ジャレット・アレン

『GAME7』で22得点15リバウンド、精神的な弱さを払拭

キャバリアーズは3カ月前、ジェームズ・ハーデン獲得のチャンスに飛び付いた。ダリアス・ガーランドとドノバン・ミッチェルを軸に進めてきたチーム作りは方針転換となり、レギュラーシーズン後半戦でハーデンをプレーメーカーとするバスケを推し進めてきたが、いまだ最善の戦い方を試行錯誤する過程にある。

本来であればラプターズとのシリーズはもっと簡単に勝つべきだったが、彼らは苦戦を良いレッスンだと受け止めている。ハーデンとミッチェルのワンツーパンチは強力だが、それだけでプレーオフを勝ち抜くことはできない。エバン・モーブリーとジャレット・アレンのインサイドを強調する時間帯も、プレーメークをデニス・シュルーダーに託す時間帯も必要となる。『GAME7』までもつれたシリーズは、そんな学びを得られた7試合だった。

エースのミッチェルは、「苦しい思いは学びに繋がる」と言う。「ファーストラウンドを戦う中で、普段はほとんど意見を言わないジャレットが声を出した。あれはチームにとって大事な瞬間だったと思う。デニスもジェームズも意見を言った。お互いに責任を問うような激しい言葉のやり取りもあった。4戦か5戦で決着していたら、そんなことは起きない。でも、悪いことじゃないんだ。難しい局面に直面することで初めて引き出せる力もある。それが昨シーズンとの違いになると思う」

昨シーズンとの違い──ミッチェルの考えは明白だ。1年前のプレーオフ、ファーストラウンドではヒートをスウィープで撃破したが、続くラウンドではペイサーズの高速バスケに飲み込まれて呆気なく敗退した。

114-102で勝利した『GAME7』で、アレンは22得点19リバウンドとゴール下を支配した。ミッチェルの言う「ジャレットが声を出した」は、第5戦のハーフタイムの出来事で、「今やるしかないんだ。すべての力を出しきるぞ」と彼はチームメートに檄を飛ばした。

「王手を掛けられて第6戦のトロントに行きたくなかったから、みんなにもう一歩の努力が必要だと呼び掛けた」とアレンは説明する。

彼自身もこのシリーズで苦しんでいた。敗れた第3戦では4リバウンド、第4戦では3得点と、攻守のパフォーマンスが噛み合わず、チームメートを鼓舞することで自分にも気合いを入れ、変化のきっかけにしようとした。

この『GAME7』でもサム・メリルが声を上げたとアレンは明かす。「サムが『このシリーズでは第2クォーターの締めくくりがずっと悪い』と指摘したんだ。その言葉を全員が真正面から受け止め、守備とリバウンドで集中した。そこから攻めのリズムも良くなった」

ハーフタイムを挟んだ第3クォーター、アレンは14得点10リバウンドとすさまじい働きを見せる。フィールドゴール7本中5本成功に加えてフリースローも8本得て、1アシスト1スティール1ブロックも記録。アレンが引っ張ったこのクォーターを38-19と圧倒したことが『GAME7』の勝敗を決めたのだから、クリーブランドのファンが熱狂するのも当然だ。それでも観客席からMVPコールが起きると、アレンは一緒に会見に出たミッチェルに「君に向けたMVPコールだと思ったよ」と笑った。

記者から「キャリア最高の試合になったのでは?』と質問されて、アレンはミッチェルに「ポートランドで40点取った時(今年2月)とどっちかな?」と確認したが、ミッチェルは苦笑しながら「今日は『GAME7』だ。全然価値が違うよ」と返した。

「僕にとって初めての『GAME7』だったけど、最高に楽しめた。自宅からアリーナまで運転している時から独特の感覚があった。僕も観客も試合に入り込んでいて、最高の経験ができた」と語るアレンは、プレーオフの舞台に臆するような部分は全くない。

再建期のキャブズでプレーオフに進んだ2022-23シーズン、マディソン・スクエア・ガーデンでニックスに敗れた時にアレンは「僕にとっては照明がまぶしすぎた」と語った。これは単純に会場が明るかったのではなく、プレーオフの大舞台に圧倒されたという意味なのだが、正直すぎる言葉は世間には弱さと受け止められ、それから彼は勝負弱い選手と見なされるようになった。

だが、今の彼はそんなことを気にしてはいない。「一度貼られたレッテルはそう簡単には剥がせないけど、過去の評価を変えようと思ってプレーすると自分の強みが出せなくなる。僕は常に前だけを見るよ。過去に何があったかに関係なく、今できるベストを尽くすだけだ」