脇真大

「最初のイタリア遠征の時よりも良い状況で、チームは前進しています」

今オフ、琉球ゴールデンキングスは過去3年連続ファイナル進出に貢献してきた複数の主力選手たちがチームを去った。岸本隆一、ジャック・クーリーとコアメンバーは健在だが、新たなサイクルへと突入する。そんな中、新たな中心選手として飛躍が期待されるのがルーキーの脇真大だ。

昨シーズンの12月中旬、脇はMVPを受賞する活躍で白鷗大をインカレ制覇に導いた後、琉球に特別指定選手として加入。しかし、徐々にプレータイムを増やしつつあった2月に左肩脱臼の故障を負い、わずか7試合出場と消化不良な結末となった。それでも、故障から回復した今オフはここまでプレシーズンで先発起用も多く安定した出場機会を得ている。まだまだ荒削りな面もあるが、持ち味であるフィジカルを生かした力強いドライブ、激しいプレッシャーをかけるディフェンスで存在感を示しており、シーズンに入っても王座奪還を目指すチームの主力の一員としての活躍が期待されている。

チームの仕上がりについて聞くと、脇はこのように手応えを語る。「プレシーズンを7試合やりましたが、最初のイタリア遠征の時よりも良い状況で、チームは前進しています。ただ、まだ噛み合っていない部分も多少はあるので、もう少しコミュニケーションを取っていければ去年よりも良いチームができると思います」

ここまでの起用法を見ると、昨シーズンまで攻守の中心を担っていた今村佳太の穴を埋める存在として、脇には大きな期待が寄せられている。「最初はプレッシャーをとても感じていました」と振り返る脇だが、試行錯誤の末に自身が担うべき役割が見えてきている。

「だからといってやらない訳にはいかないですし、気合を入れてプレシーズンに臨んでいました。チームが勝つために、僕には何ができるのかをずっと探しながらプレシーズンを戦ってきて、何となくですが自分がやるべきことが明確になってきました。それをしっかりとやっていけば自ずと結果に繋がりますし、チームメート、スタッフ、そしてファンの皆さんの期待に応えられるんじゃないかと思っています」

脇真大

「大学時代の結果はうれしかったですけど、今の自分はそれを表に出す必要はない」

冒頭で紹介したように、大学時代の脇はコンタクトの強さを生かしたアタックを大きな武器としていた。特にB1は高さ、フィジカルも大学とは段違いの外国籍ビッグマンがゴール下で待ち構えているが、それでも引き続きドライブを強みにしていきたいと言う。

「最初に特別指定で入ってきた時はプロの壁を感じましたけど、練習を重ねていくことで大丈夫になってきています。フィジカルに関しては苦手ではないので、そこは問題ないと思っています。ただ、外国籍選手たちの高さはすごいので、ドライブのフィッシュに関するスキルをいろいろと磨いていかないといけないです。今は佐々(宜央アソシエイトヘッドコーチ)さんからもいろいろと教えてもらっています。(ドライブからの得点は)武器の一つにしたいです」

今シーズンも大学で活躍した多くの有望株たちが、プロバスケットボール選手として新たなスタートを切る。その中でも脇は大学1年時から先発を勝ち取り、2年時から中心選手になると2年時、4年時に優勝、3年時は準優勝と、群を抜いた実績を残してきた。

それでも本人は「(インカレで)優勝2回、準優勝とずっと勝ってきました。大学時代の結果はうれしかったですけど、今の自分はそれを表に出す必要はないと思っています。それはそれで、プロでは新しい自分のスタートです。今はBリーグでどんどん結果を残していきたいだけです」と、前だけを見ている。

ただ、大学時代に凌ぎを削った同世代の選手たちにはプロに入っても結果で遅れをとる気はなく、だからこそ新人賞への意欲を見せる。「チームが勝つことが第一です。それにプラスして自分が賞を取れるのが1番良いことだと思っているので、新人賞は狙っていきたいです」

脇は即戦力として大きな注目を浴びながらプロバスケ選手としてのスタートを切る。これまでの実戦でつかんだ手応えに加え、シーズン序盤はより積極的にプレーすることを意識している。「プレシーズンでは、3ポイントシュートをどんどん打っていくように言われていました。どんどん打って決め切ることができれば自信になります。3ポイントを打てることができれば、ディフェンスも前に出てきてドライブに行ける場面も増えます。その意味でも積極的に狙っていきたいです」

複数の主力の移籍は大きなピンチだが、同時に新たな力が台頭するチャンスでもある。現状維持は後退というスタンスで新陳代謝を恐れないチーム作りを行なってきた琉球の哲学を体現する存在として、脇こそが今シーズンの琉球の浮沈の鍵を握る選手となる。