重圧を感じずにプレーできたのは「娘がいたから」
現地4月29日、ナゲッツはクリッパーズとの第5戦を131-115で制した。試合開始から約5分で2桁のリードを奪うと、その後も点差を保って終盤へ。第4クォーターに入るとリードを最大22点まで広げ、クラッチタイムに入る前に勝負を決めた。
ニコラ・ヨキッチはこの試合でもトリプル・ダブルを記録したものの、フィールドゴール13本中4本成功の13得点とシュートタッチは良くなかった。131得点を奪うオフェンスをリードしたのは、ジャマール・マレーだ。
マレーは当たり始めたら止まらない爆発力が持ち味で、その怖さはクリッパーズはよく知っている。『バブル』の2019-20シーズン、3勝1敗から連敗して『GAME7』でマレーの40得点に沈められたのは、カワイ・レナード体制1年目のこと。プレーオフでのナゲッツとの対戦はその時以来で、それからマレーは膝に大ケガを負って2021-22シーズンを全休し、翌シーズンにNBA優勝を果たしたものの、膝の様子を見ながらのプレーが続いて本来の得点力を発揮できずにいた。
そのマレーがこの試合で久々の爆発を見せる。コートのどこから放っても魔法のようにシュートが決まり、フィールドゴール26本中17本成功の43得点を記録。時間切れで取り消されはしたが、第2クォーターの最後に放ったダブルクラッチからの3ポイントシュートでスタンドをどよめかせるなど、エンタテインメントの面でもインパクトを残した。
ヨキッチは不発だったが、ヨキッチが個人で攻めるシーンが少なく、代わりにマレーが得点を引っ張る展開になった時こそ、ナゲッツは強い。優勝した時のプレーオフで、ナゲッツはその形で快進撃を続けた。その形が戻ってきたのは朗報だ。逆にクリッパーズとすれば、ヨキッチを抑えたにもかかわらず(ジェームズ・ハーデンにヨキッチのマークを託すという『奇策』が当たった)、これまで100点前後に抑えてきたナゲッツに131得点を奪われ、しかもマレーの爆発力が再び脅威となったのだから、かなり厳しい状況と言える。
そのマレーはこう語る。「僕らはただ一生懸命に、身体を張って、ペースを上げて、自信を持ってプレーしている。多くの会話があり、やるべきバスケを共有している。チームとして、全員が役割を果たして勝った試合だった」
「感情が入り混じり、興奮や緊張感が絡み合う」
膝の大ケガを経験し、それ以前のパフォーマンスを取り戻せないことで批判されることも多かった。今シーズンも山あり谷ありで、レギュラーシーズン残り数試合というところでマイケル・マローンが解任された時もマレーに批判の声が上がった。それでも彼は重圧を感じていないかのように、楽しそうにプレーしている。シュートを決めるたびにリズムを高め、笑顔でプレーした。
マレー曰く、これはホームアリーナに応援に来ている娘のおかげだ。「家族が来てくれると気分が上がる。娘がいたから試合前のルーティーンがいつも通りいかなかったけど、それがリラックスになるんだ。つまり、ティップオフの瞬間まで、バスケのことを考えていなかった。おかげで試合が始まったら自由にプレーできた。これは娘に感謝しなければいけないね」
そして彼は、NBAのプレーオフという最高のレベルで戦うことの楽しさを「挑戦に立ち向かうこと」という言葉で説明した。「個人競技はすべて一人で解決しなきゃいけないけど、バスケは同じ目標に向かっている仲間がいて、チームとしてまとまったり、誰かが誰かを引き上げたりする。長いシーズンの中で様々な課題が出てきて、いろんな感情が入り混じって、興奮や緊張感といったすべてが絡み合う。それがバスケの楽しさであり、選手として一番やり甲斐を感じる瞬間だと思う」
「だから僕はただ身を投じて、すべてを楽しもうとする。それは僕だけじゃなく、全員がリラックスして、気持ちを入れ替えてプレーする。それがバスケをもっと楽しくするし、勝利をもっと良いものにしてくれる。観客も同じだよね。黙って試合を眺めるだけでいいのに、叫んだり立ち上がったり、得点だけじゃなくリバウンドやルーズボールにも盛り上がる。そのエネルギーが僕らをより頑張らせてくれる。今日がまさにそうだった」