群馬相手に接戦を繰り広げるも連敗
「良いところは覚えていないです。自分がやられたところしか覚えていないので……」
仙台89ERSの井上宗一郎は、連敗で終えた群馬クレインサンダーズとのシーズン最終節後にそう振り返った。今節、仙台はインサイドの外国籍選手、ブーバカー・トゥーレとネイサン・ブースが欠場。日本人ビッグマンの井上にかかる期待は大きかった。
第1戦は今シーズン初先発で23分32秒、第2戦は32分21秒と、いずれもシーズン最長出場時間を更新してチームを支えた。第1戦が82-83、第2戦はオーバータイムまでもつれたものの86-87と接戦。井上は両試合とも拮抗した最終盤までコートに立ち続け、奮闘を見せていた。
両日1点差で決着した試合だったが、井上個人の得失点差を表す「+/-」は第1戦が+8、第2戦は+7。井上がコートに立っていた時間帯はリードをしており、その奮闘は評価に値するものだった。群馬もトレイ・ジョーンズとヨハネス・ティーマンを欠いていたとはいえ、ケリー・ブラックシアー・ジュニアとエージェー・エドゥの両ビッグマンは出場。井上は多くの時間で、彼らとのマッチアップを任され、完全に抑えることはできずとも、身体を張ったディフェンスやリバウンドでチームを救った。井上の奮闘がなければワンサイドゲームになっていただろうことは想像に難くない。
それでも、井上の胸に残るのは悔しさだ。自身が長くコートに立った上で、チームを勝利に導けなかった責任を強く感じている。
第1戦の終了間際、ジャレット・カルバーが逆転をかけて放ったシュートはリングに弾かれた。井上はあきらめることなくオフェンスリバウンドに食らいつき、ティップインを狙ったがゴールには届かなかった。守り切れば勝利となる第2戦の終了間際も、スイッチして対峙した中村拓人に決勝点を許してしまった。いずれも勝敗が決した局面だった。
歓喜に沸く群馬のホームアリーナで、井上は肩を落とし、天を仰いだ。それは残酷なコントラストだった。「このメンバーでやれるのが最後なので、勝ちたい思いは強かったですが、結果には繋がりませんでした」と井上は言う。勝負に『たられば』はないが、もしあの場面でシュートが入っていれば、もし守れていれば、その表情は明るかったはずだ。

「最後の相手のフリースローはブースターさんが落とさせてくれた」
仙台は今シーズンを35勝25敗、東地区6位で終えた。最終的にチャンピオンシップ進出には届かなかったものの、シーズン終盤までその可能性を残した。昨シーズンは11勝49敗で地区最下位に沈んだことを踏まえると大きな躍進を遂げた。
今シーズンから加入した井上は平均8分45秒の出場だが、シーズンを通じて安定的に出場機会を得るに至らなかった。日本人ビッグマンは外国籍選手のバックアップに回ることが多く、リーグ内でも安定的な出場機会を得ている選手は多くないが、井上はそのような状況に甘んじることなく厳しい自己評価を下した。
「今シーズンの躍進はヘッドコーチや中心を担う外国籍選手、船生誠也さんのおかげだと思います。自分はベンチから出てきても重要な役割が担えなかった。それがプレータイムが少なかった要因だと思います」
ここまで出場機会が限られていたからこそ、井上にとって今節はチャンスでもあった。しかし、その中で持ち味を発揮し切れなかったことが、悔しさをより一層強くしている。
「せっかくJC(カルバー)やセルジオ(・エル ダーウィッチ)がディフェンスを引き付けてくれたのに、自分がシュートを外してしまい台なしにしてしまいました」と言うように、第2戦では7本の3ポイントシュートを放ったがいずれも成功しなかった。
前述のような奮闘に加え、第2戦の終盤のリバウンド獲得からのフリースロー成功など勝敗に直結するような好プレーを見せたことを考えれば、3ポイントシュートの不調だけを切り取るのはフェアではない。ただ井上自身は「シュートが入らなかったです。今シーズンはキャリアワースト(成功率26.8%)だったので、そこは改善しなければ」と3ポイントシュートがシーズンを通じての課題だったと話し、続けた。
「アウェーまで駆けつけてくれたファンの皆さんもたくさんいましたし、最後の相手のフリースローはブースターさんが落とさせてくれたと思います。ただ、その気持ちに応えられなかったのは、本当に申し訳ないです」
最後まで悔しさをにじませていた井上。しかし、この経験がさらなる成長の原動力となるはずだ。5月1日に発表された日本代表候補のリストにも井上は名を連ねた。納得がいかないシーズンだったかもしれないが、キャリアはまだ道なかば。悔しさを力に変えて、さらに大きな存在へと成長していく。
