スカウティング・レポート『渡邊雄太』(後編)2018年のNBAドラフトで指名されるために、この1年でやるべきこと

2017/04/19
NBA&海外
3177

構成=鈴木健一郎 写真=Getty Images

ジョージ・ワシントン大の先発ガードとして活躍する渡邊雄太。『NCAA1部』で一定の結果を残している彼が最終学年を迎え、次のステップを考えるにあたり、最高の舞台であるNBAからどんな評価をされているのかは気になるところ。NBAのスカウティング事情に精通する人物に、ジョージ・ワシントン大の今シーズン最後の5試合をフルゲームで見てもらい、NBAで活躍できる可能性を持つ素材なのかどうか分析してもらった。(前編はこちら

現時点での渡邊雄太を『NBAレベル』で見た場合の評価は?

『前編』で見てきたYutaのストロングポイントとウィークポイントをまとめます。

[ストロングポイント]
・206cmのサイズにしては、ドライブでのスピードやクイックネスがある。
・左利き。
・シュートの調子に波はあるが、206cmのサイズにしては得点能力・スキルが高い。
・パスのスキルが高い。

[ウィークポイント]
・89kgという体重とフィジカルの弱さ
・ディフェンス(これは体重とフィジカルの弱点に起因するもの)
・波のあるシュート力(『手打ち』になっていることが原因だが、これは改善が可能)

あくまで現時点での評価となりますが、「質の良いウェイト増とフィジカル強化により、NBAドラフトのチャンスはある」と言えます。

NBAドラフトで指名されるために渡邊がやるべきこと

最終的に「2018年NBAドラフトにかかる可能性がどれだけあるのか」という点が日本のNBAファンにとっての関心でしょう。一言で説明するのはとても難しいですが、質の高いウェイト増、つまりは筋肉を適切に増やして、フィジカルの課題を改善することを前提とすれば、ドラフトにかかるチャンスはあります。

206cmという身長でこれだけのオフェンススキル(ドライブ、シュート、パススキル)を持つ選手は我々の目から見ても非常に魅力的です。ただし、身体を強くするのは必須条件でしょう。

NBAはレギュラーシーズン82試合。強靭な体を持ったアスリートたちとの連戦、さらには移動スケジュールなども含めると過酷を極めるリーグです。大学の試合と比べて、NBAはよりスピーディーでフィジカルなゲームが展開されます。よほど強力な身体を持たない限りは戦い抜くことができません。

NBAのドラフトにあたり、大学時代の実績だけでなく、年齢を含む将来性、身体の強さ、ウィングスパンを含む体型、ジャンプ力や走力を含む身体能力など、事細かに選手のデータ測定が行われます。『心・技・体』のすべてを総合的に見て、チームにとって『価値のある選手』かどうかが判断されるのです。チームのヘッドコーチからGM、スカウト陣など、NBAのチームのフロント陣をすべて納得させられないとドラフト指名は得られません。いくら良い特徴を持っていても、明らかな弱点を抱えたままだとしたら、指名は難しいと言わざるを得ません。

体重増加についてですが、これはやみくもに身体を大きくすることではありません。また、ボディビルダーのような体を作ることも意図していません。適切なプログラム管理の下でトレーニングを行えば、バスケットボールに必要な良質の筋肉を効果的につけられるはずです。クイックネスやジャンプ力などをさらに伸ばし、体の強度も上げられます。Yutaは先天的に細身の体形なのかもしれませんが、正しいトレーニングを行い「がっちり」とした体を手に入れることはもちろん可能です。

A10カンファレンスは十分競技力の高いカンファレンス

今年(2017年)のドラフトはここ数年で最大の豊作と目されています。現時点で、どの選手が2017年のドラフトに手を上げるか分かっていません。今年のドラフトを回避した選手は来年のドラフトに回るため、現時点で来年のドラフトの動向を読むことはできません。

そもそもNBAドラフトは、Yutaのような大学で4年間プレーした選手だけではなく、高校卒業から1年経った選手や海外からなど、さまざまな経歴の選手がドラフト指名にエントリーします。Yutaと競合になるのは、大学4年生のみならず、アーリーエントリーする大学生やインターナショナルの有望選手なども含まれるのです。

特に、インターナショナルに関しては2016年のドラフトで全体60人中26名が選ばれました。ライバルの数は少なくありません。ドラフト直前までどの選手が最終的にエントリーするのか判断するのは難しく、たくさんのシナリオが考えられるため、選手のみならずNBAのスカウト陣は常に頭を悩ませているのが実情です。

このようにNBAドラフトとは、想像を超える競争の中で指名が行われるわけですが、206cmというサイズで、これだけの能力やスキルがあり、A10という有力なカンファレンスでしっかりとした実績のあるYuta選手に対し、スカウトが注目していることは間違いありません。

ジョージ・ワシントン大は確かにここ3年間NCAAトーナメントに出場していませんが、NCAAトーナメントに出場するかどうかよりも、どちらかというとタフなカンファレンスにいるかどうか(=競技レベルが高いかどうか)の方が重要です。A10カンファレンスは十分競技力の高いカンファレンスだと言えます。

また、仮にNBAのドラフトにかからなかったとしても、それでNBAへの道が閉ざされるわけではありません。ドラフトにかからなくても、その後にトレーニングキャンプに呼ばれて通年契約に結びついたり、NBAチーム保有ながらDリーグ(2017年からはGリーグへと名称変更)のチーム所属となるトゥー・ウェイ契約(2-Way Contract:詳細はここでは割愛)を結んだり、あるいは通常のDリーグ契約を締結して、NBAへの道を残す方法もあります。

繰り返しになりますが、今からどれだけ体重を増やし身体を強くできるかどうかがYutaにとって最大の鍵になります。