ポール・ジョージ「キャリアで最も厳しいシーズン」
ケガを抱えたセンターと大ベテランの域に入ったフォワード、勝敗を担う経験がまだ浅いガード。セブンティシクサーズの『ビッグ3』はポテンシャルは高くても安定感を欠くのではないかと見られた。悪い予想は的中したが、ここまでだとは想像できなかった。
24勝58敗の東カンファレンス13位。ジョエル・エンビードもポール・ジョージも開幕に間に合わず、3勝14敗と大きく出遅れるうちにタイリース・マクシーも離脱。エンビードは前シーズンにケガをした膝が重傷で、1年を通して苦しみ抜いた末に、先日2度目の手術に踏み切った。ジョージはプレシーズンゲームで膝を痛め、大物フリーエージェントの意地で沈みゆくチームを何とか立て直そうとしたものの、身体がついてこなかった。マクシーもケガが治り切らないまま復帰してはケガをする連続で、キャリア5年目にして最少の52試合にしか出場できなかった。
3人が入れ替わりに戦線離脱するためにケミストリーの熟成は遅々として進まず、それどころか他の選手にもケガが相次いだ。2月以降は5勝30敗と負け続けた。
全日程が終了したタイミングで選手たちが会見に応じた。ポール・ジョージは周囲の期待に応えられなかったことに意気消沈し、「1年を通してケガだらけ。誰かが復帰すれば別の誰かがケガをして、チームはずっと混乱していた」とシーズンを振り返る。
「僕にとってもキャリアで最も厳しいシーズンになった。ケガの原因はこれからじっくり探るつもりだ。普段ならできることができず、フラストレーションも溜まった。この問題は解決しつつあって、そこはポジティブだと言える。もう一つポジティブなのは、様々な問題を抱えながら、投げ出すことなく努力を続けられたことだ」
「コンディションさえ良ければ僕は高いレベルでプレーできる」とジョージは言う。一番ひどい時は痛み止めの注射を打ってプレーを続けていたが、すでに指のケガは完治し、鼠径部と膝の回復も順調だという。「このオフはあらゆることに全力で取り組むつもりだ。最高の準備をして次のシーズンを迎えたい」
「僕らの愛するジョエル・エンビードに戻ってほしい」
指のケガで3月上旬を最後にプレーしていないマクシーも久々に姿を見せた。「みんなに会えなくて寂しかったよ。みんなもそうだろう?」と彼は冗談を言いつつ、「厳しいシーズンだった。チームも僕も苦戦続きだった。みんなが懸命に戦っている時にプレーできないのはつらい。復帰しようと頑張ったけどダメだった」と続けた。
それでも彼は実戦から離れた約1カ月の間に気持ちを切り替え、過去を嘆くのではなく、未来に目を向けている。
「今シーズンの経験で唯一ポジティブなのは、あとは良くなるだけだってこと。僕ら一人ひとりが今シーズンよりマシなシーズンを送れるはずで、僕も含めてこのオフは多くの課題をこなさなきゃならない。僕自身、指のケガで離脱する前は絶好調だった。多くを学び、大きく成長したと感じている。シーズン中に感じたことを書き留めたメモがたくさんあるから、このオフに全部見返して、自分を高めるつもりだ」
マクシーにとって最大の学びは、勝敗の責任を背負う経験をしたことだ。エンビードもジョージも欠場している時期、彼は本当の意味でシクサーズを引っ張る立場になった。精神的な重圧は何倍にも増すし、ディフェンスのマークも今までよりずっと厳しくなる。
「2人がいないとプレッシャーが増し、ひどく重い何かが肩に乗っている気分だった。そんな中で得た学びは、どんな状況であれ落ち着いて日々を過ごすことであり、仲間たちと話すことの重要性だ」
しかし、本当に『あとは良くなるだけ』なのだろうか? チームの顔であるエンビードが来シーズン始動を100%のコンディションで迎えられるかは怪しい。そのエンビードについて、マクシーは率直な思いを明かす。
「ジョエルの膝がどこまで回復するかは僕には分からない。まさに神のみぞ知る、だよ。でも、以前のパフォーマンスを取り戻すために努力している彼を僕は心から信頼している。今シーズンは彼のすごいプレーに期待してボールを渡しても、できないシーンが何度もあった。自分らしくプレーできないことに苦しむ彼を見るのはつらかった。手術が成功し、その後のリハビリも上手くいくことを願っているよ。そして僕らの愛するジョエル・エンビードに戻ってほしい」
マクシーはこんな言葉で失意のシーズンを締めくくった。「この戦いは健康であれば常にチャンスがある。今年はそのチャンスが多くはなかった。それぞれが健康を取り戻し、準備万端でトレーニングキャンプを迎えたい。それが僕の一番の願いだ」