ビクター・ウェンバニャマ

ガード陣に弱み、プレーメークをどこまで改善できるか

フランスは開催国として迎えるオリンピックで金メダルを獲得すべく、ジョエル・エンビードの帰化を望んでいましたが、エンビードはアメリカ代表を選択しました。しかし、エンビードに寄せていた期待は、そのままビクター・ウェンバニャマが肩代わりしています。ルーキーシーズンにNBAで大暴れした20歳の若者は、オリンピックでのフランスの命運を握ります。

国際大会で安定して好成績を残してきたフランスですが、昨年のワールドカップではグループリーグ敗退に終わりました。エバン・フォーニエとルディ・ゴベアを中心としたベテラン揃いのチームは、次の世代の押上げのない下降フェーズに入っていました。それでもウェンバニャマに限らず今年のドラフトで1巡目6位までにフランス人選手が3人も指名されるなど、若い世代のスター候補は次々に台頭しており、今回のメンバーにはウェンバンヤマとともにウィザーズでのルーキーシーズンを終えた昨年の1巡目7位指名選手、ビラル・クリバリーが入りました。

フランスの強みは何と言ってもゴベアとウェンバニャマが並ぶインサイドで、圧倒的なリムプロテクト力は強固なディフェンスを作り上げます。ゴール下で待ち構えるゴベアだけでも厄介なのに、後ろから追いかけてくるウェンバンヤマがいることは、フランス相手にイージーショットは存在しないことを示しています。常にブロックの脅威を考えながらのシュートは確率も落ちるだけに、大量失点の可能性は低いでしょう。

一方でオフェンス面は弱点となります。ウェンバニャマもスキルはまだ粗削りでシュートが安定せず、高さを生かした驚異的なハイライトプレーとは裏腹に、オフェンスの確率は決して良いわけではありません。また、ビッグマンを生かすポイントガードも足りておらず、フォーニエの個人技に頼るシーンも頻繁に出てきます。インサイドでのフィニッシュパターンに持ち込めれば強いものの、そこまでの組み立てには大いに疑問があります。

カナダとの強化試合では高さのない相手に73-85で一蹴されました。ガード陣のところで点が取れず、インサイドの戦いに持ち込めなかったこともあり、カナダのドライブアタックに振り回される結果となりました。トランジションを増やされると強みが消えるため、じっくりとハーフコートで組み立てたいのですが、組み立て役が足りていないのがフランス最大の課題です。

今回は日本、ブラジル、ドイツと同じグループになりましたが、ワールドカップで優勝したドイツとの一戦でフランスの真価が問われます。ドイツも高さを強みとするチームで、そのインサイドへ繋ぐまでの攻防が勝負になりそうです。世代交代の狭間で迎える開催国としてのオリンピックは、ウェンバニャマが存在感を見せつけるのか、それとも噛み合わずに終わってしまうのか。アップセットを狙う日本にとっても、グループリーグ2戦目で戦うフランスの完成度はキーポイントになってきます。