文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

プレースタイルはまさに「エナジーとアグレッシブ」

22日、千葉ジェッツはポートアリーナに秋田ノーザンハピネッツを迎えた。立ち上がりが課題とされる千葉だが、最初のポゼッションでヒルトン・アームストロングのダンクが炸裂。攻守にエネルギッシュな動きを見せ、試合の主導権を握った。

ところが第1クォーター残り5分10秒のところでアクシデントが起こる。富樫勇樹がふくらはぎに張りを訴えて交代。さらには外角シュートを徹底的にケアする秋田の術中に落ちてオフェンスが停滞してしまう。富樫はその後も、阿部友和を休ませる時間帯にコートに立ったものの、ピック&ロールから切り込む果敢なプレーには挑めず、無得点に終わっている。

3ポイントシュートと富樫のアタックを封じられた『非常事態』に、チームを救ったのがタイラー・ストーンだった。「ベンチスタートで、チームにエナジーとアグレッシブさを注入するのが自分の役割」と言うストーンは、その言葉どおりの活躍で、力強くチームを引っ張った。

第1クォーター途中に投入されたストーンは、アームストロングがファウルトラブルに陥った関係もあり、そのまま試合終了まで今シーズン最長となる35分の出場。この間、コートが狭く見えるぐらいに激しくファイトし続けた。

そのプレースタイルはまさに「エナジーとアグレッシブ」だ。フィジカルとスピードを生かし、ガンガンと仕掛けていく。富樫不在のこの試合では、いつも以上に強気なアタックが目立った。

22本のシュート試投数は両チーム通じて最多。アグレッシブに攻め続けたことに対しても彼は「マイク(マイケル・パーカー)やヒルトン、そして他のチームメートも、みんなのカバーがあるから自分がアグレッシブに行けるんだ」と謙虚な姿勢を崩さない。それでも24得点と9リバウンド、ともにゲームハイの数字をマークして、接戦を競り勝つ原動力となった。

平日ナイトゲームに集まった4815人を興奮させたプレー

富樫がケガをする『非常事態』に陥り、大苦戦を強いられながらも勝ち切ったことは千葉にとっては非常に大きい。だが、この日の千葉にはもう一つの勝利も得ている。平日ナイトゲーム、千葉ポートアリーナには4815人のファンが詰めかけた。千葉は観客動員の『優等生』であり、対戦相手も集客力のある秋田だったとしても、これは驚くべき数字だ。

試合開始の19時にはスタンドの何割かはまだ空席だったが、その後も続々と観客が入って来た。学校や仕事が終わってから急いでアリーナに駆け付けた人々をエキサイトさせたのはストーンのダンクシュートだった。

第2クォーター途中、鋭いスティールから速攻に走って決めたダンクを、「スティールの狙いがうまく決まってダンクにつながり、それでチームにエナジーやアグレッシブさを与えられた。結果として会場の雰囲気も変えることができた」と振り返る。

さらに第3クォーター残り6分11秒の場面では、富樫との囲い込みでボールを奪うとすぐさまリングへと駆け出し、富樫のパスを受けると滞空時間の長いワンハンドダンクを叩き込んだ。両チームとも攻めより守りが目立つ重い展開となったこの試合、最もスタンドが沸いた瞬間がストーンのこの2本目のダンクだった。

「自分のダンクで盛り上げてやろうという気持ちがある」

無難にレイアップに行ってもいい場面、そちらを選択する選手のほうが多いが、ストーンは迷わずにダンクに行く。それはやはりファンを意識してのプレー選択だ。

「自分が子供の頃にバスケットボールを見ていた時、やっぱり一番盛り上がる瞬間はダンクだった。立場が逆になった今、ダンクはショーの一つ。自分のダンクで盛り上げてやろうという気持ちがある」とストーンは言う。

ちなみに先日、ニューオリンズで行われたNBAオールスターのダンクコンテストからも刺激を受けたようだ。「デリック・ジョーンズJrのダンクは良かった。優勝できなくて残念だったけど、個人的には大好きだった」と語る。

『オールジャパン』優勝に貢献した後、左のハムストリングを痛めて一時は欠場していたストーンだが、「素晴らしいトレーナーとドクターのおかげで今は全く問題ない」とのこと。35分間の全力プレーの後、中2日で琉球ゴールデンキングスとのアウェー連戦に臨むことになるが、ストーンはアグレッシブなプレーを見せてくれるはずだ。