『未熟』の評価に恩師は「ヨキッチもそうだった」
NCAAトーナメント連覇を果たしたコネチカット大からは、ガードのステフォン・キャッスルがスパーズに1巡目4位で指名され、センターのドノバン・クリンガンがトレイルブレイザーズに1巡目7位で指名された。
NCAAトーナメントで主役を演じたクリンガンは、全体2位でウィザーズに指名されたアレックス・サーに続いて指名されたセンターとなった。オールラウンダーでフォワードのようなプレーもできるサーに対し、クリンガンは昔ながらの重量級ビッグマンで、218cm128kgの体格と213cmのウイングスパンを生かしたリムプロテクト能力が持ち味だが、技術はまだまだ粗削り。ブレイザーズは再建中で、ポジションを問わず高いポテンシャルを秘めた選手を欲しており、ディアンドレ・エイトンとロバート・ウィリアムズ三世がいるセンターの選手をあえて獲得し、じっくり育てるつもりのようだ。
クリンガンはNCAAトーナメントで印象的な活躍を見せ、ファイナルではパデュー大のザック・イディーとともに『大学最強ビッグマン』の争いが注目を集めた。もっとも、NCAAトーナメントが終わってNBAドラフトに目線を切り替えると、高い評価を得ていたとは言い難い。
今のNBAでは、ニコラ・ヨキッチのように高いバスケIQを持ちプレーメーカーをこなす、あるいはビクター・ウェンバニャマのように長身であっても俊敏でハンドリング能力にも長けたオールラウンドなセンターがトレンドで、ルディ・ゴベアのようなクリンガン、スティーブン・アダムスのようなイディーは、ディフェンスでは3ポイントシュートに寄せきれず、オフェンスではダブルチームの餌食になると考えられてしまう。
クリンガンはブロックショットとリバウンド、シュートを打とうとする相手へのプレッシャーこそ認められるが、運動能力が高いわけではなく、今のトレンドである機動力のあるビッグマンに翻弄されると見られている。ボールを扱えず、大学時代も3ポイントシュートはほとんど打っていないし、フリースロー成功率は58.3%しかない。
それでもブレイザーズは、短所よりも長所に目を向けてクリンガンを指名した。ドラフトを前にブレイザーズの練習施設でワークアウトを行った時点で、両者はすでに相思相愛だった。クリンガンは「このチームは最初から僕に興味があると感じていた」と言う。「ワークアウトでは絶好調で、その感触がすごく良かったから、一緒にプレーした選手たちとまたやりたいと感じていた」
コネチカット大を連覇に導き、今オフはレイカーズのヘッドコーチ候補にもなったダン・ハーリーは、クリンガンへの過小評価が気に入らなかった。「常に一生懸命にプレーし、競い合うことを楽しんでいる。彼は背が高いからバスケを選んだのではなく、バスケが大好きだから打ち込んでいる。アスリートとして極めて健全な男だよ」と彼は言う。
技術的に未熟なことも、ハーリーは気にしない。「インサイドもアウトサイドも全部こなさなければいけないとは考えるな、と伝えていた」と指揮官は言う。「私は彼にニコラ・ヨキッチの若い頃のプレー映像を見せた。ヨキッチだって19歳の時は未熟で粗削りだったよ。だから2巡目で指名されたんだ。それから少しずつスキルを高めて今のヨキッチになった」
クリンガンは恩師のその教えを胸にNBAの世界に飛び込む。「僕という人間を変える必要はないと思っている」とクリンガンは言う。「ただ毎日、学ぶ姿勢があればいい。ルーキーなんだから、常に自分の持てる力すべてを出し尽くすつもりでやる」
「最高レベルでプレーするには、自分自身を次のレベルに引き上げなければいけないのは当たり前のこと。このチームで働くすべての人と良い関係を築きたい。毎日学び、成長する。そしていずれはポートランドにNBA優勝をもたらしたい」