「自分がしっかりとチームを引っ張っていこう」

今年の『全日本大学バスケットボール選手権(インカレ)』で男子は、白鷗大が2年ぶり3回目の日本一に輝いた。

4年生の大黒柱、佐藤涼成が秋の『関東大学バスケットボールリーグ戦』の直前にプロ転向でチームを離れる大きな戦力ダウンがありながら、チームを立て直せたのは残った4年生のリーダーシップと活躍があってこそ。昨年のインカレは観客席で応援していた佐古竜誠が、佐藤の離脱を受けてキャプテンに就任し、インカレで優秀選手賞を受賞したステップアップは大きなスポットライトを浴びたが、彼と共に先発ガードを務めた4年生、佐伯崚介の貢献は縁の下の力持ちとして白鷗大の王座奪還に欠かせなかった。

101-83で勝利した早稲田大との決勝では、終盤にダメ押しと言える3ポイントシュートを沈めるなど17得点7リバウンド3アシストの活躍。また、大会を通して堅実なディフェンスを見せるなど、数字に出ない部分でチームを支えていた。

佐伯は「やっぱり涼成が抜けたことでたくさんのプレッシャーがありましたけど、涼成がいなくても優勝できることを証明できてちょっとホッとしている感じです」と優勝できたことへの率直な思いを明かす。

シンデレラストーリーを歩んだ佐古とは対照的に、佐伯は下級生の頃から主力を務めてきた。脇真大(琉球ゴールデンキングス)を中心とした2年前のインカレ優勝時、決勝の東海大戦では先発して27分48秒出場し9得点7リバウンド3アシストを記録している。4年生になった今シーズン、同じく下級生から主力だった佐藤と共にチームを引っ張る存在だと誰もが認める結果を残してきた。

だが、盟友の佐藤は予想外の形でチームを去り、その影響から秋のリーグ戦はまさかの連敗スタートとつまずいてしまう。『やっぱり佐藤がいないと厳しいのか』という見方が出てくる中でも、佐伯は「今のチームで、もっとできることはあると思っていました」と冷静だった。「みんなでしっかり話し合って、自分たちの何が悪かったのか、良さはなんなのか再認識しました。3連敗スタートでしたけど、そこから勝ち星を増やして最終的にリーグ戦で3位になれました。あの3連敗があったから今の結果に繋がったと思います」

佐伯が語るようにリーグ戦で尻上がりに調子を上げた白鷗大は、インカレではハイスコアリングゲーム、ロースコアと両方の展開で勝ち切る強さを見せた。快進撃を続ける中、佐伯はリーダーシップを強く意識しつつ、一歩引いた立場でチームを支えた。「最初は涼成と一緒にチームを引っ張る存在でいようと思っていました。ですが、涼成がいなくなった後は自分がしっかりとチームを引っ張っていこうと思いました。自分はキャプテンをやるキャラではなく、キャプテンを支える側だと思っていましたが、なにかダメなところがあったら率先して言うようにしていました」

「Bリーグでは外国籍の選手も止められるように」

また、インカレでは強気の仕掛けが光ったが「自分が攻めるべき時は攻めますが、周りに点を取れる選手が揃っています」と言い、自分が主役にならなくていいと考えていた。それでも、スタッツには出ず目立つことではないが、白鷗大のバスケットボールをするために不可欠な部分を誰よりも示すことにプライドを持っていた。佐伯は語る。

「自分はチームで一番泥臭いプレーをするためにコートに立っています。インカレでは決勝までみんなに助けてもらっていました。最後の決勝は攻める気持ちを出し、守備では一つひとつのプレーを絶対に守ってやるという気持ちでした。決勝はやりたいことができました」

佐伯にとっては2度目のインカレ制覇となるが、最上級生としてチームを背負ってつかんだタイトルは「2年生の時、脇さんたちの代に優勝させてもらいましたが、あの時と今日では優勝が決まった瞬間の気持ちは全然違いました」と、より格別の思いとなった。

また、チームを離れても佐藤は、佐伯にとって大きな存在となっていた。「プロに行く決断をした理由や、今後の白鷗大は託したという内容が書いてありました」と佐藤から直筆の手紙を受け取っており、「今日もしっかりとバッグに入れて、試合前には手紙を握って力をもらっていました」と明かす。

そして佐藤への感謝を続ける。「涼成は自分を一番成長させてくれた存在です。自分の良いところ、悪いところをしっかり言ってくれていました。そしてスタートで試合に出るようになってからは、『お前は打って良い、絶対に弱気になるな』と強い言葉をかけてくれていました。インカレでは『大事な時こそお前がやるんだ』と言われていました。昨日の東海大戦、今日と大事な場面で決め切れたのは涼成の支えがあったからだと思います」

まだ、天皇杯が残っているが、佐伯は最高の形で大学生活を終えた。これから彼が目指すのは佐藤がすでにプレーしているプロの舞台となる。「もっとフィジカルレベルを上げてBリーグでは外国籍の選手も止められるようになりたいです。そして涼成とは違うチームになって、試合でマッチアップしてやりあって、やっつけてやりたいです」

こう意気込みを語る佐伯が、持ち前のディフェンス力を武器にルーキーからBリーグで出番を勝ち取ってもそれは驚くべきことではない。それくらいの力を彼はこのインカレで示した。