比江島慎

4クォーターだけで15得点の大暴れ

5月27日に開催された『Bリーグチャンピオンシップファイナル』ゲーム3は、宇都宮ブレックスが琉球ゴールデンキングスとのファイナル史上に残る熱戦に73-71で勝利。今年2月末、ケビン・ブラスウェルヘッドコーチが46歳の若さで亡くなるという大きな悲しみを乗り越え、3シーズンぶり、リーグ最多となる3度目の頂点に立った。

宇都宮は試合の出だしから琉球に持ち味の3ポイントシュートを抑えられ、逆に確率良く3ポイントシュートを決められる。第2クォーターには琉球にトランジションを出されるなど依然としてペースをつかめず、前半で12点のビハインドを負った。

だが後半、宇都宮は守備の強度を高め、ゴール下の肉弾戦で負けないことで反撃開始。そして第4クォーターに入ると、ここまで22本中4本成功と不発だった3ポイントシュートが、このクォーターだけで8本中5本成功と爆発。残り33秒、比江島慎の3ポイントシュートで70-68と勝ち越し、3点リードの残り2秒に琉球ケヴェ・アルマに痛恨の3ポイントシュートファウルを喫したが、アルマは2本目を失敗。3本目のリバウンドも守りきって劇的勝利を収めた。

宇都宮の比江島はこの試合、17得点3リバウンドを記録。第4クォーターだけでフィールドゴール5本中5本成功の14得点と、ここ一番で大暴れの千両役者ぶりで逆転勝ちの立役者となった。

比江島は、千葉ジェッツとのセミファイナルゲーム2からファイナルのゲーム2まで4試合連続で1桁得点、フィールドゴール成功率29.4%と不調。この試合も第3クォーターまでは完全に沈黙していたが、土壇場で『比江島タイム』を作り出した。試合後のコートインビューで比江島は「追い込まれないとやらない性格ですいません」と笑った。

比江島慎

「最後の3ポイントシュートはケビンが後押ししてくれた」

チャンピオンシップの大一番で不調が続けばプレーが消極的になってもおかしくない。だが、ゲーム2の敗戦後、比江島は「ケビンは打ち続けろと言ってくれていました。自分を信じて打ち続ければ感覚をつかめてくる。打ったシュートは悪くない。打っていいと指示を受けています」と強気で攻め続けると宣言していた。

ジーコ・コロネルヘッドコーチ代行も「KB(ブラスウェルヘッドコーチ)はマコのことをコービー・ブライアントと言っていました。だから私たちは彼がプレーを続ける限り、彼に合わせています。彼のやりたいプレーに自分たちはついていくだけ。ゲーム3に必ずやってくれると思っています」と変わらぬ信頼を強調していた。

この言葉通り、比江島はどんなにシュートが入らなくてもそれを打ち続け、チームメートは比江島のためにスペースを作り続けた。その結果、最後の最後に比江島はあるべき姿へと戻った。試合後の会見で、比江島はチームメートの献身あってのこその比江島タイムだったと言った。

「本当に苦しい、苦しい試合展開でした。それでも我慢して相手についていきましたが、後半も正直なかなか良いリズムで行けない時もありました。相当迷惑をかけていた中、最後にチームを助けることができてよかったです。それまで、僕のためにサポートしてくれたことに感謝して、期待に応えることができました。全員で勝ち取った優勝だと思います」

そしてブラスウェルヘッドコーチの力もあったと改めて強調した。「最後の3ポイントシュートはケビンが後押ししてくれた。アルマ選手の最後のフリースローのところも、少しプレッシャーをかけてくれたと思います。ケビンが築き上げてくれたスタイルで優勝できたことが嬉しかったので、感謝の気持ちを伝えました」

宇都宮はBリーグ史上初となるレギュラーシーズン最高勝率でのリーグ優勝と、文字通りの最強チームとなった。そして、比江島が唯一無二の決定力を誇るBリーグ随一のエースであることを改めて証明したファイナルとなった。