
「何度もケガをして学んだのは引きずらないこと」
ロバート・ウィリアムズ三世はキャリア8年目のシーズンを終えた。セルティックスでプレーした最初の5年間はすべてプレーオフに出場。ほぼローテ外で3試合13分しか出場しなかったルーキーイヤーから、自分自身の成長とともに存在感を高め、4年目の2021-22シーズンには主力の一人としてNBAファイナル進出に貢献した。この年にはNBAオールディフェンシブ・セカンドチームにも選出されている。
しかし、その後のキャリアは伸び悩む。4年目に左膝半月板損傷から無理に復帰したのが祟り、5年目はレギュラーシーズンで35試合にしか出場できず。そしてフロントは、ケガを抱えた彼を放出した。
このトレードによるドリュー・ホリデー獲得が、2023-24シーズンのNBA優勝をもたらしたのだから、フロントの判断は正しかった。だが、ウィリアムズ三世のキャリアは暗転する。ブレイザーズでの1年目は、右膝の靭帯損傷で6試合にしか出場できず。2年目の昨シーズンも左膝の炎症が引かず、20試合にしか出場できなかった。ただでさえ衝突が多いセンターのポジションで、古傷の左膝だけでなく右膝も壊したことで、ウィリアムズ三世のキャリアは危機に瀕した。2022年から始まる4年4800万ドル(約72億円)の契約最終年、彼はまさに『背水の陣』で今シーズンを迎えていた。
開幕時点でもコンディションは万全ではなく、膝の様子を見ながらのプレーを強いられた。「ケガは誰にとっても厳しいものだけど、コートに戻って昔のように動ければ精神的な疲れは消える。何度もケガをして学んだのは引きずらないこと。そうでないと精神的にどんどん落ち込んでしまう。『明日はきっと良くなる』と思って一日一日を過ごすんだ」
ROB THIS WAS ACTUALLY NUTS pic.twitter.com/qKbKGDkEEa
— Portland Trail Blazers (@trailblazers) April 26, 2026
今シーズンのウィリアムズ三世の役回りは、ドノバン・クリンガンに続くセンターの2番手。膝の懸念は常にあり、プレータイム制限が課される中で、2年目のクリンガンをサポートしながら、コートに立つ時間はクリンガンとは違った個性を出してディフェンスを引き締めた。「オフェンスは思い切って勝負するのが大事で、ミスも許容される。でもディフェンスは違う。相手にイージーなチャンスを一つも与えるべきではない。そのマインドセットをチームに植え付けたい」と、シーズン中盤に彼は語っている。
ブレイザーズの今シーズンは、開幕早々にヘッドコーチのチャウンシー・ビラップスが違法ギャンブル容疑で逮捕される波乱の幕開けとなった。それでも代行コーチのティアゴ・スプリッターの下、ディフェンスにプライドを持って戦うチームとして、粘り強く勝ち星を重ねていく。スプリッターは試合ごとに、スタッツには残らない部分で最も奮闘した選手を表彰する仕組みを作った。その常連となったウィリアムズ三世は、ディフェンスとハードワークを武器に戦うチームの姿勢をこう語る。
「ディフェンスはスタッツに残らないことが多いけど、努力でコントロールできる。今このチームでは『どちらが良いディフェンスをしたか』を比べる競争意識があって、『今日はお前よりトゥマニ(カマラ)のほうが頑張っていた』と言われたら、プライドが刺激される。そうしてチーム内で『あいつに負けない』という良い競争が生まれている」
クリンガンはNBAでも屈指のフィジカルと高さを持ち、攻守にパワフルなプレーを見せる。常に膝の機嫌をうかがってプレーを制限されるウィリアムズ三世からすれば、失われた青春をまぶしく眺めるような気分だろうが、彼は自分らしいプレーでチームに貢献した。クリンガンと交代でコートに入ると、フットワークを生かしてペリメーターまで相手を追い掛け、絶妙なタイミングでのヘルプから相手のシュートをブロックする。若くてパワフルなクリンガンと、バスケIQと経験を生かすウィリアムズ三世、タイプの異なる2人のセンターを使い分ける起用法が、ブレイザーズの堅守の軸となった。

クリンガン「彼が隣で励ましてくれる効果は絶大」
2年目を飛躍のシーズンとしたクリンガンは、『兄貴分』のウィリアムズ三世に心酔している。「プレーは言うまでもないけど、ロッカールームでの影響力がすごいんだ。常に明るく、的確なアドバイスをくれて、僕たちを鼓舞する。子供の頃はセルティックスのファンで、彼を見て育った僕にとって、彼が隣で励ましてくれる効果は絶大なんだ」
さして補強もしていない再建チームが開幕早々にヘッドコーチを失ったにもかかわらず、42勝40敗と勝率5割を超え、プレーインでサンズに競り勝った。スパーズ相手に1勝4敗でファーストラウンド敗退となったが、プレーオフ進出の時点で快挙と言っていい。
ウィリアムズ三世はレギュラーシーズンで59試合、3年ぶりのプレーオフで5試合に出場。スタッツの何倍もインパクトある活躍をした『復活のシーズン』となった。
シーズン最後の会見で彼は「何よりもまず、シーズンを通して健康でいられたことに感謝したい。開幕からの紆余曲折、プレーイン、スパーズとの戦い。みんなを誇りに思う」と、晴れやかな表情で語った。「どこまでできるか見てみよう、からスタートしてここまで来れた。このチームのトレーナー陣は本当に良い仕事をしてくれたし、僕自身も多くの困難に耐えて頑張ったと思う」
今オフに彼はフリーエージェントとなる。控えのセンターとしてはNBA最強の選手である彼には、多くのオファーが舞い込むだろう。「すべてはビジネスだ。少し落ち着いたら話し合いを始めるよ。お金ももちろん大事だけど、環境やコーチ、すべての条件を確認したいから、最初のオファーに飛び付いたりはしない」と言うが、残留を願う地元記者へ「でも、ここのトレーナー陣が大好きなのは間違いない。このチームメートと一緒にいたい、自分の家だと感じられるようになったポートランドを離れたくない気持ちもある」とリップサービスも忘れなかった。
もっとも、交渉はエージェント任せ。彼にはオフにやるべきことがある。「健康な状態でシーズンを終えることが大きな目標だった。オフにリハビリじゃなく強度の高いワークアウトができるのは何年ぶりだろう? ケガに強い身体作りをして、来シーズンはもっと自由に、制限が少ない中で思い切りプレーしたいんだ」
ウィリアムズ三世の活躍は目立たなかったかもしれないが、ブレイザーズ躍進に不可欠だった。多くのケガに見舞われたが、まだ28歳。彼は自分の全盛期がまだこの先にあると信じて、前へと進み続ける。