宮永雄太

B1昇格2年目を終えて、佐賀バルーナーズは次のステージへと歩みを進めている。その先頭に立ち続けてきたのが、北海道出身のヘッドコーチ兼GMの宮永雄太だ。2021年よりチームの指揮を執り、2022-23シーズンにはB2優勝そしてB1昇格、B1初年度は29勝31敗と昇格初年度のクラブ最多勝も記録した。迎えた2024-25シーズンは、22勝38敗で西地区7位と思うような成果は得られず、宮永ヘッドコーチは「自己評価は3点」と厳しい言葉でシーズンを振り返る。だが、角田太輝や井上諒汰ら若手の成長、そして地域と共に戦う『佐賀スタイル』への手応えもつかんだシーズンだった。そんな宮永に、2024-25シーズンの教訓とこれからの展望を聞いた。

昨シーズン10点満点中3点』

――昨シーズンを振り返って、10点満点中で自己評価をつけるとしたら何点ですか。

3点ぐらいですね。

――かなり厳しい評価ですね。その3点』の理由は

最後のホーム最終戦、大阪(エヴェッサ)さんとのゲームで、自分たちが目指していた『連動性のあるオフェンス』と『チームディフェンス』が表現できて、連勝をつかむことができたのが、唯一良かったところですね。それと、レギュラーシーズン最後の琉球(ゴールデンキングス)さんとのアウェー戦。結果は負けでしたが、内容としては自分たちが求めていたバスケットができた。そういったところでの3点かなと思います。

――残りの7点を取れなかった理由はどこですか。

B1初年度だった前シーズンは、モットーである『連動性のあるオフェンスから、チームディフェンスっていうのを展開』という自分たちの形で5割近い勝率を残すことができ、B1のレベルに対しての手応えを感じていました。なので、昨シーズンは大きくロスターを変えずに、クオリティとチームの成熟度を上げてトライできると考えていました。

しかし、外国籍選手(レイナルド・ガルシア)をポイントカードのポジションで使っているので、チームの軸となるジョシュ・ハレルソンが長期離脱したことはかなり影響が大きかったです。ガルシアのところが、ビッグマンだったらもう少しごまかせたかなと思うのですが、ジョシュがいない分、ガルシアの使い方も難しかったです。シーズンを通して試行錯誤を繰り返しましたが、正直、最後まで明確な答えを見つけられなかったですね。

――昨シーズンは、ジョシュ選手のケガの影響もあり、やりたいバスケができなかったのではないですか

本当に、もどかしかったですね。金丸(晃輔)が加入して、スクリーンやパスを出す精度やタイミングなどをずっと練習をしてきたのですが、途中加入したモッチ(ラミン)選手だったりは、そこにスペースを取るのが難しく、試合をこなしながら作り上げていくことが簡単ではありませんでした。

――宮永ヘッドコーチが、やりたいバスケットボールとは

僕は『連動性』というのをずっと掲げています。個に頼るんじゃなくて、全員でボールをシェアしながらアタックするオフェンスの連動性、そして全員でディフェンスを作っていく。それはオンコートだけではなく、オフコートも一緒に連動していかなければ、何かを成し遂げるというのは難しいと思っています。行政や地域の方々と一体となってチャレンジすることが、日本一を目指すための土台になるのかなと考えています。  

――昨シーズンは、『連動性』の成果をどう感じていますか。

「こうやったら崩れるんだな」というのはわかりました。自分の中ではブレないターゲットを示してトライをしていましたが、結果が出ていないと「こっちの方がいいんじゃないか」といった声も出てくる。これぐらいで崩れるかっていう思いもありましたし、年明け頃の負けが続いたときは本当に悩みました。

この軸をもとにチームを作っていけるという感覚もありました。それは大きな成果の一つだと思います。

――そんな中でも、若手選手たちの成長もありましたよね。

はい。トライする中でも、角田(太輝)や井上(諒汰)は、確実に軸になってくれましたし、この軸をもとにチームをつくっていけるという感覚もありました。それは大きな成果のひとつだと思います。

『佐賀スタイル』を見つけていかなきゃいけない

――――チーム作りという点で、若手とベテラン、フロントとの連携も含めて『組織としての連動性』も意識されていたのではないでしょうか

そうですね。特にアレン・ダーラムが入ってきてからは、ヨーリ・チャイルズとの連携であったり、経験ある選手の良さを引き出すっていうのもそうですし、どうバランスを取るかは非常に難しかったです。また、クラブとしてもホームアリーナでの5000人以上の集客を目指していたので、チームが勝てない状況でもB1のスタンダードを作っていかなきゃいけないというもどかしさもあり、難しい状況でしたね。

――ヘッドコーチとGMという重要な役割を兼任されています。メリットやデメリットをどう捉えていますか。

責任の所在がはっきりしているので、どう転んでも覚悟がしやすいというのが1つ。あとは、物事の決定のスピードがかなり速いので、この2つはメリットかなと思いますね。デメリットを考えるよりは、メリットを考えて進んでいる方が、今の佐賀の組織としてはベストかなと考えています。

――『佐賀の組織』について、B1のスタンダードにかなり近づいてきたと実感はありますか。

地方都市なので、ここの地域に合う経営スタイルを作っていかなきゃいけないし、資金を大量に投入できるわけではない。だからこそ、佐賀で応援してくださる方々にどう還元できるかが僕らの存在価値だと思っています。そういった戦いを仕掛けて、トップチームを倒していく。その『佐賀スタイル』をこれから見つけていかなきゃいけないです。地域と一体となってやっていくことが、僕らのスタイルかなと思います。

――佐賀バルーナーズというチームには、地域と密着しながらしっかりとクラブ作りをしている印象があります。

そうですね。フロントも若くて有望な社員が日々「佐賀の発展のために」と尽力してます。まだできて間もないチームですし、良くも悪くもふわふわした感じがあって、「意外とB1でもいけるんじゃないか」という感覚がありますが、一つひとつ積み上げていかないと、すぐ崩れるよっていうのを自分に聞かせながら、組織を一丸となって作っていきたいとは考えています。 

「チャンピオンシップ進出が目標」

――今シーズンの編成について教えてください。

昨シーズンの反省として、日本人選手との連動性をもっと高めたいという思いが強くありました。なので、デイビッド・ダジンスキー選手やタナー・グローヴス選手、そして阿部諒や内尾聡理といった日本人選手をリクルートしました。橋本(晃佑)選手のような経験豊富なビッグマンも加わって、バランスはとてもいいと思っています。

昨シーズンの課題として、『連動性』というのはもっと高められると感じています。アレン・ダーラムとかヨーリ・チャイルズが、個人で素晴らしい選手であることは間違いないのですが、もっと日本人選手との連動性を高めて、同じ80点でも、『個人で取った80点』より『チームとして取った80点』にもっとフォーカスしたいなという思いがありました。そういう連動性をもっと引き起こせるような選手をリクルートしましたね。

――今シーズンの目標は。

チャンピオンシップ進出が目標です。そのために、特に角田太輝のポイントガードとしての確立、活躍というのはカギになってきますね。角田の持っているモノっていうのは、もっともっと素晴らしいんです。昨シーズン、おそらく本人はなんとかバランスを取ろうというふうに考えていたと思うので、今シーズンはチームのファーストオプションとしてやってもらいたいです。三遠の佐々木(隆成)選手クラスではないかと感じているので、楽しみです。

――チームとしても、セカンドユニットまで見据えた戦い方を考えていますか。

今シーズンは40分間、穴のない戦いができるようにしたいですし、「2チームできるな」っていう感覚はあります。角田と2ビックに阿部なのか内尾なのか金丸なのかが絡む時間。セカンドユニットとしてはガルシアとハレルソンの組み合わせも、昨シーズンは終盤に40分間穴がない形を作れました。開幕までの練習の中で、ここのバランスもいろいろ見ていきたいと思っています。

――最後に、ブースターの皆さんへメッセージをお願いします。

難しいシーズンの中でも、トライをし続けてくれた選手やスタッフに、私自身も感謝してますし、皆さんのご声援があっての頑張りだと思います。多くのメンバーが変わる中で、新シーズンがスタートします。チャンピオンシップに向けて、次のターゲットに向けて新しい、また新たなバルーナーズをお見せできると思いますので、ぜひご声援のほどよろしくお願いします!