く新たなバスケの価値を自らの手で作り出すことかもしれない。