トレイ・ヤング

「彼が味方を信頼したことでチームが動き始めた」

キャバリアーズはここまで17勝1敗で、唯一黒星を付けたのは王者セルティックスで、ボストンでの試合だった。勝率5割を切るホークスが、10戦全勝のホームでキャブズを倒すのは大方の予想を覆す結果だ。試合開始から2分で10-0とキャブズがリードしたが、そこからはホークスがしぶとく戦い、第3クォーター以降はほとんど差の付かない大接戦へと持ち込み、最後に突き放して135-124の勝利を収めた。

戦術家クイン・スナイダーの作戦はシンプルだった。エバン・モーブリーとジャレット・アレンという優れたショットブロッカーがいるインサイドでは勝負せずに3ポイントシュートを狙う。ただし彼らの守るペイントエリアにも積極的に入り、彼らを引きはがす動きを繰り返す。

0-10という最悪のスタートがホークスには意外な助けになったとスナイダーは言う。「序盤のビハインドで選手たちが細かいところにまで集中するようになった。どんな試合であれアジャストは大事だが、試合が始まってすぐにアジャストするしかない状況になった。本当は追い込まれてスイッチが入るようではダメで、習慣としてできるようにならなければいけないが、先はまだまだ長いよ」

そしてこのチームのエース、トレイ・ヤングもスロースタートとなった。前半はフィールドゴール9本中2本成功と効率が悪く、8得点8アシスト。それが後半になってアジャストし、オフェンスを引っ張るようになった。

「トレイのアジャストは素晴らしかった」とスナイダーは言う。「彼の不調を他でカバーするのは簡単ではない。だが彼はアグレッシブであり続け、なおかつ自分一人で解決するのではなく、ボールを託すことでチームを巻き込んだ。彼が味方を信頼したことでチームが動き始めた」

キャリアハイの22アシストを記録したトレイはこう語る。「シュートが上手く決まらなかったから、調子が良かったわけじゃない。でも、僕が決めなくても仲間が決めれば同じだ。みんなが得意な場所で打てるようにボールを回した。それがアシストのコツだよ」

それでも、混戦からホークスが抜け出す決定打となる一発は、やはりトレイの手から放たれた。ホークス7点リードの残り2分、トレイはタイ・ジェロームにスティールを許し、そのまま速攻からの3ポイントシュートを決められてしまう。直後のプレーでも、同じようなシチュエーションでジェロームがプレッシャーを掛ける。手を引っ掛けられてボールを失いかけるも、何とか踏み留まったトレイは、オフェンスを組み立て直すかと思いきやロゴスリーを狙ってこれを決めきった。

残り1分20秒で129-122とリードを広げ、ホークスに勝利を引き寄せる一発をトレイはこう振り返る。「その前にスティールされて、接触があったのにファウルをもらえなかったと感じた。試合終盤はプレーが激しさを増すものだけど、それで3ポイントシュートを決められたら腹が立つよ。タイムアウト明けの次の攻撃でも同じようなことが起きたけど、2回連続でチームを失望させるわけにはいかない。ショットクロックは10秒あったから、やれると思ったんだ」

終盤はハイペースな点の取り合いで、ホークスもドノバン・ミッチェルを止められずにいただけに、オフェンスが失速していたら逆転されていたかもしれない。だがトレイは最後まで集中を保った。ロゴスリーを決めた後のポゼッション、相手ディフェンスがトレイに殺到する状況をよく見て取った彼は、完璧なパスでオニエカ・オコングのイージーレイアップをアシストした。

試合後、トレイの22アシストに沸き立つ報道陣をジェイレン・ジョンソンは不思議そうな表情で眺めていた。「アシストでリーグトップの選手なんだ。なんで驚いてるんだ?」