ラメロ・ボール

最大18点ビハインドから逆襲「ここを乗り越えるんだ」

ラメロ・ボールは開幕のスタートラインナップに名を連ねたが、ジョシュ・グリーンとマーク・ウィリアムズはケガで欠場。ブランドン・ミラーは記念すべきシーズン最初の得点を、SNSで拡散された豪快なダンクで記録したが、第2クォーター途中にベンチへと下がった。今シーズンもホーネッツは健康で戦えそうにない……という気配が漂う中、グリーンの代役として先発したコディ・マーティンは仲間たちを呼び寄せ、ハドルを組んでこう言った。

「分かってるか。昨シーズンはここで踏ん張れなかった。ここを乗り越えるんだ」

新たな指揮官チャールズ・リーは、攻守ともに良い準備を整えて開幕を迎えられると語っていた。「私がここに来た時からチームの雰囲気は変わっていない。ただ毎日、少しずつ成長している。攻撃でも守備でも、良い習慣をたくさん身に着けたと思う。準備ができていると感じられるからこそ、開幕を前にしても落ち着いていられる。もちろん、シーズンが進むにつれて攻撃も守備も多くの要素を取り入れて変わっていくが、ここまで選手もスタッフも一生懸命働いて良い準備をしてくれた」

指揮官が言うように、ホーネッツの選手たちは準備してきたバスケをロケッツ相手に披露した。強いチームが必ずそうであるように、ディフェンスを引き締め、相手の攻撃のリズムを狂わせるところから試合の主導権を奪い取る。強度の高い守備でチームを引っ張ったのはマーティンであり、シックスマンのトレ・マンであり、そして意外にもラメロ・ボールだった。

ラメロは天才肌のプレーメーカーで、なおかつケガも多いためディフェンスで無理をして強度の高いプレーをしない印象があるが、「ここを乗り越えるんだ」の意志を体現した。マーティンがハドルで話した言葉を試合後に明かしたマイルズ・ブリッジズは、その効果を称賛するとともに、ラメロの意欲的な守備も称えた。

「メロ(ラメロ)のディフェンスは良くなっただろう? 守備ですごく注意深くなった。コーチが彼の最高のディフェンス能力を引き出しているんだ。あいつはすごいシーズンを送るだろう。そして僕らも、メロがディフェンスしているのにディフェンスしないわけにはいかない」

ディフェンスが良ければ良いオフェンスに繋がり、好守のリズムが良くなっていく。ラメロは『意外』にもディフェンスで奮闘し、オフェンスでは『当然』活躍した。ホーネッツはタイムシェアを徹底していたが、ラメロだけは38分出場と試合を任され、34得点8リバウンド11アシストを記録。ディフェンスでハードワークをした上で、トリプル・ダブルに近い結果を残した。

シーソーゲームとなった第4クォーター残り2分、ラメロは不意を突くディープスリーを放つ。それまで執拗に彼に食らい付いていたディロン・ブルックスがボールウォッチャーになったその瞬間、ラメロはリムへと一直線、ボードに当たって跳ね返ったリバウンドをそのまま押し込んで100-98と勝ち越しの得点を挙げた。続くポゼッションでは味方が繋いだセカンドチャンスを逃さずに3ポイントシュートを決めてロケッツを突き放した。

試合後のラメロは上機嫌だったが、饒舌ではなかった。長いケガを乗り越えて復帰したことも、「あまり意識していない。ただここにいられるだけで幸せなんだ」と言う。この日、彼だけでなく兄のラメロも1013日ぶりに復帰を果たしたが、それについてもラメロは穏やかな笑顔で「僕らはバスケをして育った。それを仕事にできるのは素晴らしいこと」と語るに留めた。

「とにかくコートに出て戦うことだけを考える。今回のように良いプレーをして、また勝てるように頑張るよ」

ロンゾほど長期の欠場ではなくとも、ラメロも1月末以来9カ月ぶりの実戦だった。彼は今、NBAの舞台で再びレベルの高いバスケをプレーする喜びを噛み締めている。