山本麻衣

今年2月、山本麻衣とWNBAのダラス・ウィングスとのトレーニングキャンプ契約締結が発表された。Wリーグのシーズンを終えると山本は渡米し、ここで正式契約を勝ち取ることはできなかった後もアメリカに残ってチャンスを探っている。今夏は代表活動に参加せず、「可能性がある限りはこちらにいたい」という山本に、アメリカ挑戦について語ってもらった。

「本当の意味でアメリカ挑戦にコミットメント」

──WNBAのダラス・ウィングスのトレーニングキャンプに参加しましたが、開幕ロスターには残れませんでした。今はどんな目標を持って、どこでどんな活動をしているのですか。

ウィングスのトレーニングキャンプが終わって、今はアリゾナにいます。もともとアリゾナでトレーニングとワークアウトをしてからダラスのキャンプに入って、また戻って来ました。まだWNBAの途中から契約することもあるので、練習をしながらその可能性が出てくるのを待っている状態です。

──桜花学園の頃から、海外でプレーしたい気持ちを持っていましたよね。

はい。もともと興味があって、どこかのタイミングで行ければとは思っていました。それでも代表活動があったりタイミングが合わず、チャレンジの可能性を探れずにいたのですが、今回はトヨタ自動車も含めていろんな方が理解してくれて、本当の意味でアメリカ挑戦にコミットメントできています。

──いざアメリカでワークアウトをして、WNBAのトレーニングキャンプに参加して、どんな感触ですか。

正直、手の届かないところでは全然ないと思っています。ビッグマンはサイズ的にまた別ですけど、ガードやフォワードであればシュート力を含めたスキル、フィジカルのところで通用しないわけではないと思えました。ウィングスからはカットされましたが、「やれる」という自信を得ることもできました。

──「やれる」という手応えについて、具体的にプレーの面ではどんな部分ですか。

シュート力は十分に通用すると思います。中に入っていくと高さへのアジャストは必要になってきますが、3ポイントシュートはWNBAの選手との違いを感じません。逆に課題はパスで、腕が長くて反応も早いので、そこで手に引っ掛けられないようにする必要があります。ここはWNBAの選手と実戦でもっとやってみたかった部分です。

山本麻衣

「ずっとやりたかったことがやれている、毎日楽しい」

──ウィングスとの契約にかかわらず、それで日本に戻るつもりはなかったんですね。

トレーニングキャンプから始まってロスターに残るのは結構難しいと思っていました。もちろんロスターに残れなかったのはとても悔しいのですが、そのチームに自分が合うか、チームに必要なプレースタイルなのか、それでチーム構想に入るかどうかが決まります。よほど突出した実力を持っていれば別ですが、その一握りの選手を除けば、ロスターのバランス次第という面がすごく大きいと思っています。なので今は、私を必要としてくれる他のチームが現れるのを待っています。

──英語でのコミュニケーションは取れていますか。

チームメートとは何となくの感じで会話していますが、バスケに関しては用語も知っているし知識もあるので理解しやすいです。ただ、こちらからしゃべるのはまだまだで、試合中に相手の勢いに負けないように強く言わなきゃいけない時なんかは難しいですね。誰かが言ったことを聞いて勉強して、真似して使ってみるとか、そういう繰り返しですね。

バスケ以外のところだと英語はまだ難しくて、日常会話もそうですが、業務連絡みたいなもので「?」となってしまうことが結構あります。もちろん勉強はこちらでもやっていて、調べて使ってみての繰り返しです。

──アリゾナではどんな生活をしているんですか。

知り合いの日本人の方がアリゾナに住んでいて、そこにホームステイさせてもらっています。朝6時から知り合いのコートでシューティングマシンを使ってシュートを打って、一度帰ってご飯を食べてから1時間ワークアウトして、10時半からトレーニングを1時間半やって、走り込みをして、お昼にはすべて終わる感じです。

ウィングスのトレーニングキャンプが終わってからは、個人でワークアウトのコーチを雇っています。今のコーチはもともとシンさん(大神雄子、アンテロープスのヘッドコーチ)がアメリカに行った時のコーチで、3年前にここに来た時に紹介してもらって、その人が所属するコーチングのチームに練習を見てもらっています。ずっとやりたかったことがやれているので、毎日すごく楽しいですね。

──チーム探しはどんな形で進めているんですか。

そこはエージェントにすべて任せています。日本からWNBAに行くとなると、渡嘉敷来夢さんや町田瑠唯さんのように国際大会ですごい活躍を見せて呼ばれるのが一番可能性が高いと思います。あとはアメリカの大学で活躍していれば注目されやすいのですが、トレーニングキャンプからとなると、エージェントを付けないとチーム側もどこにアクセスしたらいいか分からないので、まずはエージェントが必要です。こちらでは10代からみんなエージェントがついてチームに売り込んでいるので、日本とは全くシステムが異なるところです。

山本麻衣

「誰もやったことがない、新しい道を切り開きたい」

──WNBAはもう開幕しています。日本ではWリーグが10月に開幕しますが、7月のアジアカップに向けた代表活動はもうスタートしています。今のアメリカでの活動はいつまで続ける予定ですか。

可能性がある限りはこちらにいたいと思っています。アンテロープスからは許可をもらっていて、シンさんからも「話しながら決めていこう」と理解してもらっています。WNBAのシーズンは9月までで、チャンスが来るかどうか分からないんですけど、いつ呼ばれてもいいように準備しています。

海外挑戦から日本に戻る場合、Wリーグの規定で戻るのは元いたチームのアンテロープスになります。そこはシンさんが海外挑戦をして、その後にどこにも戻れなかった事例を受けて変更になっています。

──今回WNBAでチャンスが来るかどうかにかかわらず、この挑戦は今後も続けますか。

そのつもりです。自分の考えとしては、この挑戦を続けて、ここでできることを証明していきたいです。今回こうやってトレーニングキャンプに参加できただけでも私にとっては大きな一歩で、こっちに来て初めて分かることもたくさんあります。どのカテゴリーでもアメリカが一番という事実がある以上、アメリカがトップレベルだと思うので、スキルもメンタリティもこの数カ月で自分がすごく成長できてるなと感じてます。

バスケをやっている以上、今よりもっと成長したい、もっと高いレベルに挑戦したいという考え方は常にあります。日本ではある程度のプレータイムをもらって、そこでの挑戦も良い経験ですが、アメリカでバスケをやるのは完全に『未知なる挑戦』で、そこに自分の新しい可能性があるんじゃないかと感じています。

自分もある程度は成長して、今いる場所が居心地の良い場所になってしまう部分がどうしても出てきます。今は大変なこともありますが、すごく刺激的だし、自分の成長のためにベストな環境にいます。今まで日本の女子の選手では誰もやったことがない、新しい道を自分が切り開きたいという思いもあります。それと同時に、一度きりの人生だから一番は自分のために、バスケ選手としてどうなりたいのかを考えて行動したいという気持ちです。

──すごく元気そうだし、モチベーションも高くて安心しました。それでは最後に、応援しているファンの皆さんへのメッセージをお願いします。

ダラス・ウィングスの挑戦は一度終わったのですが、まだアメリカに残ってワークアウトをしながらWNBAへの可能性を探っています。まだしばらくアメリカにいるのですが、引き続き応援いただけるとうれしいです。山本は元気です!(大声で)