「イージーなターンオーバーで負けたのがスタート」
美濃加茂は開志国際に76-68で勝利し、全国大会で初となる4強進出を果たした。この前日、開志国際は前年王者の日本航空に83-65の快勝を収めている。美濃加茂の林龍幸ヘッドコーチはその電光石火のカウンターに「とてもついていけないんじゃないかと思った」と率直な思いを明かす。
それでもハーフコートで小さく足を使って守るディフェンスに、203cmのエブナ・フェイバーに頼らず他の選手もしっかり走り、ボールに飛び込むリバウンド力で、相手の爆発力を封じ込めた。またオフェンスも本来であれば走る展開に持ち込みたいのをあえて封印。リバウンドを取りきるまでがディフェンスで、そこから攻める意識を徹底させた。
フェイバーのファウルトラブルで一度は失速し、同点に追い付かれて前半を終えたものの、後半には再びじっくり守ってじっくり攻め、相手の長所を消しつつ自分たちの長所を発揮する試合運びで優位を保った。
そんな落ち着き払ったプレーメークの中心となった深見響敏は、試合後にこう語っている。「自分たちの強みはフェイバーなので、そこをしっかり強調してから。相手は切り替えが速くて、キャッチアップのミスですぐやられてしまうので、ゆっくりコントロールしていました」
去年のインターハイでは2年生のガード陣が期待に応えられず、ターンオーバー連発で流れを悪くしてしまい、チームは1回戦敗退。「ガードのイージーなターンオーバーで負けてしまう経験をしたのが僕にとってのスタートなので、ガードとしてそういうミスは絶対にしない意識を持っています」と深見は言う。
「自分がかかわらなくてもいいのがチームの強み」
ブレイクも本来であれば美濃加茂の持ち味の一つだが、それにこだわらず多彩なプレーの引き出しを持ち、相手や試合展開に応じて使い分けていく。フェイバーの高さと粘り強さは大きな武器だが、フェイバーにパスを入れて「あとは頼む」というオフェンスは決してしない。深見とフェイバーのピック&ロールから良い得点が続いても、その後はあえて別のプレーを選択する。深見がプレーメークそのものを他の選手に託してしまうことも少なくない。
「コートに出ている5人のうち誰がボールを保持してもプレーを作れるので、自分がコントロールしない時間帯も任せられる、自分がかかわらなくてもいいのがチームの強みになっていると思います」
変幻自在かつ相手の嫌なところを突くオフェンス。サイズはなくてもチームでまとまりのあるディフェンスに、人任せにしないリバウンドの強さ。こういった美濃加茂のバスケには開志国際の富樫英樹ヘッドコーチも「絞りきれなかった。強かったです」と脱帽した。
明日の準決勝、福岡大学附属大濠との試合でも深見のやることは変わらない。まずはディフェンスとリバウンドにフォーカスし、相手の出方をしっかりうかがいながら自分たちの多彩な武器を正しく使うことだ。
「行けるところは行って、コントロールすべきところはコントロールして。そういう緩急あるプレーメークからブレイクを出すところを徹底したい。今日のように競った試合に勝ちきれたことは僕たちにとって良い経験になり、それもまた強みになると思うので、自信を持ってプレーしたいです」