文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

素早い状況判断が効率の良さを生み出す

2月26日に行われたサンロッカーズ渋谷と京都ハンナリーズの第2戦は、終盤に抜け出した京都が79-75でシーソーゲームをモノにした。

逆転のきっかけを作ったのはマーカス・ダブだ。第4クォーター立ち上がりから一気に6点差と突き放されたタイムアウト明けにゴールを決めて流れを呼び戻すと、残り4分28秒に同点に追いつく貴重なゴールもねじ込む。その後はケビン・コッツァーとのコンビでインサイドを制し、チームに勝利をもたらした。

ダブはこれまでに5カ国でプロ生活を送ってきている。「ヨーロッパよりも組織的な自由度が高くて、その中でプレーできるのは自分に合っている」と日本のバスケットスタイルにアジャストできていると語った。

昨日の試合では14得点、第1戦ではゲームハイの20得点を挙げているが、タフショットや強引なプレーを選択することは少ない。シンプルなプレーでいつの間にか得点を積み重ねる状況判断の良さが、リーグ4位のフィールドゴールの成功率59.5%という数字に表れている。

オフェンスの貢献度に注目がいくが、意外にも自らのことをディフェンシブな選手と説明した。「オフェンスよりもディフェンスを常に考えてプレーしています。ディフェンスのほうが好きですし、自分はそちらでキーになる選手だと思っています。大学が集中的にディフェンスを練習するチームでした」

ダブは206cmの長身ながら、しっかり足でディフェンスができ、速攻を駆け上がる脚力を持っている。さらに長いウイングスパンを駆使したハンドチェックやシュートブロックも脅威。昨日の試合では3スティールを記録したが、ボールを弾く技術や手を広げパスを簡単に通さない基礎の部分、シュートチェックなど数字に表れない貢献度が高い。

「まずはエネルギッシュなプレーをしてチームにエナジーをもたらす役割を求められています。当たり前ですがディフェンスだけでなく得点も求められているので、今日は良かったです」と、攻守に貢献できた自らのパフォーマンスに納得といった表情を見せた。

献身的に京都を支える「チームのためにできること」

昨日の試合では、第3クォーター途中に相手選手との接触で足首を痛め、一時はベンチに下がった。実はこの足首は前から捻挫していた箇所。「かなり痛くてどうなるかと思いましたが、勝ちたかったのでチームのためにできることをと思って」と、ダブは痛みをこらえてプレーし、勝利を引き寄せた。

アウェー開催となった青学記念館には多くの京都ブースターが応援に駆けつけ、ベンチ裏を水色に染めた。遠方から来てくれるブースターへの感謝の言葉が止まらない。「みんなに感謝してます。試合中でも渋谷のファンよりも京都のファンの声のほうが多く聞こえてきた気がしますし、アウェーにも来てくれる京都のブースターは本当に多いので、今日の勝利もファンの皆さんに助けられたと思うので感謝してます」

京都は今節だけでなく、アルバルク東京や栃木ブレックス相手に勝利するなど、強豪相手にも連敗することが少ない修正力の高いチームだ。その修正力を体現するには、ダブのようにディフェシブで状況判断の良い、高いバスケットIQを持った選手の存在が欠かせない。

「I like defense!」と満面の笑みを浮かべる大黒柱が、チャンピオンシップ出場へと京都を力強く引っ張っている。