文=丸山素行 写真=丸山素行、B.LEAGUE

『地域貢献活動および地域活性化に資する活動についての基本協定』を横浜市都筑区と締結した横浜ビー・コルセアーズ。今回取材に応じてくれたのは、その記者発表に出席した横浜のエース、川村卓也だ。ホームタウンに関する会見の後、『勝負の世界』である試合とはまた違った機会ということで、Bリーグで活躍する『顔』の一人である川村の『コート外の姿』について話してもらった。

『負けないでよ』という子供の言葉はグサッと来ます

長いシーズンも終盤戦に突入しようとしている。練習、移動、試合と過密日程のBリーグにおいて休養は選手にとって大切な要素の一つだ。まずは川村に「一番のリフレッシュ方法は何か」と質問すると「子供ですね」と即答が返ってきた。

「僕はオンオフの切り替えを大切にしています。コートを出れば一つの家庭のお父さんであり、大黒柱でもあるので。仕事がうまくいかない時に笑顔をくれたり、バスケットのことから離させてくれる存在というのは家族であり子供です。心と頭の切り替えに貢献してくれています」

オフになると家族で車を走らせて、子供が遊べるようなところに連れて行ったり、買い物に出掛けたりする『良きパパ』だと言う川村。コートで戦う姿しか目にすることのない我々には意外かもしれないが、誰にでもオフの姿はある。川村にとって子供は「心のパートナーですね。今日も一緒に遊んでから来ました」だそうだ。

「基本、子供好きなんです」という川村は、自分の子供はもちろん、会場で声を掛けてくる子供もとても大切にしている。ただ「子供は試合結果に素直なので、『負けないでよ』という言葉はグサッと来ます。子供でも負けるのは嫌なんだという、その素直な気持ちが伝わってくるので」と言う。

『三十路』に突入した川村は、娘と息子を持つ2児の父。「2歳の息子が将来、僕がバスケットをやっている姿を覚えているかどうかは分からないですが、ナイキやジョーダンのロゴを見て『パパ』と言うぐらいなので、きっと理解しています。負けた気持ちで家に帰るより、勝って『応援ありがとう』という気持ちで過ごせるのが一番なので、家族のためにもブースターのためにも、やっぱりチームが勝つことが活力剤だと思います」

「お酒で楽しむという選択肢を自分から選ぶことはない」

ファンにとって選手の私服を見たいと思うのは当然の心理だろう。おしゃれなイメージの川村にファッションについて聞くと「だいぶ気を遣っています」と話してくれた。「自分でも選ぶし、嫁さんが選ぶことも多々あります。嫁さんが良い悪いズバズバ言ってくれます。高いものを着る人間ではないのでファストファッションで時期に合わせて流行りを取り入れつつ、ワンシーズンでいろいろなものを着たいタイプです」

横浜っぽい『ちょいワル』なパブリックイメージのある川村だが、子煩悩に続いて「お酒は飲まないです」と意外な(?)答え。「大人の付き合いの時間は飲みますけど、『今日飲みてえ』ってことはないですね。お酒で楽しむという選択肢を自分から選ぶことはないです」とのこと。

そんな川村がプライベートでも仲が良いチームメートは竹田謙なんだとか。「竹さんは子供の年齢が同じぐらいなので、日曜の試合終わりに一緒にご飯を食べに行って、子供たちを遊ばせつつ、バスケから育児までいろんな話をします」

一週間のルーティーンとしては、シーズン中の休みは基本的に月曜だけで、火水木金は練習。火曜と金曜はウェイトトレーニングに通っている。2年前にケガをしたヒザについては「かなり敏感になっています」とのこと。「横浜に来て理学療法士さんが敏腕なので、時間を取ってもらって、火曜日は練習前に身体の状態をチェックしています」と言う。

「当初描いていた『未来予想図』とは違っています」

第23節を終えて横浜は14勝29敗、全体14位とB1残留に向け気の抜けない戦いが続いている。特に今は細谷将司、ジェイソン・ウォッシュバーンと主力選手のケガが相次ぐ状況であり、「それがビーコルらしさを出せていない一番の要因」と認めながらも、「勝てないながらも、今いるメンバーでダメな部分を解決しようとする姿勢をコートで表現できるようになってきています。もがきながらも自分たちの道を切り開こうと徐々に進んでいます。顔を下げてる選手は一人もいません」と川村は言う。

「ケガ人を理由に敗戦を認めることは嫌なので、彼らが帰って来た時はあくまでもプラスアルファになれるような道を現段階で明確に作っていけば、下位から抜け出せると思って取り組んでいます」

チームを勝たせるために横浜にやって来た川村は、残留争いを演じる今の状況は予想外だったと打ち明けた。「勝率に関しては予想だにしていない展開です。イーブンあたりでプレーオフに行けるか行けないか、そういうメンバーでスタートしたつもりだったので。ビーコルの顔であるカバさん(蒲谷正之)が最初に抜けてしまって、それからバタバタとケガ人が出たのが想定外ですね。当初描いていた『未来予想図』とは違っています」

それでも、横浜という新天地で川村が見いだしたのは、ビーコルの熱いブースターだった。「僕のキャラに反応してくれます。ブーイングが欲しい時に応えてくれたりだとか。例を挙げれば年始の京都戦、3本決めれば同点という場面で、煽ってほしいと思ってアクションを起こしたら、すごいブーイングをしてくれて。それで3本とも外させたんです。ブースターの力を感じたゲームでした」

「一緒に戦ってくれている、という気持ちはすごくあります」と、ブースターとの『共闘』を強調する川村は、「来年もこのチームをB1に残したいんです」と意気込む。

上位と下位にかかわらず、長いシーズンにどれだけの積み重ねがあったかで各クラブに悲喜こもごもの『結末』が訪れる。その点で言えば、横浜はまさに今が正念場。川村が力説するように、ケガ人が戻って来た時に元のビーコルに戻るのではなく、それをプラスアルファにできれば、残留は危なげなく果たせるはずだ。